偽物騒動『ハーボニー』

 

 C型肝炎治療薬のハーボニーのニセ物が出回り大騒ぎとなっている。
 ハーボニーはギリアド・サイエンシズが製造販売していて、有効成分はレジパスビルとソホスブビルを配合した医薬品で、1日1回1錠を12週間経口投与でジェノタイプ1型のC型肝炎に対しては、著効率が95%~100%ときわめて高く非常に有効な治療薬である。
 その一方で薬価が1錠54796.90円(2017年2月)ときわめて高価で、一瓶28錠入りが約153万円、12週分で約460万円ときわめて高価な医薬品である。
 実際には医療費の助成が有り、最高でも一月に最高で2万円の負担で済むため、高額医薬品としてやり玉にも挙がっている。
   
 一瓶が約150万円と高額で、ニセ物が出ても不思議では無い状況ではあった。
 事の始まりは、奈良市のサン薬局平松店でハーボニーを受け取った患者が、錠剤の形状や色が異なっている事に気づき、薬局に相談したところニセ物である事が判った。
 回収したギリアドサイエンシズが調査したところ、瓶そのものは正規品だが中身がニセ物だったという。
 また、本物の瓶のシールはなかなか剥が難しいくらいしっかり貼り付けられているが、ニセ物は簡単に剥がせたという。
 厚生労働省の資料によると、関西メディコ傘下のサン薬局で5本、東京の卸売業者からそれぞれ5本、3本、1本の13本が見つかっている。
  
 関西メディコに納入された偽造品は、ギリアドの正規取引先(スズケン、東邦薬品、葦の会)以外の卸業者から納入された物で、東京の卸業者が持ち込まれた偽造品を現金買いしたとされる。
 また、本来は箱入りで添付文書も添付されているにもかかわらず、箱から取り出されたむき出しのボトルの状態であったとされ、医薬品販売の許可の有無も確認しないまま仕入れたとされている。
 本物のハーボニーの空き瓶を何もかが入手して、偽物を詰めてシールしたニセ薬だったわけで有る。
 形状も成分もバラバラで、ビタミン剤や漢方製剤、C型肝炎治療薬の「ソバルディ錠400mg」と思われる錠剤と色々であった

  見つかった偽物
 
 それにしても患者が一目見て怪しいと思われる形状で幸いであった。
 偽物と知らないで服用していたら、肝炎が急変していた可能性もあった。

  こちらは本物

 今回の件でクローズアップされたのが、余剰の医薬品を医療機関や薬局や卸業者から買い取とって転売する業者、いわゆる現金問屋である。
 医薬品の販売許可を取っていれば、現金問屋自体違法では無い。
 売り手は余剰の医薬品を現金化できるし、買い手も正規ルートより安価に入手出来る訳である。
 今回はこのルートが狙われた事になる。
 それと、ハーボニー自体が偽物が作りやすい包装形態になっていた。
 日本で処方薬の錠剤やカプセルの包装形態はPTP包装と言われる、合成樹脂シートで包装されている。
PTP包装 大成化工 
 ハーボニーはプラスチック瓶入りとなっていて、アメリカなどでは普通の包装形態となっている。
 瓶入りとPTPでは、明らかに瓶入りの法が偽造しやすい。
 そのために、ハーボニーも年内にPTP包装に切り替えるとの事である。
 食品等でもエキストラヴァージンオリーブオイルなど、高額なものほど偽造されやすいのは世の常ではある。
 偽造されにくい包装などの工夫は必要であろう。
 それにしても開封された形跡のある医薬品を買い取ったり、仕入れたりするなど杜撰な取り扱いが普通に行われて、杜撰な扱いをされているのには驚いた。

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