新たな名前で出ています「紅茶キノコ」
最近、コンブチャなる物が話題になっている。
昆布茶ではなく、kombuchaで最近欧米で流行っているという。
実態は、かつて日本で流行った「紅茶キノコ」の事で、『新たな名前で出ています』といったところか。
最近は朝日新聞デジタルでも紹介されている。
紅茶キノコ、名前変えました 分析進めて狙うは再ブーム
紅茶キノコの実態は、酢酸菌と酵母で、数ある酢酸菌でもセルロース生成が出来るGluconacetobacter Xylinusである。
コンブチャというか紅茶キノコを作るには、紅茶500mLに砂糖を40g~50gほど加えて、スターターを入れておくと、酵母が砂糖を栄養源にアルコール発酵を始め、酢酸菌がアルコールを栄養源に酢酸を作り出す。
酢酸がコンブチャの主な成分である。
酢酸菌が酢酸発酵するためには酸素が必要であるが、酸素は水に溶けにくい。
そのため、酢酸菌(Gluconacetobacter Xylinus)はセルロースの膜を作り、その膜を浮子として水面に浮き上がり、たっぷりの酸素を得て酢酸発酵を行う。
酢酸菌は酸素を得るため、上方にセルロースの幕を作り続け、セルロースの層がクラゲ状となり、キノコの傘に見えることから、紅茶キノコと呼ばれた訳である。
一方、アルコール発酵する酵母は、液体中で浮遊するより何かに定着した方が安定して活動できる。
酢酸菌が作り出したセルロース層は酵母にとって絶好の住処となり、アルコール発酵の際に発生する、水に溶け残った二酸化炭素がセルロース層を浮かび上がらせる。
酵母は酢酸菌の栄養源となるエチルアルコールを作り出し、酢酸菌の作ったセルロース層は酵母の絶好の住処と成り、共生関係となっている。
同様の事を利用しているのが、ナタデココ。
ココナッツ果実の内部に蓄えられたココナッツ水にGluconacetobacter Xylinusを加えて発酵させ、セルロース層が厚くなってきた物をカットして食用にしている。
ところで、コンブチャは健康に良いのかと言うことになるが・・・。
コンブチャは酢酸発酵による酢酸が含まれるはずであるが、1977年に東京都立衛生研究所の研究者の調査によると大部分は酢酸であるとしている。
いわゆる「紅茶キノコ」の微生物と有機酸
酢酸の生理機能性に関しては複数の研究で、高血圧、高血糖、血清中性脂肪の低下などが認められている。
酢酸の生理機能性
生活習慣病に及ぼす食酢の効果
コンブチャに含まれるD-サッカリン酸-1、4-ラクトン(DSL)には発がん性を抑えたり、肝機能の改善に効果があるとされるが、ヒトに対する有効性は証明されていないとされている。
What is kombucha and how do the health claims stack up?
紅茶キノコは1975年に爆発できなヒットとなった。
この仕掛け人は中満須磨子で1974年12月にに「紅茶キノコ健康法」(地産出版)を出版、30万部を超す大ヒットとなった。
紅茶キノコ健康法によると、「紅茶キノコはバイカル湖畔の長寿村に昔からあった健康法で、常用している村人にがん、高血圧、心臓病で死んだ人はいない。万病に効くが、特に高血庄、肝障害、胃腸障害、慢性腎炎、水虫などに効果がある」と書かれていた。
これだけのブームになると、その効果に疑問を持つ意見も増えてきて、国会でも取り上げられ、愛好者の厚生省の幹部がやり玉にあげられ、厚生省は「効果の実態は明確でない」と国会で答弁するに至った。
出典:戦後医療事件史/(株)じほう:鈴木 厚
『いわゆる「紅茶キノコ」の微生物と有機酸』によると、紅茶キノコを構成する微生物に病原性は認められないとしている。
また、赤痢菌、大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌を接種すると、培養温度に係わらず、48時間以内に完全に死滅、結核菌と同属のcobacterium phleiも72時間以内に死滅したとしている。
一方、カビに関しては培養6日目には増殖し、カビ汚染の恐れを指摘している。
紅茶キノコは、寒冷地での手作り飲料であったが、高温多湿の日本では発酵食品の衛生管理は極めて難しい。
実際にカビ等による汚染で健康被害も発生し、半年あまりでブームは一気に去ってしまった。
その紅茶キノコが、欧米から逆輸入の形で、新たな名前(コンブチャ)で出てきたわけである。
いわゆるコンブチャには、色々な生理機能性物質が含まれ、ヒトに対して有効であるとの説が流布している。
現状でコンブチャの成分でヒトに対する生理機能性が証明されているのは酢酸位で有る。
安物の食酢を水割りで飲むのと(不味いです)高価なコンブチャを飲むのと、あなたはどちらが良いですか?
この記事へのコメントはこちら