坊主憎けりゃ?週刊文春の反中国食品記事

 

 週刊文春が「危ない中国食品」という記事を連載している。
 文春オンラインで「危ない中国食品 2018[第2弾] 「最新回収事件」実名リスト」という記事を、大枚108円支払って読んでみた。
 ハッキリ言って、金返せ!!と言いたくなる内容であった。

 これがこのの記事に載っていたリスト。
  
 2014年から2018年のリストの様だが、記事のタイトルからすると誇大妄想というか、針小棒大な記事である。
 一般社団法人食品産業センターの食品事故情報告知ネットでは、過去1年の食品回収事例が検索できる。
 食品事故情報告知ネット 
 このサイトで食品の回収事例を検索すると、2018年5月11日現在で過去1年の主な回収事例を検索すると
 食中毒事故原因の微生物、化学物質: 28件
 カビ、酵母等の微生物:81件
 異物の混入:ガラス片や金属等硬質異物:53件
 異物の混入:昆虫、毛髪等生物由来異物:57件
 不適切な表示:食品添加物:20件
 品質不良:53件
 賞味期限切れ、期限切れ原材料の使用:24件
 不適切な表示:誇大表示、優良誤認:4件
 などがヒットする。
 食品事故情報告知ネットのデータを見ても、食品の品質不良は中国産だけでは無いのがよく判る。

 文春のリストの内容をよく見てみる。
 リストの黄色は食品の産地偽装で、中国食品云々ではなく、国内メーカーの責任である。
 ピンクのレトルトカレーは異物混入で、食品事故情報告知ネットのデータで、1年間に110件発生していて、中国産が特に問題があるわけでは無い。
 かんぴょうの二酸化硫黄は、基準値より24%超えているわけだが、大量に摂取する食品では無く、食品衛生法違反ではあるが、健康に影響が出る可能性は低い。
 添加物使用基準リスト 

 ピーナッツのアフラトキシンは発がん性のカビ毒である。
 ピーナッツの検査は、輸出国を問わず全数検査になっている。
 厚生労働省の平成28年度輸入食品監視統計によると、ピーナッツの輸入届出件数(重量ベース)は
 中国677件、検査677件、違反件数20
 違反率
 20/677*100=2.95%
 アメリカ675件、検査675件、違反件数14
 違反率
 14/675*100=2.07%

 ピーナッツ製品は
 中国2807件、検査2807件、違反件数24
 違反率
 24/2807*100=0.86%
 アメリカ325件、検査325件、違反件数5
 違反率
 5/325*100=1.54%

 中国産だけが危ないという訳では無いことが判る。
 平成28年度輸入食品監視統計 (20,22ページ)

 残留農薬に関しては
 ペンディメリタンの基準値は0.05ppm~0.2ppm、魚介類0.3ppmであり、0.4ppmはアウト
 ペンディメリタンの一日許容摂取量(ADI)は0.12mg/kg 体重/day
 0.4ppmということは1kg当たり0.4mgであり、小学一年生の平均的な体重20kgの子供で摂取許容量は2.4mgであり、基準値を超えてはいるが直ちに健康に影響がある訳では無い。
 ペンディメタリン 

 同様に4-クロルフェノキシ酢酸の残留基準値は0.02ppm~20ppmと、作物により基準値が異なっている。
 多くの食品が0.02ppmだが、トマトやナスやウリ科の野菜は0.1ppm、小豆類2ppm、乳脂肪20ppmと幅が広い。
 4-クロルフェノキシ酢酸(4-CPA)、別名パラクロロフエノキシ酢酸で植物ホルモン剤で、着果剤として使われ日本でもトマトトーンという商品名で販売されている。
 これもライチなら0.03ppmは基準値でアウトだが、トマトやナスやキュウリであればOKで、健康への影響はまず考えられない。
 4-クロルフェノキシ酢酸 

 冷凍インゲンのフィプロニルも残留基準が0.002ppm~.01ppmと広い。
 フィプロニルの一日許容摂取量(ADI)は0.00019 mg/kg 体重/dayであり、体重20kgの子供であれば0.0038mgまでは許容量となる。
 0.004ppmの冷凍インゲンを950g以上食べるとADIを超えることになるが、インゲンを1kg近く食べる事はまずあり得ない。
 ちなみにピーナッツなら0.01ppm、白菜なら0.1ppmが残留基準値となり、インゲンの0.004ppmは基準値を超えていてアウトだが、健康への影響はまず考えられない。
 フィプロニル  

 チアメトキサムはネオニコチノイド系殺虫剤で、欧州委員会はイミダクロプリド、クロチアニジンの3種を暫定使用禁止にし、2018年4月27日に温室以外でのすべての農作物への使用の禁止を決定した。
 EurActiv  
 これはヒトへの影響では無く、ミツバチやマルハナバチなどへの影響を懸念しての事である。
 ちなみに、製造元のバイエル社とシンジェンタ社は欧州司法裁判所に不服申し立てをしている。
 チアメトキサムがタマネギの基準値の3倍~7倍との事だが、タマネギの基準値は0.002ppmなので0.006ppm~0.014ppmということであろう。
 基準値の3倍~7倍は違反であることには間違いないし、いかにも危険そうなイメージを与えるが、他の作物は、キャベツ5ppm、ほうれん草10ppmなどあり、タマネギが基準値の3倍~7倍であっても健康への影響は少ない。
 チアメトキサム  
 
 国産農産物が危険かどうかだが、公益財団法人 食の安全・安心財団が、中国産食品の安全性に問題は無いという リリースを出している。
 中国からの輸入食品は危険であるとする記事について  
 国別輸入量は中国が1位で2位のアメリカの3倍以上となっていて、絶対量が多い分違反件数も多くなる。
 検査率も中国が一番高く、にもかかわらず違反率は低くアメリカの違反率の約1/2で、数字で見ると中国製食品が危険とは言えない。

 
出処:公益財団法人食の安全・安心財団 リリースより   

国産食品との比較で輸入食品の安全性は、国産食品との差が無いという調査結果もある。

 中国の食品には酷いケースもあるのは確かで、玉石混交、ピンからキリまでといったところであろうが、中国製食品すべてが危険ということではない。
 元々、週刊文春は反中国的な記事が多かったが、このの「危ない中国食品」シリーズに関してはは煽り記事としか思えない。

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