郡司和夫センセのデタラメ記事(イチゴ)
郡司和夫センセのデタラメシリーズ「イチゴ」
『イチゴ、洗わずに食べると人体に危険!銅剤含有の農薬を大量使用、内臓に危害の恐れだそうです。
特に、灰カビ病対策に使われている「クリーンアップ」という農薬は銅剤が加えられていますので、銅による薬害が問題視されています。
酸化銅について、「経口摂取後に腎臓、肝臓に影響を与えることがある。これらの影響は遅れて現れることがある」(国際化学物質安全カード)との指摘があります。
クリーンアップは、生物農薬(バチルス属細菌)の補完剤として使われています。
灰カビ病は、低温多湿という環境下で発生します。防湿ファンが設置され、常にハウス内を乾燥状態に保っているハウスでは発生しません。
したがって、イチゴ狩りをする際は、ハウスに防湿ファンが正常に稼働しているか確認することが重要です。
防湿ファンが設置されていない観光農園であれば、農薬がかなり使用されていると考えられるため、そのイチゴを食べるべきではありません。
まず何がデタラメかというと、農薬名が間違っている。
「クリーンアップ」ではなく、「クリーンカップ」が正しい商品名で、これを間違えたら話にならない。 ┐(´д`)┌
もっとも、郡司センセが「クリーンカップ」の正体を知られたくないため、わざと間違えた可能性も否定しないが・・・・・・
『クリーンカップ』
>酸化銅について、「経口摂取後に腎臓、肝臓に影響を与えることがある。これらの影響は遅れて現れることがある」(国際化学物質安全カード)
そりゃ、大量に摂取すればそうなるかも。
ちなみに、国際化学物質安全カードではどれだけ摂取したか、摂取量は書いてない。
国際化学物質安全カード(酸化銅)
>特に、灰カビ病対策に使われている「クリーンアップ」という農薬は銅剤が加えられていますので、銅による薬害が問題視されています。
このネタ元は『農業協同組合新聞』2013年9月20日の「【現場で役立つ農薬の基礎知識 2013】[16]イチゴの施設栽培防除」ではないかと思う。
低温多湿条件で多く発生するので、防湿ファンを回すなどハウスを乾燥状態にするとかなり発生を抑えられる。
薬剤防除は、発病初期に重点をおいて、系統の異なる薬剤を果実を中心に丁寧にローテーション散布する。
この病害も、多くの薬剤に耐性菌が発生しているので、指導機関の情報に従って薬剤を選んでほしい。
カンタス顆粒水和剤やスミレックス水和剤、ロブラール水和剤、フルピカフロアブル、アミスター20フロアブルなどが主な使用薬剤である。
バチルス属細菌が灰色かび病に効果のあることから、同菌を成分とする生物農薬も登場している。しかし、効果を安定させるためには、繰り返しの散布が必要なため、近年は、生物農薬の効果を補完し、他の病害にも効果を示すようバチルス菌に銅剤を加えた薬剤(クリーンカップなど)も登場している。
成分に銅を含むため、薬害に一定の注意が必要だが、回数制限のない有効剤として好評とのことだ。
『農業協同組合新聞』2013年9月20日
郡司センセは銅剤の使用でヒトに障害が起きると言いたい野だろうが、ここで言う薬害というのはヒトに対してではなく、作物(イチゴ)に現れる障害の事。
銅剤は歴史が古く、1880年代の終わり頃から「ボルドー液」として使われ始め、歴史の長い薬剤である。
銅剤は銅イオンの抗菌作用を利用した殺菌剤で、収穫物に残留する量では人間への危険性は低いと考えられ、無機銅農薬を使用した農産物は、日本農林規格(JAS)において「有機農産物」の表示が認められていて、「クリーンカップ」も対象となっている。
銅剤は作物に対する薬害が多いとされるが、耐性菌が出来にくい事とと、ヒトに対する毒性が低く、散布回数の制限が無いため現在でもつかわれている。
日本における、食事からの銅摂取量の耐容上限量(小児や妊婦を除く)は、サプリメントから10 mg/dayの銅を12週間継続摂取しても異常を認めなかったとしたアメリカの報告を元に、10 mg/dayとされている。
銅及びその化合物 – 環境省
また、銅は必須ミネラルでもある。
「クリーンカップ」は32.6%の銅を含んでいる。
野菜(イチゴ)の灰色かび病は1000倍のクリーンカップ液を、10a(1000㎡)当り100L~300L散布するとされる。
1000倍のクリーンカップ液を作るには、水1L≒水1kgとすれば99.9Lの水でクリーンカップ100gを溶かす事になり、約100Lのクリーンカップ液に32.6gの銅が含まれる事になる。
それを10a(1000㎡)に最大量の300L散布すれば、1㎡当りの銅の量は、32.6g÷1000X3=0.0978g=97.8mgとなる。
実際にイチゴに付着する銅の量は微量で、イチゴを食べて健康に被害のある量の銅を摂取るとは非常に考えにくい。
ま、イチゴを株まるごと10本くらい喰えば、耐容上限量の10mgに達するかも知れないが・・・
また、郡司センセは洗わないイチゴを食べると危険としているが、銅剤は展着性が良いとされ、水洗いした位で大幅に減少するとは考えにくい。
郡司センセ
>防湿ファンが設置され、常にハウス内を乾燥状態に保っているハウスでは発生しません。
農業協同組合新聞
>防湿ファンを回すなどハウスを乾燥状態にするとかなり発生を抑えられる。
防湿ファンだけで防止できれば、誰も苦労はしないという事。
郡司センセが元ネタを間違えたか、故意に都合の良い解釈をしたとしか思えない記事である。
また、ハウス栽培のイチゴでは、生長ホルモン剤を使用している場合があります。
ホルモン剤を水で希釈してイチゴに与えると生長が格段に早まります。
通常、市場に出荷される野菜・果実では、収穫の3日前までに使用を終えますが、観光農園の場合、かなりルーズに使用されているとの情報があります。
>通常、市場に出荷される野菜・果実では、収穫の3日前までに使用を終えますが・・・・
使用できる最終日は薬剤により大幅に異なる。
成長ホルモン剤と言うが、正式には植物生長調整剤という。
これは、植物ホルモンや植物に対して生理活性の高い物質の総称である。
イチゴの成長促進に適用される成長促進剤は2剤である。
ジベレリン(協和発酵バイオ・住友化学園芸等)
(促成栽培) 着果数増加熟期促進
濃度:10ppm
休眠に入る直前(冬場の低温期)
茎葉全面散布(5ml/1株)
ランナー発生促進
濃度:50ppm
採苗時、ランナー発生直前~発生初期
茎葉散布(10ml/1株)
果柄の伸長促進
濃度:10ppm
頂花の出蕾直後~開花直前
株中心部に5ml散布、1果房当り1回、1株当り10回以内
ジベレリンは植物の成長ホルモンだが、ブドウの種無し処理に広く使われている物質で、植物中には必要な物質であり植物中に存在する。
ホルモンではあるが動物には影響が無く、合成するには発酵法で作られる。
果柄の伸長促進のための散布では、10ppm溶液を株当り5ml使用する。
10ppmは100,000分の1なので、10ppm、5mlのジベレリン液には、5ml≒5gとすると、
5g/100000=0.00005g=0.05mg
が含まれる。
株に対しての散布なので、イチゴに残留する量は遙かに少なく、ヒトへの影響は無いと思って良い。
そもそもジベレリンには一日摂取許容量(ADI)が設定されていない。
農薬のADI及びARfD値 一覧表4ページ目
サンキャッチ液剤30S(塩化コリン/アグロカネショウ・北興化学工業)
第一果房肥大期の生育促進
濃度:200倍
散布量:100L~300L/10a
定植翌日および二週間後又は定植二週間ごおよび四週間後、茎葉散布
2回以内
塩化コリンはビタミンB複合体で、家畜の飼料の添加物に用いられ、外国ではサプリメントにも使用される。
初期評価プロファイル(塩化コリン)
収穫直前まで使用できる植物生長調整剤が無い訳では無い。
それはビビフルフロアブルという植物生長抑制剤である。
ビビフルフロアブル(プロヘキサジオンカルシウム塩水和剤)
これは植物の成長ホルモン、ジベレリンの生合成阻害をする薬剤である。
植物全般にいえる事だが、株が成長しすぎると花芽が付きにくくなるため、株の成長を抑制させる薬剤である。
促成栽培のイチゴに対して
生育後期の伸長抑制
濃度:400~600倍
使用量:10~25ml/株
葉柄徒長期但し、収穫前日まで、2回
プロヘキサジオンカルシウム塩の一日摂取許容量(ADI)は「0.2 mg/kg 体重/日」と定められている。
プロヘキサジオンカルシウム塩 9ページ目
ビビフルフロアブルの成分は
プロヘキサジオンカルシウム、1%
水・界面活性剤等、99%
おおまかだが、100mlに1gのプロヘキサジオンカルシウムが含まれているとする。
100ml≒100gとして
100ml(0.1l)中1g
0.1L*400=40Lで
40L中1g
25ml=0.025L
0.025/40*1=0.000625g=0.625mg
株に対する散布なのでイチゴに残留したとしても遙かに少なく、問題ない。
郡司センセは大騒ぎしているが、銅アレルギー等の特殊要因でも無い限り、イチゴを喰って内臓に危害の恐れが発生するとは到底考えられない。
逆に、防除記録が公開されていない場合、必ず水洗いをしてから食べるべきです。
そのために、水を入れた大きなペットボトルは必ず持参してください。
水洗いというより水で濡らしているレベルで、ほとんど意味なしと言っても過言では無い。
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