ベビーフードが危ない???
郡司和夫センセのネタばかりとクレームのメール??を頂きましたが、郡司和夫センセ突っ込みどころ満載なもので・・・
と言うことで、今回も郡司和夫センセネタを~
『ベビーフード、安全性が疑問視される加工デンプン使用が野放し…EUでは禁止の添加物も』
和光堂ブランドのベビーフードを製造販売してる、アサヒグループ食品が一部商品の自主回収を行った。
一部商品の自主回収に関するお詫びとお知らせ
粉ミルクを携帯しやすいように1回分をパックにした商品で、パッキングの際に商品の酸化防止に窒素を充填したものである。
窒素分子は非常に安定していて反応性が低いため、他の物質と結合しにくく、毒性も無いため食品の酸化防止に食品容器に充填される。
今回は窒素の充填不足で酸素が十分に排除しきれなかったという事であろう。
これらのガスは、もともと空気中に含まれているものですから、安全性は高いと評価されています。
しかし、食品添加物ですから、使用法を誤れば食品の品質を劣化させ、消費者の健康に悪影響を与える恐れがあります。アサヒグループ食品が自主回収している「はいはい」などの育児用ミルクも、この「ガス置換包装」されたものです。
自主回収告知では窒素ガスの封入が不十分だったということですが、単に窒素ガスの量が不足していたのか、あるいは窒素ガスの純度が低かったのか定かではありませんが、製造過程の徹底的なチェックが求められるところです。
窒素の製造は空気を冷却して液体空気をつくり、各元素の沸点の違いを利用して空気中の元素を分離する、深冷分離法で行われる。
小規模な製造にはPSA(圧力変動吸着)や膜分離等も使われるが、いずれも物理的な製法で作られるが、純度が低いなど考えにくい。
次は亜酸化窒素。
化学式N2Oで別名1酸化2窒素、笑気とも言われ麻酔薬としても使われ、常温では反応性の低い気体である。。
早速、郡司センセは間違えている。
窒素、二酸化炭素などのガスは既存添加物(旧天然添加物)ですが、亜酸化窒素は同じガスでも指定添加物(旧化学合成添加物)に分類されています。
二酸化炭素は指定添加物とされていて、指定添加物リストの284に、二酸化炭素(炭酸瓦斯)としっかり載ってますよ~
指定添加物リスト
早速、毒性云々の話となっております。
食品安全委員会の報告書には、実際に人が摂取する亜酸化窒素を含有したホイップクリームを、ラットに与えて調べた結果が記載されています。それによると、ラットの口腔内へのクリーム逆流、腹部の膨張、胃・小腸内部に白色内容物が認められています。
食品安全委員会の評価書によると次の通り。
ラットを4匹ずつ4群に分け、各グループに0, 5, 10, 15g/kg体重のホイップクリーム、(亜酸化窒素として0, 29.8, 59.6, 89.6mg/kg体重)を経口強制摂取させたところ、15g/kg投与群で投与直後に口腔内へのクリームの逆流がみられた。
5g/kg投与群以上においてそれぞれ、1, 3, 3にガス貯留による膨張がみられた。 病理学的検査では影響は見られなかったとしている。
体重投与群で投与 日目にホイップクリームの逆流が観察されたことか15 g/kg1ら体重が技術的に投与可能な上限であると考えられるとしている。
亜酸化窒素を添加物として定めることに係る食品健康影響評価に関する審議結果
15g/kg体重のホイップクリームというと、体重50kgのヒトに換算すれば750gのホイップクリームと言うことになる。,
クリームの比重は約1で、100gのクリームは約100mlと言うことになる。
ホイップクリームは液状のクリームの約2倍の体積となり、750gのホイップクリームは1500mlにもなり、とてつもない量というのが判る。
ヒトだと到底食べることの出来ないとてつもない量のホイップクリームを強制給餌されれば、ラットだって胃も張るし、ゲロだって吐きます。
また、亜酸化窒素ガス曝露による毒性試験では、雄ラットで精子形成細胞の障害、精子数の減少が見られ、妊娠したラットでは胎児脂肪、胎児の内蔵・骨格異常が観察されています。
雄ラットに亜酸化窒素20%、酸素20%、窒素60%の混合気体に最長35日間曝露したところ、精細管の精子形成細胞の傷害、精子数の減少が35みられた、としている。
Wistarラットに0.5%亜酸化窒素(0.5% )を妊娠1 ~19日昼夜曝露したところ、胎児数の減少、吸収胚の増加、骨格異常、胎児重量の減少等が認められた。
などの記述がされていて、いずれも食品添加物として摂取する亜酸化窒素とかけ離れた量を摂取した場合の話である。
評価書では、ホイップクリーム類に添加物として適切に使用する限りにおいては安全性に懸念がないと考えられ、一日摂取許容量(ADI)を設定する必要がないと評価している。
食品添加物として使われる低反応性のガスには、窒素や二酸化炭素があるが、ホイップクリームに亜酸化窒素が使われるには理由がある。
窒素ではクリーム中に十分に入り込まず、ホイップ化が不十分で、二酸化炭素だと酸味、苦み、刺激のある味など、味覚面で問題がある。
その点、亜酸化窒素はホイップ化や味覚に問題が無い。
亜酸化窒素に関する資料概要 その11
亜酸化窒素は業務用でホイップクリーム類の製造に広く使われる。
エプスーマアドバンス 日本炭酸瓦斯
エプスーマアドバンス 東邦アセチレン
ちなみに、厚生労働省は平成28年2月18日付けで一酸化二窒素(亜酸化窒素)を新たに「指定薬物」として指定する省令を公布し、本省令は平成28年2月28日付けで施行された。
これにより、亜酸化窒素と亜酸化窒素を含む製品について、医療等の用途以外の目的での製造、輸入、販売、所持、使用等が禁止になった。
これは亜酸化窒素には麻酔薬としての用途があり、中枢神経系への作用を有し、乱用の恐れがあるための処置である。
医療等の用途として、食品衛生法第4条第2項に規定する添加物の用途は認められているため、エプスーマアドバンスは使えることになる。
ただし、亜酸化窒素をつかうエスプーマアドバンスは事業者向けで、個人は購入できない。
食品衛生法における亜酸化窒素の取扱いについて
ちなみに亜酸化窒素入りスプレー缶のホイップクリームは個人でも購入は可能である。
この夏には、育児用液体ミルクの販売が日本でも解禁されます。育児用ミルク販売会社は、この亜酸化窒素が液体ミルクも含めて、すべての育児用ミルクに使われていないか、徹底的な検査をする必要があるでしょう。
そもそも育児用ミルクに亜酸化窒素を使う必然性は無いし、使用方法や物が物だけに誤って使用なんて事は無いと思うけどね。
そして、ベビーフードの加工デンプン
しかし、加工デンプンは、安全性に関する情報が不足していることが大きな問題になっている添加物です。
デンプンに化学薬品を加えて、その特性を失わせたり、増強させたりしている合成添加物です。EU(欧州連合)は乳幼児向け食品に、加工デンプンのひとつヒドロキシルプロピル化リン酸架橋デンプンの使用を禁止しています。
「製造工程で用いられる化学物質のプロピレンオキシドは、発がん性、遺伝毒性のある物質であることは否定できない」(SCF:欧州食品科学委員会)というのが、その理由です。
日本では加工デンプンは食品扱いされ、食用デンプンとして扱われていた。
平成20年10月1日、厚生労働省より食品衛生法施行規則の一部を改正する省令が公布され、加工デンプン11品目については、添加物として取り扱われることとなり、平成23年3月31日までの経過措置をもって添加物として扱われる様になった。
これは、加工デンプンが欧米では添加物として扱われていたため、国際基準に合わせるための処置であった。
食品扱いをされていた加工デンプンは、使用の制限もなく長期間使用されていたが、加工デンプンに関する安全性に、特段の問題はないとされている。
食品添加物評価書によると次の通り。
また、EU においては、ヒドロキシプロピルデンプン及びヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの2種類の加工デンプンについては、エーテル化剤として用いられるプロピレンオキシド等の安全性情報が不足していることから、乳幼児向け食品には用いるべきではないとされている。
食品添加物評価書 加工デンプン
一方で次の様な記載もある。
プロピレンオキシドは、遺伝毒性発がん物質であることが否定できないことから、米国における発がんリスクの定量評価結果をもとに、わが国の推定摂取量に基づく生涯リスクを導いたところ、一般に遺伝毒性発がん物質の無視しうるレベルとされる100万分の1レベルを下回った。
また、生体組織に吸収されたプロピレンオキシドは、グルタチオン抱合や加水分解により代謝、解毒されるとされており、そのリスクは極めて低いと考えられた。
加工デンプンを食品添加物扱いにする際のパブリックコメントにも次の様な記載がある。
意見
6.ヒドロキシプロピルデンプンおよびヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンについて、「提出された検体からは、プロピレンオキシドは検出されなかった(検出限界約0.006μg/g)ことから規格を設定する必要はない」とされたが、常に検体と同レベルのものが生産されるとは限らないため、プロピレンオキシドの限度試験を加えるべきと考える。(回答)
プロピレンオキシドについては、検体から検出されなかったことの他に、JECFA、EC 及び米国において規格が設定されていないことや「生体組織に吸収されたプロピレンオキシドは、グルタチオン抱合や加水分解により代謝、解毒されるとされており、そのリスクは極めて低いと考えられた」等とする食品安全委員会の食品健康影響評価の結果を踏まえ、規格としては設定しないこととしました。
なお、プロピレンオキシドは、沸点が34.23℃と低く、蒸気圧は58kPa(20℃)と高いため、プロピレンオキシドのまま加工デンプン中に残留することは考えにくく、未反応のプロピレンオキシドは、プロピレンクロロヒドリン類に変化しているものと考えられます。
なお、クロロヒドリン類については規格値を設定しています。。
パブリックコメント一覧
プロピレンオキシドの沸点は低く、蒸気圧も高いため最終製品に残留する可能性は低いとの判断であろう。
ちなみにヒドロキシプロピルデンプンおよびヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンのプロピレンクロロヒドリン類の規格値は1μg/g
JECFA,FCC,EU において 1μg/g 以下と設定されており、日本でもそれに準拠。
加工デンプン 11 品目の規格設定の根拠
FCCはFood Chemicals Codexの略で、アメリカ連邦通信委員会 (Federal Communications Commission)とは別物なので念のため。
ヒドロキシプロピルデンプンおよびヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの乳幼児向け食品への規制はEU独自であり、日本やアメリカには無い。
EUは潜在的なリスクの回避をとり、アメリカや日本は実質的な健康リスクは無いとの立場によるものである。
郡司センセも触れている日本ベビー食品協議会のベビーフード自主規格の、加工デンプンに次の様な記載がある。
注)加工デンプン(アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシルプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸架橋デンプン)については製品中(「ドライタイプベビーフード」にあっては標準濃度に調製したもの)に残存する量(複数の加工デンプンを併用する場合はその合計値)が 5%を超えてはならない。
これもEUの規制に準拠する、日本ベビー食品協議会の自主規制。
SCFでは、第 2 回(1976 年)、第 13 回(1982 年)、第 32 回(1994 年)及び第 36 回(1995 年)会合において、加工デンプンの評価を行い、最終的に 11品目の加工デンプンを「グループB(乳幼児向け食品については 5%以下の濃度で使用すべきであるとし、それ以外の食品には特に制限なく使用できる。
食品添加物評価書 加工デンプン http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/dl/s0704-15m.pdf
これは加工デンプンが栄養的な価値が全くないと仮定し、ベビーフードのみを栄養源とした場合を想定した場合の想定によるもの。
加工デンプン(栄養学的観点からの検討)
郡司センセは色々書いてはいるが、実質的な健康リスクは低い。
ま、最終的には自己責任による判断ではあろうが。
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