特定保健用食品の許可取消し

 

 消費者庁は9月23日に、日本サプリメントが販売していた「ペプチド茶」「ペプチドストレート」「ペプチドスープEX」「ペプチドエースつぶタイプ」「食前茶」「豆鼓エキスつぶタイプ」の6品目の特定保健用食品の表示許可の取消した。
 平成28年9月23日特定保健用食品の許可取消しについて 
 ペプチドシリーズについてのお詫びとお知らせ
 豆鼓シリーズについてのお詫びとお知らせ 
 花王の食用油「エコナ」の様にメーカーが取り下げた例は有るが、取り消しは1991年に制度が発足して以来初めての事である。

 報道等によると、ペプチドシリーズ4種はカツオ節由来の成分が、必要量の100分の1程度しか含まれてい無い事が同社の調査で14年3月に判明していたが、今月まで消費者庁に報告していなかった。
 豆鼓シリーズ2種に関しては、関与成分をトリスと同定し許可を取得していたが、現在の分析技術を用いて再検討したところ、トリスと同定していた成分はトリスとは異なる成分であると同定され、関与成分はトリスではない、と判明したという。
 消費者庁は、そのことが判明して2年間も報告しなかった事が悪質として、取り消ししたとしている。

 かつお節由来の成分とは『かつお節オリゴペプチド』との事で、日本サプリメントは『かつお節オリゴペプチド』が血圧が高めの方に適した食品であることは、ACE阻害活性の値から判断することが出来るとしている。
 『かつお節オリゴペプチド』に関しては、食品安全委員会の「新開発食品調査会第65回議事録」に次の様な記述がある。
 食品安全委員会新開発食品専門調査会(第65回)議事録 

 ACE阻害剤は利尿剤との併用による降圧作用の増強や、疫学的調査による催奇形性のリスク等から妊婦または妊娠している可能性のある方に対する禁忌、更に重篤な腎障害のある患者では過度の血圧低下や、血液障害が起こるおそれがあることが知られている。
 サーモンペプチドはACE阻害を作用機序とするため、これらの症状が懸念される。
 しかし、サーモンペプチドのACE阻害活性は、特定保健用食品として既許可の関与成分であるサーディンペプチド、かつお節オリゴペプチド、ワカメペプチド等とほぼ同等で、カプトプリルと比べると1/15,800の活性しか示さず非常に弱い。
 それゆえ、リプレSの摂取においてACE阻害活性に起因する副次的な症状が問題となる可能性は、ACE阻害剤と比べて極めて低いと考えられるということでございます。
 第65回議事録、8ページ目

 第65回調査会では、リプレSという特定保健用食品の食品健康影響評をしている訳だが、リプレSの関与成分サーモンペプチドのACE阻害活性はサーディンペプチド、かつお節オリゴペプチド、ワカメペプチド等とほぼ同等で、ACE阻害剤のカプトプリルと比べると1/15,800の活性しか示さず非常に弱いとしている。
 と言う事は、『サーモンペプチド』と『かつお節オリゴペプチド』のACE阻害活性はほぼ同じで、『かつお節オリゴペプチド』摂取でACE阻害活性に起因する副次的な症状が問題となる可能性は、ACE阻害剤と比べて極めて低い事になる。
 早い話、『かつお節オリゴペプチド』の摂取は、
 ”ACE阻害活性に起因する副次的な症状が問題となる可能性は低い ≒ 健康被害の可能性も低いが効果も低い”
 ということになるわけである。

 『かつお節オリゴペプチド』に関しては、「自然の血圧をサポート」という表示が欧州食品安全機関(EFSA)に申請され、2010年に却下されている。
 EFSA Journal 2010;8(10):1730
 EFSAの見解は、人での科学的根拠はなく、試験管内の試験や動物試験の結果も十分ではないとしている。

 今回の件を受け、消費者庁はトクホの全1270製品の成分調査をやり直すよう、業界団体を通じて関係メーカーへ指示した。
 特定保健用食品に対する今後の品質管理等の徹底について 

 調査はできるだけ社外の専門機関が実施し、1カ月後までに同庁へ提出させる。
 含有量が適切でない場合は速やかに報告するよう求めている。
 同庁によると許可済みの製品のうち約半数がすでに市販されていないとみられ、その場合は許可を取り下げる「失効届」を出させる。
 また、同庁もトクホ製品の一部を店頭で買い、成分を調べる「抜き打ち調査」についても、当初は来年度から始める予定だったが、今年度内に前倒しする。
 朝日新聞

 「抜き打ち調査」を今年度内に前倒しと言う事だが、これまで実施していない事自体が怠慢と言っても良いだろう。

 『トクホ』だけでなく、『機能性表示食品』も、もめている。
 八幡物産が販売している機能性表示食品に「北の国から届いたブルーベリー」という商品がある。
 これに対し、アントシアニンの研究者の団体、日本アントシアニン研究会が2016年1月7日付けで、八幡物産に対して機能性表示食品の届け出を取り下げるよう要請した。
 これは、北の国から届いたブルーベリー」の機能性表示「本品にはビルベリー由来のアントシアニンが含まれます。アントシアニンには、パソコン作業、事務作業など目をよく使うことによる、目の疲労感、ピント調節機能の低下を緩和することにより、目の調子を整える機能があることが報告されています。」がエビデンスに裏付けられたものでは無いとの判断の上だった。
 八幡物産からは届出書類に書かれている以上の説明は無く、販売も継続されたため、同研究会は八幡物産とのやりとりを公開すると伝えたところ、3月31日付けで東京地裁に公開の差し止めの仮処分を申し立てた。
その後、5月11日、同24日、6月16日と3回の審尋期日を経て裁判所の判断を待つ状態となっていたところ、八幡物産は同6月24日に仮処分を取り下げている。
 八幡物産株式会社「北の国から届いたブルーベリー」(機能性表示食品届出番号A164)についての申入れについて  
 この中で、同研究会の主張に対し有効な反論が出来なかったとしている。

 これに対し、八幡物産は同研究会から学術的な意見や回答を得る事が出来なかったと反論している。
 日本アントシアニン研究会に関するお問合わせについて  20160711.pdf 

 これまで、日本アントシアニン研究会からのご指摘に対しては、弊社の見解を述べたり、質問を行ったりとやり取りを行って参りましたが、それらに対する学術的なご意見やご回答をいただくことはなく、ビルベリーエキスの同等性と有効性の持論を一方的に終始主張されるだけでした。
 また、この度の日本アントシアニン研究会のHP上の主張も一方的な内容となっております。
 弊社としましては、その内容に正当性が見いだせず、納得できるものではございません。

 これに対し同研究会は7月13日付けで、八幡物産の見解は事実に反していると反論している。
  八幡物産株式会社「北の国から届いたブルーベリー」(機能性表示食品届け出番号A164)についての申入れに対する同社の見解について  

 当研究会は、八幡物産が当研究会を相手取って、平成28年3月31日付で東京地方裁判所に申し立て、同年6月24日に取り下げられた仮処分事件(東京地方裁判所平成28年(ヨ)第961号 商品情報開禁止仮処分命令申立事件)の審理を通じ、また、審理と並行した当事者間のやりとりにおいて、学術的な意見や回答を明らかにしています。
 特に、本年6月6日には全21頁にも及ぶ長い回答書を八幡物産側に送付しています。
 上記した八幡物産の見解は明らかに事実に反するものです。

 アントシアニンそれ自体について、目の疲労感、ピント調節機能の低下を緩和し、目の調子を整える機能があることを報告する文献は存在しません。
 ビルベリー由来のアントシアニンが含有されるビルベリーエキスに関する研究成果についても、ビルベリー由来のアントシアニンのみにより、特定の保健の目的に資する結果が得られたという意味でビルベリーアントシアニンを機能性与成分と断定する科学者は存在しません。

と、双方の主張は対立している。

消費者庁の『「機能性食品」って何?』と言うパンフレットにも次の様な記述がある。
「機能性食品」って何?  

 ●届けられた内容は、消費者庁のウェブサイトで公開されます。
 ●消費者の皆さんは、商品の安全性や機能性がどの様に確保されているのかなどについて、商品の情報を販売前に確認できます。
   ◆消費者庁が中心となり、販売後の監視を行います。

 届けられた内容は公開されていて、外部から評価出来るシステムになっているわけで、批判や論議があることが前提となっている。
 科学的な批判や論議に対しては、科学的に反論すべき問題で、それをしないで裁判所に持ち込むというのは間違っているとしか言いようがない。(勝ち目が無いと判断したか、取り下げしているが・・・・)
 また、消費者庁もその様な批判のある商品に関しては、消費者庁の権限で企業に回答を求めるべきと思う。
 この件は、一部の報道などではアントシアニン業界の内輪もめとの報道もある。
 日本アントシアニン研究会、八幡物産に撤回要請、いざこざ背景に企業間対立か 通販新聞  
 しかし、この件は企業間のいざこざと言うより、機能性表示食品が持つややこしい問題を明確に表している。

 ま、個人的には『機能性表示食品』は『気のせい表示食品』位にしか思っていないが・・・・・

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