科学ジャーナリストの渡辺雄二センセの煽り記事「タール色素」
自称科学ジャーナリストの渡辺雄二センセがビジネスジャーナルに『スーパーの色鮮やかな駄菓子、石油製品などから合成のタール色素使用…発がん性の懸念も』って記事を書いている。
タール色素は石炭を乾留してコークスを作るときの副生物であった。
コールタールを分別蒸留して分離した沸点の低い炭化水素が、各種化学製品の原料となっていて、その製品として色素があり、コールタールを原料としていたことからタール色素と呼ばれていた。
その後、コールタールに発がん性のあることが判明しました。そのため、それに代わって石油製品などから合成されるようになったタール色素ですが、発がん性の疑いは今も晴れていないのです。
コールタールは複数の物質を含んでいて、その中に発がん性のある物質が複数有り、コールタールの発がん性が認められていて、IARC発がん性リストのグループ1(発癌性あり)に分類されている。
ただし、コールタールの発がん性で石油製品のナフサに移行した訳では無く、コールタール由来の炭化水素よりナフサの方が調達しやすくなったため。
現在日本では、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、青色1号、青色2号、緑色3号の12品目のタール色素が食品添加物として認可(指定)されています。
しかし、いずれも「アゾ結合」や「キサンチン結合」などの独特の化学構造をしており、これらの化学合成物質は、一般的に発がん性や催奇形性(胎児に障害をもたらす毒性)を示すものが多いのです。
化学構造は似ていても、僅かな違いで性質は大きく異なってくるわけで、現在使用されている色素は安全性の評価はされている。
食品添加物から削除された色素は次の通り、
食品添加物として不適当、安全性を確認するデータが不足とされた物
・食用赤色1号
・食用赤色4号
・食用赤色5号
・食用赤色101号
・食用赤色103号
・食用だいだい色1号 、
・食用だいだい色2号
・食用黄色1号
・食用黄色2号
・食用黄色3号
・食用緑色1号及びアルミニウムレーキ
現在使用されておらず、また将来も使用される可能性の少ないもの
・食用青色101号
・食用緑色2号及びアルミニウムレーキ
・食用紫色第1号及びアルミニウムレーキ
いずれも昭和47年までに食品添加物から削除されている。
削除理由のうち、食品添加物として不適当とされているのは内外の新しい安全性確認試験の結果により判断されたもので、食品添加物の安全性に対する見方が時代と共に厳しくなってきたことを示すものである。
多数のタール色素が食品添加物の指定から外されたことで、タール色素への不安感が増えたことは間違いない。、
とくに赤色2号については、アメリカでのラットを使った実験で「発がん性の疑いが強い」ことがわかり、同国では使用が禁止されました。ところが、日本では今も使用が認められているのです。
赤色2号の化学構造は、赤色102号、黄色5号、赤色40号と似ています。したがって、これらも発がん性の可能性が高いといえます。その他のタール色素についても、動物実験などで発がん性が疑われているものがほとんどです。
渡辺センセは著書の『体を壊す10大食品添加物 (幻冬舎新書)』で次の様なことを書いている。
発がん性については、アメリカのFDAが赤色2号を0.003~3%含むエサをラットに131週間投与したところ、高濃度投与群で、44匹中14匹にがんの発生が認められ、FDAは「安全性を確認できない」として、赤色2号を使用禁止にした。
ところが日本の厚生省は、評し得る実験ではないと判断し、この実験データを受け入れませんでした。
このアメリカのラットを使っての実験の手順がデタラメであることが判り、安全性の再評価を行って安全性に問題の無いことが判り、アメリカなど一部の国を除き、日本・カナダ・EUなどで使用が認められているのが実態。
現在米国など一部の国を除き、日本・カナダ・EUなどで使用が認められている
「食の安全ダイヤル」に寄せられた質問等
アメリカで使用禁止されているのは安全性の問題ではなく、使用が禁止されている間に他の色素に需要が移り、食品添加物として再申請者がなかったため、結果として食品添加物に指定されていないため。
ちなみにアメリカで認可されている合成着色料は
・食用青色1号
・食用青色2号
・食用緑色3号
・オレンジB
・シトラスレッドNo2
・食用赤色3号
・食用赤色40号
・食用黄色4号
・食用黄色5号
の計9種であり、オレンジBとシトラスレッドは日本では使えない。
2019年度米国の食品安全・輸入関連制度の解説
シトラスレッドNo2はオレンジの皮の着色のみに使われ、国際がん研究機関によるIARC発がん性リスク一覧で、「ヒトに対する発がん性が疑われる」グループ2Bに分類されている。
日本で食品添加物に指定されている合成着色料は12種だが、オーストラリア17種、ニュージーランド15種、イギリス18種、ドイツ11種など、日本だけが多いという訳では無い。
さらにタール色素は、アレルギーの一種の蕁麻疹を起こすことが知られています。赤色102号、黄色4号、黄色5号は多くの食品に使われているため、それだけ消費者が摂取する機会も多く、皮膚科医の間では、「蕁麻疹を起こす添加物」として警戒されています。子どもは蕁麻疹を起こしやすいので、とくに注意が必要です。
南山堂から出版されている総合アレルギー学に、「食物アレルギーに関連する物質」の表があり、この中に確かに「着色料:黄色4号,黄色5号,赤色2号,赤色102号」が載っている。
皮膚科医の間では、「蕁麻疹を起こす添加物」として警戒されていると渡辺センセは書いているが、知り合いの皮膚科医に聞いたところ、頻度は低いが可能性があるという理由で載っていると思うとの事で有った。
食品添加物としてのタール色素によるアレルギーは診たことがないし、むしろ化粧品などで光接触皮膚炎,薬剤性光線過敏症などの方が問題になっているとのことであった。
スーパーの駄菓子コーナーで売られている、色鮮やかなガムやラムネに使われているタール色素は、主に赤色102号(赤102)、赤106号(赤106)、赤色3号(赤3)、黄色4号(黄4)、黄色5号(黄5)、青色1号(青1)などです。これらが原材料名に表示されている製品は避けたほうがよいでしょう。
渡辺センセが騒ぎ立てるタール色素だが、実際にどの程度摂取していると言うことになるが、厚生労働省のマーケットバスケット調査がある。
平成30年度の調査で小児(平均体重16.5kg)の、着色料の一日当たりの摂取量調査をしている。
平成30年度マーケットバスケット方式による保存料等の摂取量調査の結果について
これによると
赤色2号、同40号、同104号、同105号、緑色3号は各食品群中の含有量が測定できないほど微量であり、限りなくゼロに近い状態であった。
他の色素も0.0004mg~0.025mgで、一日許容摂取量に対する割合は、0.00%~0.02%であり、食品添加物としての使用量は少なく健康被害のリスクは極めて低いと思われる。
ちなみにどれだけ食用タール色素が生産されているかというと、食用タール色素は検査を受ける必要があり、結果が厚生労働省のサイトに載っている。
平成30年度タール色素の検査結果について
それによると食用タール色素12種類全体で約80トン生産されていることになる。
食品添加物としてほとんど使用実績のない赤色2号、同40号、同104号、同105号、緑色3号もそれぞれ、1,299kg、3,849kg、200kg、145kg生産されている。
これらの食用タール色素の行方はどこかというと化粧品類である。
化粧品に食用タール色素を使う事は認められていて、食用と名乗っているが食用に使用されるのは僅かである。
ちと古い資料だが、月間フードケミカル2013年7月号の記事「着色料の新展開」によると、2011年度の食用タール色素の検定数は約100トン、天然系着色料の生産量は22,300トン、食用色素としては天然系が主流となっている。
とは言え、天然系が安全性の評価が合成着色料の様な指定添加物と比較して甘く、天然系だから大丈夫という保証もない。
実際にアカネ色素の様に発がん性が疑われて、食品添加物の指定を外れた物もある。
いずれにしろ、渡辺センセが騒ぎ立てているが、健康へのリスクは低いと考えられる。
この記事へのコメントはこちら