「爽健美茶」で流産ですか???
ハフィントンポストの記事に、日本コカ・コーラの「爽健美茶」で流産という記事が載っている。
爽健美茶で流産? 根も葉もない噂、コカ・コーラ社が否定「妊婦が飲んでも問題ない」
妊婦が「爽健美茶」を飲んでいるところに出くわし、飲むのを止めたという内容である。
あるTwitterユーザーは、マタニティマークを付けた人が「爽健美茶」を飲んでいるところに出くわし、飲むのをやめるよう「必死で止めた」とツイート。
その理由を、爽健美茶はカフェインが入っていないものの、「ハトムギ」の成分が含まれており、流産の危険があるというのだ。投稿したユーザーは、そのなかで「ハトムギは赤ちゃんをイボと同じ異物と判断して身体から排出」すると言及。
拡散希望のハッシュタグをつけたためか、投稿から5日間で約4000件リツイートされた。
ハフィントンポストが日本コカ・コーラに問い合わせたとろ、妊婦が飲んでも問題ないという回答とのことであった。
ハト麦が妊婦に良くないとするウェブサイトはかなりある。
例えば「はじめてママ」というサイトに「妊婦はハト麦茶を飲んじゃダメ?妊娠中のはと麦茶の効果と影響、5つの注意点」といのがある。
このサイトによると、ハト麦に含まれるヨクイニンという物質が、解毒作用や利尿作用を強く持ち、妊婦がハト麦を大量に摂取すると、子宮の収縮を引き起こす可能性があるとしている。
確かにヨクイニンを使った医薬品は、一般薬や処方薬にもある。
処方薬のヨクイニンエキス錠「コタロー」の添付文書によると、効能・効果は「青年性扁平疣贅、尋常性疣贅」となっている。
ヨクイニンエキス錠「コタロー」
この「疣贅(ゆうぜい)」というイボはヒトパピローマウイルス(HPV)によるイボのことである。
HPVは判っているだけでも100種以上あり、一部のHPVは子宮頸がんに関与していることが分かっている。
ヨクイニンエキスが保険診療で使えるのは「疣贅」だけである。
ヨクイニンが利尿作用や子宮の収縮を起こすとの資料は探した範囲内では見つからなかった。
但し、ハト麦が妊婦には禁忌とする資料は存在するが、その根拠は書いていない。
漢方薬は2000年に及ぶ臨床で選択され,多くの薬剤が妊婦,胎児に対して比較的安全と考えられる。
動物実験でも明らかな催奇形性のある生薬の報告はない。
そのため妊婦,授乳婦が抵抗なく服用できるといった利点がある。
しかし古典にも妊婦に禁忌,あるいは慎重投与とされる生薬を含むものがある。
すなわち附子(トリカブト),桃核,芒硝,牛膝,蘆薈(アロエ),苡仁(ハトムギ),麝香,斑猫,水蛭などである.このような生薬の入った方剤を使用することは稀であるが,市販のお茶や食品でアロエ,ハトムギなどを含むものがあるので注意が必要である。
日産婦誌53巻9号 2001年9月
麦で流産という事であれば、麦自体より麦に寄生する麦角菌による可能性がある。
麦角菌は稲科植物に寄生するカビの仲間で、麦などの穂に発生し、麦角菌の寄生した穂は黒く変色し、この部分が麦角と呼ばれる。
麦角菌は複数のアルカロイドを作りだし、これらは循環器系や神経系に対して様々な毒性を示し、精神異常、けいれん、意識不明、さらに死に至ることもある。
子宮収縮による流産なども起こし、昔の欧州では堕胎に使われた事もあるという。
その生理作用を利用した医薬品もある。
エルゴタミン
エルゴメトリン
麦角アルカロイド
麦角菌は稲科植物に寄生するが、稲には寄生しないため日本での麦角中毒は少ない。
昭和18年の岩手県で起きた、稲科植物の笹の実による妊婦の流産騒動が日本の麦角中毒であろうとされる。
ササの実パン事件
麦角と子宮収縮剤
麦角は、現在は加工前に除去することが出来るため、日本では麦角による中毒は皆無と言って良いが、発展途上国や、麦角菌で汚染された飼料による家畜の中毒は有るとの事である。
黒毛和種繁殖牛にみられた輸入ストローによる フェスクフット症例
いずれにしろ、妊婦が爽健美茶を飲むと危険というのはデマであり、妊婦が爽健美茶を飲んでも問題ないことは間違いなかろう。
もっとも、私は爽健美茶の味が苦手なため飲みませんが。
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