武田邦彦センセの大風呂敷
中部大学の武田邦彦センセが、ゴミのリサイクルにかみついている。
日本のリサイクル運動は「もったいない美徳」を利用した集団詐欺か
この内容、かなり誤っている。
国のリサイクル法が施行されるまで、紙はちり紙交換屋さんが自分で軽トラを運転し、ガソリン代を払い、わずかですがちり紙と古紙を交換していました。
アルミ缶や鉄くずも少しとは言え廃品を出す方はお金になりました。家電製品もトラックで回ってくる廃品回収業者がタダか、あるいは何か小さな景品のようなものをくれていました。
それが、すべてタダになり、税金を余計に取られ、しかも分別して別々の指定された袋に入れ、あるいは日にちを指定されて何種類にもわたって出すようになったのです。
それが、すべてタダになり、税金を余計に取られ、しかも分別して別々の指定された袋に入れ、あるいは日にちを指定されて何種類にもわたって出すようになったのです。
古紙のちり紙交換が無くなったのはリサイクル法の施行では無く、1990年代に古紙の大暴落が起きたから。
それまでは古紙のリサイクル率は高くリサイクルの優等生といわれていて、回収業者が家庭を回りトイレットペーパーなどと交換していた。
ところが1990年代に古紙が大暴落し、採算がとれなくなり転廃業する業者が続出した。
私の知り合いが古紙回収をしていたが、その頃に事業として成り立たなくなり廃業した。
自治体が古紙回収をせざるを得なくなったのは、それまで有ったリサイクルシステムが破綻してしまったから。
こんなことは独裁国家でも無ければ行われないことですが、なぜ日本で可能になったのでしょうか? それは家電リサイクルで理解することができます。
家電リサイクル法ができる前は、廃家電はおおよそ一台500円で処理されていました。なぜ、そんなに安かったかというと、ゴミと一緒に運んで機械でガシャンと潰し、燃やしていたからです。
それは排煙処理設備も無い状態で、野焼き同然に焼却して金属を回収していたからコストは非常に安く出来ていたため。
以前は廃車となった自動車から金属を回収する方法に、『カーベキュー』と言われる方法が採られていた。
今は『カーベキュー』というと、自動車の塗装や溶接をする際の回転台の事だが・・・ これ←
コトバンクにかつての『カーベキュー』が載っている。
《car+barbecueから》役目を終えた自動車を元の素材に戻すとき、焼却して可燃物を取り除き、金属だけ残す方法。
廃車となった自動車から、状態の良いエンジンやバッテリー等を外した後に潰して、火を放ってプラスチックなどを燃やして金属を取り出していた。
この方法が出来なくなったのはリサイクル法では無く、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(通称、廃棄物処理法)の2000年の改正による。
大気汚染防止のため、排煙処理設備の無い状態での焼却は『野焼き』とされ禁止された。
違反に対しては厳しい罰則(5年以下の懲役、1,000万円以下(法人は3億円以下)の罰金、またはこれらの併科)が適用される。
家 電なども同じで、分解分別が必要となった。
また、冷蔵庫やエアコンやカーエアコンの場合には冷媒として使用されたフロンの回収が義務づけられている。
武田センセのいう様に、「ゴミと一緒に運んで機械でガシャンと潰し、燃やしていた」という方法は排煙処理設備が無い状態で行うと、違法行為という事になる。
なぜ、「リサイクルして資源を回収した方が高くなるのか?」はまったく説明できません。
話は簡単で、『リサイクル法』ではなく、『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』によりコストが掛かっているから。
それに廃棄物処理はタダではなく、コストが掛かっている。
ゴミ処理事業経費は平成26年度で、国民一人あたりに換算すると15,400円とされる。
一般廃棄物処理事業実態調査の結果(平成26年度)について20ページ
ゴミ処理をぜーんぶ税金でするのか、受益者??も少々負担するのかという次元の話になると思うが・・・・
さらに「使い終わってすぐ捨てる」というものは劣化していませんが、普通に1年、2年と使ったプラスチック(たとえば庭で使うバケツなど)は劣化してパリパリになり(分子量が小さくなる、と言います)、再び使うことはできません。
プラスチック類が何から何までリサイクルされる訳では無く、プラスチック製品は大きさにもよるが、地域により可燃ゴミや不燃ゴミ扱いにされる。
リサイクルされるのはペットボトルとプラスチック製容器包装の2種類。
プラスチックは熱量が高く、焼却すると高温になり焼却炉を傷めたり、ダイオキシン等の有害物質の発生の原因になりかねないため、不燃ゴミ扱いにされ埋め立てされていた。
しかし、最近では東京23区や川崎市、横浜市などの様に大きさによるが可燃ゴミとして扱う自治体が増えている。
これには理由がある。
・不燃ゴミは最終処分場で埋め立てされていたが、最終処分場の余裕が少なくなった。
・分別がすすみ、可燃ゴミの生ゴミの比率が高くなり、重油などを併用しないと焼却できなくなった。
・焼却炉の性能が上がり、高温にも耐えられ、有害物質の発生も抑えられる様になった。
劣化したプラスチックをリサイクルしている訳では無い。
容器包装リサイクル法の対象となっているのは次の通り。
・ペットボトル
・プラスチック製容器包装
・アルミ缶
・スチール缶
・紙容器包装
・飲料用紙パック
・段ボール
・ガラス製容器
この内リサイクルが義務づけられているのは、ペットボトル、プラスチック製容器包装、紙容器包装(段ボール、紙パックを除く)、ガラス製容器の4種類となっている。
アルミ缶、スチール缶、段ボール、紙パックは容器包装リサイクル法における容器包装廃棄物だが、自治体が分別収集した段階で有価物となるためリサイクル義務の対象外となっている。
容器包装リサイクル法
武田センセが叩きまくっている『容器包装リサイクル法』は、家庭ごみの処理・処分については、容リ法が制定されるまでは市町村固有事務として、全面的に市町村負担となっており、 膨大な費用がかかっていた。
容器リサイクル法の策定時に、「拡大生産者責任」の考え方が新たに導入され、消費者が分別排出し市町村が分別収集した後、容器包装の製造者(販売者)がリサイクルする義務が規定された。
容器包装のリサイクルの対象物は公益財団法人日本容器包装リサイクル協会に移管され、特定事業者が日本容器包装リサイクル協会に委託する形でリサイクルされる。
その際に特定事業者から日本容器包装リサイクル協会に委託料が支払われ、実際の作業は入札で受託した企業がリサイクルすることになる。
物と資金のながれ
実際に何にリサイクルされるかというと、約半数はプラスチック材料に、残りの多くはガス化や製鉄用の材料として用いられる。
実際のところ、容器包装として分別されて集積場に出されているのを余り見かけないから、プラスチック類を可燃ゴミとして扱っている地域では、本来はリサイクルに回される物が可燃ゴミとして処理されているケースは多いと思う。
かくいう私も、容器類は可燃ゴミに入れてますが・・・ (^^;)
ペットボトルは状況が少々違う。
日本のペットボトルはきちんと分別、洗浄されているため外国、特に中国での需要が多く、収集した自治体が日本容器包装リサイクル協会ではなく、輸出業者に売却するケース(独自処理)が多い。
これは指定法人(日本容器包装リサイクル協会)に引き渡すより、業者に売却した方が自治体の受け取れる金額が大きいため。
中国の景気後退のため減少しているが、2015年の回収量は501千トン、輸出量は271千トンとされる。
これはペットボトルに限らず、アルミ缶も国内でリサイクルに回されず、韓国や中国の製鉄の還元剤として大量に輸出された。
アメリカの様に国土が広大で埋め立て地が確保でき、生ゴミから粗大ゴミまでまとめて埋め立て出来れば、武田センセのいうとおり分別しないのが一番低コストなのは間違いない。
アメリカの場合でも最近では環境問題でリサイクル、コンポスト、焼却が増えつつあるが、埋め立てが主流。
海外の廃棄物排出量と処理処分の特徴 しかし、日本の場合埋め立て地の確保が難しく、出来るだけ減量して使っている最終処分場を出来るだけ長持ちさせる必要がある。
最終処分場
リサイクルできる物はリサイクルし、燃える物は焼却して最終処分場に持ち込まれる廃棄物を極力減量する必要が出てくる。
また、住宅は狭く、狭い道路が多い日本ではこんなゴミ箱を置く訳にはいかず、小口で収集せざるを得ない。
結局日本には日本に向いたシステムになったって事だろう。
何と、武田邦彦センセは、自サイトの「読者の方のアドバイス」で、それぞれの具体的な資源の使用量から再生紙の方が環境負荷が低いことを指摘されて、「私もほぼ同じ計算をし、同じ考えである」と断言しています。
それなのに、コストと環境負荷が比例するという根拠のない仮定を持ち出して「疑問があります」と主張しています。
普通、確実性の高い推論と根拠のない仮定が相反する場合は、根拠のない仮定の方が正しくないと考えると思います。
しかし、武田邦彦センセは、確実性の高い推論の方が間違っていると考えるようです。