ココナッツオイル狂想曲

 

 牛乳ネタには少々飽きたので今回はココナッツオイルを・・・

 昨今のトランス脂肪酸騒動でマーガリンの代用として、ココナッツオイルの売り上げが急増しているらしい。
 一時リノール酸等の不飽和脂肪酸が健康に良いと言うことで、バター等の飽和脂肪酸が嫌われ、リノール酸たっぷりのソフトマーガリンがずいぶん流行ったものだ。
 それがリノール酸の過剰摂取が問題だとする説が広まっていたところに、トランス脂肪酸問題が大きくなり、誰が言い出したかココナッツオイルが急に話題となった。
 ココナッツオイルが体に良いと言われるのは、吸収や消化がされやすい中鎖脂肪酸を含んでいるからと言う。
 中鎖脂肪酸というのは脂肪酸の分子中の炭素数で決まるみたいだが、その炭素数はかなりばらばらな説がある。
 薬学まとめましたというサイトでは、中鎖脂肪酸の葉陰萎は狭く
 炭素数が6以下の脂肪酸を短鎖脂肪酸 
 炭素数が8~10の脂肪酸を中鎖脂肪酸 
 炭素数が12以上の脂肪酸を長鎖脂肪酸 
 としている。
 公益社団法人日本栄養士会のサイトでも
 中鎖脂肪酸は、炭素数が8個のカプリル酸と10個のカプリン酸とされています。
 そしてヤシ油、パーム核油で7~14%含むとしている。
 栄養医学研究所のサイトや、一般社団法人日本水産油脂協会も炭素数8~10を中鎖脂肪酸としている。

 一方でわかさ生活の様に
 「炭素数が8~12程度の脂肪酸で、ラウリン酸やカプリル酸、カプリン酸に代表されます」としていると、炭素数が12になっている。
 ダイエットなら美wise!と言うサイトでは
 短鎖脂肪酸:炭素数が4以下
 中鎖脂肪酸:炭素数が12以下
 となっている。
 Wikipediaでも同じページ内に「5-12個のものを中鎖脂肪酸」という記述と、「8から10のものを中鎖脂肪酸(MCFA、Medium-chain fatty acid)」という記述があり、実際のところ厳密な定義は無いようだ。
 となると、ココナッツオイルに含まれる炭素数が12のラウリン酸が微妙な立場となる。

 文部科学省の食品成分データベースによるとココナッツオイル中の炭素数8のカプリル酸、10のカプリン酸、12のラウリン酸の量は100g中
 カプリル酸(オクタン酸)7600mg
 カプリン酸(デカン酸) 5600mg
 ラウリン酸       43000mg
 となっている。
 つまり、ラウリン酸の扱いでココナッツオイルの中鎖脂肪酸の量が14%になるのか、60%になるのか大きく違ってくる。
 愛知県の食品工業技術センターの文書や、食品安全委員会の「リセッタ 健康ソフト」の評価書https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc_novelfood160226-betten.pdfでも、中鎖脂肪酸の定義は炭素数10以下としているので、ラウリン酸は中鎖脂肪酸から外した方が良いかと思われ、ココナッツオイルの中鎖脂肪酸が60%というのは誇大広告では無いかと思われる。

 さてココナッツオイルの効果だが・・・・
 痩せましょう’と言うサイトでは
 >ココナッツオイルの成分の半分は「ラウリン酸」でできていて、母乳の主成分。
 母乳の主成分ではないですね。
 人間の母乳の脂肪分は代表値で母乳100g中3.68gとされている。母乳中脂肪量/documents/factor/body/mothermilk_fat.pdf
 最近の日本人人乳組成に関する全国調査(第二報)によると、母乳中の脂肪酸で多いほうから
 オレイン酸 C18:1(ω9) 
 パルチミン酸 C16:0
 リノール酸 C18:2(ω6)
 などで中鎖脂肪酸といわれる
 カプリル酸 C8:0
 カプリン酸 C10:0
 は少なくラウリン酸C12:0も多くなく、母乳と主成分とは到底いえない。

 >ココナッツオイルの脂肪酸は吸収や分解が非常に早く、体内に蓄積しにくいので肥満や動脈硬化を心配する必要は無い。
 普通の脂肪と比べれば消化吸収しやすいのは違いないが、ココナッツオイル自体100gあたり921kcalの高カロリー食品で、オリーブ油やラードなど他の油脂とほぼ同じであり食べ過ぎりゃ同じ事。

 こちらではケトン体ダイエットにココナッツオイルが効果的と書いてある。
 先に書いた食品安全委員会の「リセッタ 健康ソフト」の評価書に次の様な記述がある。

 常成人男女 29 人に、中鎖脂肪酸 4.6gを含むファットスプレッドをパンと一緒に 24 週間摂取させたところ、血中総ケトン体値は正常範囲内で推移し、この他の血清脂質、肝機能、腎機能等、生化学的に影響は認められなかった。
 また、本試験中に実施されたアンケート調査の結果、一過性の下痢等の症状が報告されていたが、いずれも継続摂取中に頻発することはなく、問題はないとされた。
 また、幾つかのヒト試験から、血清総コレステロール高値の者、肥満の者及び血糖値高値の者を抜粋して安全性について調べたところ、12 週間の試験期間中においては、肝機能、ケトン体値、血清脂質等の血液生化学検査は正常値内を推移し、問題がないことが確認された。

 普通に食べる量であればケトン体は大きく増えることはないと言う事になりそう。

 中鎖脂肪酸は吸収や分会が早いため医療分野において、中鎖脂肪酸は、静脈栄養剤や医薬品として用いられているのには間違いない。
 だが、ココナッツオイルに関しては国立健康栄養研究所のサイトのココナッツオイルの項目を見ると・・・・
 >俗に、「ダイエットによい」「便秘によい」「美容によい」などと言われているが、ヒトでの有効性については調べた文献中に信頼できる十分な情報が見当たらない。
 また有効性のヒトでの評価ではすべての項目で『調べた文献の中に見当たらない。』となっていて、科学的に有効性を立証できるマトモな論文等がないと居ることになる。

 ネット上にはステマと思われるサイトが多数有り、ココナッツオイル人気は有効性の有無では無く、マーケッティングの成果と言って良いだろう。

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