川島なお美や北斗晶の癌は福島原発が原因???

 

 最近、川島なお美や北斗晶の癌は、福島第一原発事故後に被災 地入りしていたり、福島県産の食品を食べたからというデマが飛び交っていて、そのようなサイトも数多くある。
 例として、『食べて応援、炊き出しボランティア、白目出血、易骨折 — 川島なお美さんの癌はまちがいなく被ばくによるものだ』なるサイトを見てみる

 >残念ながら彼女は、放射能汚染に関しては全く無知・無関心だったようで、原発事故直後の東北の農産物を積極的に食べて応援していたし、福島や岩手に行ってボランティア活動もしていた。
 >普段の食事でも、キノコや海産物を無頓着に食べている。

 事故直後から農産物や海産物はモニタリングされ、事故後は野菜類、穀類、等は500ベクレル/kg、乳製品・飲料水200ベクレル/kg、2011年4月1日から一般食品100ベクレル/kg、乳児用食品・牛乳50ベクレル/kg、飲料水10ベクレル/kgの基準が設定され、基準値を超える物は出荷できなかった。
 検査漏れや故意の検査のごまかしは無かったかとの主張もあるが、その頃は正規の検査だけで無く多くの市民団体が鵜の目鷹の目で独自の放射線のチェックをしていて、ごまかしはかなり困難だったと思われる。
 実際に、明治の粉ミルクから基準値以下だがセシウムが検出されたり、東京の世田谷でラジウムの上に30年以上寝ていた婆様が居た事が判ったのも市民団体の放射線チェックがきっかけだった。
 また、大手の小売業者は独自に検査を実施していて、基準値を超える食料が出回った可能性は皆無とは言わないが低いと思われる。

>さらに、彼女は2012年にアバラ骨を易骨折、2013年には白目を出血している。
>これは内部被ばくをしている決定的な証拠である。
どの様な根拠があって決定的な証拠と断言しているのだろうか?

>前者は、骨の中にカルシウムと間違われて取り込まれたストロンチウム90によるもの。
ポール・ダンス練習中にポールにアバラ骨をぶつけて骨折 「告白」 (2012/5/25)

 ガツン!
 鉄のポールに
 アバラをぶつけてしまいました

 ダンスの練習中に、ポールが肋骨に激突したのが原因の、典型的な直達骨折としか思えないが。
 元々肋骨は骨折しやすく、ゴルフのスイングによって骨折したり、咳き込みを繰り返しての疲労骨折というのも有り、肋骨の骨折は珍しくない。
 gooヘルスケア 
 健康プラザ平成21年4月号 
 何をもってストロンチウム90によるものと主張するのだろうか?
 食品中の放射性物質の調査結 平成24年2・5月調結果 
 食品中の放射性物質の調査結 平成24年9・10月及び平成25年2・3月調結果 
 食品中の放射性物質の調査結 平成25年9・10月調査結果 
 食品中の放射性物質の調査結 平成26年2・3月調査結果  
 食品中の放射性物質の調査結 平成26年9・10月調査結果  

 >後者は、血の中の放射性物質が血管にダメージを与えて出血したもの。
 >おそらく血小板の減少もあり血がすぐに凝固しなかったのだろう。
 結膜下出血は特に珍しいわけでは無く、出血を繰り返さない限り特に治療をする必要も無い。
 東京歯科大学市川総合病院 
 原因は様々ではっきりしない事も多いが、過飲酒というのもあるとか。
 参天製薬 
 川島なお美はワインが大好きとかで、ワインの飲み過ぎが原因だった可能性も大いにあり得ると思うが。

 実際に放射線の健康へどの程度影響があるかだが、マーシャル諸島近海において操業中にビキニ環礁でアメリカ軍により行われた水爆実験によって被爆した、第五福竜丸被爆事件がある。
 1954年3月1日3時42分実施された水爆実験(キャッスル作戦・ブラボー (BRAVO))で、静岡県焼津市の第五福龍丸の乗組員23名(当時18~39歳)が、放射性降下物により被爆し2週間に各人が受けた線量は、1.7~6.0グレイ(1,700~6,000ミリシーベルト)と推定される。
 日本保健物理学会 
 また放射線医学総合研究所が発行している放射線医学の記事「第五福竜丸を振り返って」という記事に、当時の第五福竜丸の見崎吉男漁労長の話が載っている。
 放射線医学2008年2月号  
 福島原発の計画的避難区域が、事故発生から1年の期間内に積算線量が20ミリシーベルトに達するおそれのある区域を対象にしていて、第五福竜丸の乗組員の被曝量がいかに多かったか判る。

 放射線医学総合研究所が第五福竜丸の乗組員の追跡調査をしていて、平成20年の年報までは結果が載っている。
 放射線医学総合研究所、平成20年度年報
 それによると平成20年まで死亡者は14名で内訳は
  肝臓癌   :6名
  肝硬変   :2名
  肝繊維症  :1名
  大腸癌   :2名
  心不全   :1名
  大動脈破裂 :1名
  交通事故  :1名
 この内の肝臓がんだが、日本人の肝細胞癌の原因の90%はB形・C形肝炎ウィルスによるとされ、70%はC形肝炎ウィルス、20%がB形肝炎ウィルスが原因とされる。
 肝炎情報センター 
 第五福竜丸の乗組員には全員に骨髄障害による造血機能の低下がみれれ、そのために輸血治療が行われたが、その輸血による肝炎ウィルスに感染が疑われてる。
 日本では以前の輸血用血液は売血と言われる、有償での買い取りで、その頃の輸血後肝炎発症率は50.9%と、実に輸血を受けた患者の半数以上が発症していた。
 1964年にアメリカのライシャワー駐日大使が暴行を受けて、手術の際の輸血で肝炎を発症し(ライシャワー事件)、大きな社会問題となり売血から献血に移行するきっかけとなった。
 日本における輸血後肝炎発症率の推移 
 被爆事件後の約半年後に死亡した無線長の肝障害の原因は輸血に伴うウィルス性肝炎とみられ、その後の検査でも乗組員の肝炎ウィルスの陽性率が非常に高いとされる。
 そのため肝臓癌に関してはウィルス性肝炎の可能性が大きかったと思われる。
 大腸癌に関しては23人中2人で、罹患率としては約8.7%となる。
 がん情報サービスによると、大腸癌の累計罹患リスク(生涯で癌に罹患する確率)は大腸がんで男9%となっているので取り立てて多いとも思えない。
 がん情報サービス・最新がん統計 

 WHOの福島原発による発がんリスクに関する報告書がある。
 Global report on Fukushima nuclear accident details health risks   
 それによると、最も汚染された場所に住んでいる人達の将来の発がんリスクは
  ・すべての固形がん – 幼児として露出女性の約4%
  ・乳がん – 幼児として露出女性の約6%。
  ・白血病 – 幼児として露出男性の約7%;
  ・甲状腺癌 – 幼児として被曝した女性について70%以内の増加のリスク(これは発がん率が住民の70%になるという意味ではなく、「通常予測される甲状腺がんのリスクは0.75%であり、最も影響を受けた場所の幼児として被曝した女性の生涯の発がんリスクがが0.5%ポイント増えて1.25%になる」という意味)
 但しこれには前提条件があり、報告書本文の38ページに次の様な記述があり、現実とは異なったより厳しい条件下による想定である。
 Health risk assessment from the nuclear accident after the 2011 Great East Japan Earthquake and Tsunami

 For instance, it was assumed that relocation in the “de-liberate evacuation area” took place at 4 months although the inhabitants of this area were subjected to relocation at different times earlier than this.
 It was also assumed that all the food monitored was on the market although the data set included the results of food samples that were collected for monitoring purposes and were not allowed on the market.

 これは(事故発生直後に全員避難した)計画避難区域に4ヶ月住み続け、(放射線検査により出荷禁止だった)被災地の農産物も食べ続けたという現実とは異なった条件を前提にしていて、しかもこの条件は要旨等には書かれておらず、本文の非常に判りにくい箇所に書かれていた。

 日本人の最新の癌罹患率の結果は2011年なので、厚生労働省の人口動態統計から悪性新生物(癌)の死亡者数を調べてみた。

出典:厚生労働省人口動態統計

 2009年の死亡者数がやや減少しているが2010年以降は、ほぼ直線的に増加している。
 川島なお美や北斗晶の様に一時的に現地を訪問したり、時々福島産の食品を食べただけで発癌する程影響があるなら、事故後も福島や周辺地域で生活したり、現地の食品を食べて生活した人はもっと多くの影響を受けたはずである。
 発がんが必ずしも死亡に直結するわけでは無いが、川島なお美や北斗晶の行動くらいで発癌するなら、もっと多くの人が発癌しているはずだし、そうであれば死亡者数にも影響するはずである。
 しかし、2011年以降も特に死亡者数の急な増加は認められない。

 このような事には絶対という事はあり得ないが、川島なお美や北斗晶の癌が福島原発の事故によるものと言う説は、全く根拠無しで無責任と言わざるを得ない。

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