オーストラリア産大麦より基準を超える殺菌剤が
伊藤忠商事が昨年輸入したオーストラリア産の大麦から、殺菌剤のアゾキシストロビンが基準値が0.5mg/kgに対して5倍の2.5mg/kg検出されたとの報道があった。
この大麦を使用した食品が回収される騒ぎとなっているが、報道では食べたところで健康上問題ないとしか伝えられていない。
回収騒ぎになっているのに、食べても健康に影響が無い理由をきちんと報道しているところは無かった。
農林水産省のプレスリーリースによると今年の3月26日に、伊藤忠商事から西田精麦にに納入された大麦を加工した大麦フレークをサンプル出荷し、納入先の企業で自主検査を行ったところ、基準値の4倍の2mg/kgのアゾキシストロビンが検出されたとの報告が有あった。
農林水産省は伊藤忠商事に対し、保管されている大麦のアゾキシストロビンの分析をし、報告するよう指示をした。
1,その結果、基準値の5倍の2.5mg/kgのアゾキシストロビンが検出されたとの報告が有り、
所管の保健所に報告し、その指示を受けて、流通先への連絡、商品の流通の差止め、回収、公表等を適切かつ速やかに行い、その状況について、農林水産省に対して逐次報すること。
2,食品衛生法上の基準値を超えるアゾキシストロビンが検
出されたことについて、このような事態に至った原因を究明し、再発防止策とともに、平成30年4月27日までに農林水産省に対して報告すること。
等の指示を出した。
指示
その結果、該当の大麦製品を使った商品が回収されるという騒ぎとなった。
日清シスコのシリアル製品と日本ルナのヨーグルトが回収対象となった。
アゾキシストロビンはストロビルリン系の殺菌剤で、学名ストロビルルス テナセルス(Strobilurus tenacellus)、日本名はマツカサシメジと呼ばれるキノコが作り出す生理活性物質の誘導化合物である。
ストロビルリンは競合関係にある他のキノコの増殖をおさえる効果がある。
ちなみにマツカサシメジは食用可であるが、小さすぎて食用にされることは少ない。
各農産物の残留基準は次の通り
農薬等の基準値 アゾキシストロビン
このリストを見ると、最低は0.01ppm、最高は300ppmと幅が広い。
今回の大麦は0.5ppmなので、1kgあたりの基準値は0.5mg/kgとなる。
アゾキシストロビンは毒性は低く、
1日摂取許容量(ADI)は0.18㎎/㎏/日と設定、日本では一時的摂取に対する急性参照用量(ARfD)は設定されておらず『必要なし』の評価となっている。(アメリカはADIの設定は無く、ARfDが0.18㎎/㎏/日に設定)
農薬のADI 及びARfD 値 一覧表
アゾキシストロビンは発がん性、繁殖能に対する影響、催奇形性及び生体において問題となる遺伝毒性は認められず、影響は主に体重増加量、血液及び胆管に認められたとしている。
農薬評価書アゾキシストロビン
小学1年生男児の平均体重は21.3kgとされている。
アゾキシストロビンのADIは0.18㎎/㎏/日なので平均的な小学1年生では
0.18mg/kg/day X 21.3=3.83mg
2 0年以上身体が成長していない江戸川コナン君が、毎日この大麦を約1.5kg食べ続けたら、ひょっとして何らかの健康上のリスクがあるかもしれないというレベルである。
今回、回収となったヨーグルトやシリアルを食べたところで健康上問題になることはない。
それにもかかわらず回収となったのは、食品衛生法第11条第3項の規定による。
略~ 人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める量を超えて残留する食品は、これを販売の用に供するために製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、保存し、又は販売してはならない。|~略
食べても実害はないけれど、法律違反だから駄目と言うことである。
実にもったいない事ではあるが、これを認めれば際限が無くなるのは間違いなく、やむを得ない。
テレビ、新聞では基準をオーバーをしたため回収になったが、食べても健康に影響はないというだけで、その理由を述べていたのは見ていない。
その辺りをきちんと報道すべきと思うが・・・・・
アゾキシストロビンは食品添加物として防カビ剤として、ミカンを除く柑橘類に0.010g/kg=10mg/kg(最大残存量)の使用が認められている。
マンダリンオレンジは1個の重さが200~250g程度なので、最大残存量10mg/kgの小振りのオレンジを、江戸川コナン君が洗いもせず皮ごと、毎日2個食べ続ければひょっとして何らかの健康上のリスクがあるかもしれないということになる。
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