学校菜園でのジャガイモ中毒
新聞などの報道によると、国立医薬品食品衛生研究所の調査で、ジャガイモによる食中毒の90%は学校で起きているという。
研究所の登田(とだ)美桜(みおう)主任研究官(食品衛生学)らが、国や自治体の公表資料を基に、1989年から2015年のジャガイモ食中毒を分析。
98年以降、02年と08年を除く毎年発生し、計30件で718人が食中毒になっていた。ほとんどが小学校で、幼稚園や中学校なども一部あった。重症例はなかった。
9割にあたる27件が学校の菜園で栽培したイモが原因で、給食とは別に、塩ゆでなどで食べられていた。芽かきや土寄せが十分ではなく、小さくて光の当たったイモを皮ごと食べた例が目立つという。
97年以前は発生ゼロで、昭和期までさかのぼっても数件程度だった。栽培知識のない教員らによる管理や、農家ら協力者の減少などが増加の原因として考えられるという。登田さんは「菜園を適切に管理し、食べる際は皮をむくといった対策をしてほしい」と話す。
朝日新聞デジタル
ジャガイモによる中毒は、ジャガイモに光があたることでイモに生成・蓄積されるポテトグリコアルカロイド(PGA)(主としてα-ソラニン、α-チャコニン)による。
いも類は、植物中の栄養を塊茎(地下の茎が肥大したもの)に溜め込み、自らが繁殖するために動物などに食べられないように有害な物質をため込むという説もある。
今回の調査を見るまでもなく、学校で栽培したジャガイモによる中毒が多い事は判っている。
東京都の食品安全情報サイト~じゃがいも いも知識(平成19年5月25日
この東京都福祉保健局のサイトによると、平成10年以降、全国の学校で12件のジャガイモによる食中毒が発生しているとのこと。
一番の原因は、栽培方法が不適当なためにジャガイモに光が当たり、PGAが蓄積したジャガイモを食べたために起きている。
一部のサイトに未熟なジャガイモによると書いてあるが、ジャガイモの未熟、完熟には直接の関連性は無く、栽培中や収穫後に適正な管理がされていれば完熟、未熟、イモの大きさに係わらず健康に影響が出る事は無い。
未熟なジャガイモが問題になるのは、未熟なジャガイモの方が光が当たった際にPGAを蓄積しやすいためによる。
また、PGAは皮の近くに蓄積されるが、小粒のジャガイモの場合皮をむくと食べる部分が無くなるため、皮付きで茹でたりするために中毒を起こしやすい。
農林水産省消費者相談
ジャガイモを育てるにはある程度のコツが必要になる。
ジャガイモは種芋を植えるが、種芋から多くの芽をふいてしまい、そのまま育てると株が茂りすぎて光の当たり方が悪くなり、イモの部分は育ちが悪く小粒のイモばかり一杯になる。
そのため、種芋から出た芽の中で勢いの良い芽を1~2本残して抜いてしまう必要がある。(芽欠き)
株が育ってくると株元に周りから土を寄せて、育ってきたジャガイモに日光が当たらない様にしてやる。(土寄せ)
農家がジャガイモ栽培をする際は常識であるが、これを知らないで栽培しているケースが多いのだろう。
それと学校の菜園で栽培するには、ジャガイモは不適当と思われる。
ジャガイモの生育温度は10~23℃、適温は16~20℃である。
一般に温度が高いと出葉、葉の伸長が促進されるが、茎の生長には18℃、葉の生長には12~14℃が最適で、塊茎肥大の適温は16~20℃である。
JAふじかわ
ジャガイモの植え付け時期は大体、次の図のとおりである。
春植えのジャガイモは3月までに植え付ける必要がある。
ところが学校では3月が学年末となるため、3月までに植え付ける事が難しく、たいてい4月以降の植え付けとなる。
そうなると、芽欠きもされず高温障害でイモの部分が育ちにくく小粒のままとなりやすい。
また、土寄せもされないとなるとイモの部分に日が当たりPGAが蓄積しやすくなり、小粒のため皮むきも出来ず皮付きで調理と言う事になってしまう。
そもそも、植え付け時期からして学校でのジャガイモ栽培は無理があり、きちんとした管理をしないと今後もジャガイモによる食中毒が続きかねない。
ジャガイモよりも植え付け時期のおそいサツマイモとか、栽培する種類を変えた方が良いかもしれない。
この記事へのコメントはこちら