優れ物?それとも食わせ物?「ミルクde水素」
ちと話題が古くなったが、3月3日のひな祭りの日に、消費者庁が水素水製品に対して景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして3業者に処置命令を出した。
消費者庁 News Release
対象となった業者と商品は、マルロの”ビガーブライトEX”、千代田薬品工業の”ナチュラル水素”、メロディアンハーモニーファインの飲料水”水素たっぷりのおいしい水”の3業者とその3製品。
製品を販売するwebサイト上で「水素水でダイエット効果もある!?」「水素が脂質代謝を促進!血糖値の急上昇も抑制」「炎症性ホルモンの分泌を抑制し過度な炎症をストップさせる効果が期待できます」等の表示をしていた。
水素水に関して景品表示法違反による行政処分をするのは今回が初めて。
消費者庁は3者に対して合理的根拠を示す資料の提出を求め、提出された資料の評価は、あらかじめ組織した専門家集団に意見を求めるセカンドオピニオン事業で行ったとされ、これを利用しての処分は初めて。
提出された資料はいずれも、動物や細胞、病気の患者の試験データで、表示根拠とならないとされた。
水素水に関しては昨年、国民生活センターが水素水と水素水生成装置に関して試験結果を発表している。
国民生活センター 報道発表資料
これは飲料水10品目と生成器9品目を国民生活センターで試験した結果である。
これに対し、メーカー各社は反発している。
JCASTニュース
公表されたメーカーからの意見書の中で目立ったのは、
(1)なぜ19社だけが調査対象となったのか、
(2)水素ガス濃度の測定方法に関する不満――
という2点だ。例えば、水素水生成器を製造・販売する富士計器は、「19社商品以外の水素水商品はどうするのか!今回選定されず商品テストも受けていない水素水商品(商材)に対しては、今後どのような指導をされるのでしょうか」
水素水生成器を扱う日省エンジニアリングは、国民生活センターの検査について「正しい測定方法なのでしょうか」と指摘。
同社では外部の測定機関で再検査を実施する予定だとして、
「その結果が(センターの)公表結果と大きく異なり消費者に誤解を与えた場合、その責任をどのようにお取りになられるか」
「大打撃ですよ。商品の取り扱いを止める販売店も出ているとも聞いていますし、正直困っているというのが本音です。調査結果の公表をきっかけに、水素水事業から撤退した企業もあるようです」
また、管理医療機器の認定を受けている整水器を製造販売している日本トリムも大きな影響を受けているとのこと。
弾けた「水素水バブル」、日本トリムの言い分
ただし、日本トリムの整水器は電解水生成器は電解水生成器としての認証であり、電解水素水生成器ではない。
損害賠償訴訟をすると息巻いているメーカーもあるとの事だが、まぁどうなる事か。
水素が健康に良いかどうかだが、「日本老年医学会雑誌」Vol.49(2012)に掲載された、「水素分子の生理作用と水素水による疾患防御」という論文がある。
この論文の3図によると糖尿病の改善、酸化ストレス抑制、抗疲労効果、放射線治療副作用抑制などは臨床研究で確認できたとされるが、多くは動物実験段階と言う事になる。
現状では実際に、ヒトの健康にどの程度効果があるかは現時点では不明といったところであろう。
実際に水素水がヒトに対して、どの様に作用するか判らない状態で、商売に差し支えるといわれても消費者サイドからすれば、逆恨みしているとしか思えないが・・・。
この論文の序文に次の様な記述がある。
H2及び水素水の作用機序については未だ不明な点が多く,効果の検証についても臨床レベルの大規模な研究が必要である
実際のところ、この記述が現時点での水素水の実態を表しているといったところか・・。
水素分子の生理作用と水素水による疾患防御」
ところで、水素水を飲むと水素が血液中に取り込まれ、肺から呼気として排出される。
飲んだ直後に呼気中の水素濃度がピークとなり、30分程度で元に戻る。
ところが牛乳を飲むと、腸内細菌により発生した水素のため、10時間以上にわたって体内の水素濃度が高まるという研究がある。
Breath Hydrogen Produced by Ingestion of Commercial Hydrogen Water and Milk
最近協同乳業が「ミルクde水素」という商品の販売を開始した。
「ミルクde水素」
これガラクトオリゴ糖、マルチトール、グルコマンナンを添加したミルク(乳製品)で、特許申請中との事で、常温保存で賞味期限90日となっていて、ロングライフミルクと言われる種類である。
これを飲むと体内の水素濃度が牛乳よりも高い値を維持するとしている
ガラクトオリゴ糖、マルチトール、グルコマンナンはいずれも難消化性の多糖類で、マルチトール以外はヒトは消化吸収できないが、これらを代謝できる腸内細菌群により水素が生成される事は判っている。
これにより、10時間以上通常の牛乳よりも高いレベルの水素を維持できるとしている。
水素水では体内の水素量が精々30分程度しかもたないのに、こちらは12時間以上高濃度が維持できる。
難消化性の糖類が腸内細菌の代謝により水素が発生するという研究は結構ある。
ヒトにおける呼気水素ガス試験による発酵分解評価の有効性とそれに基づく各種食物繊維素材のエネルギー評価の試み
水素が健康に良いかどうかは現時点では不明な点が多いが、まぁ牛乳プラスαと思えば良いかと。
水素が健康に良いと仮定すれば、30分程度しか水素濃度が維持できない水素水よりは、こちらの方が優れている事になるが・・・。
水素水と殆ど価格は違わず、水素が健康に直接関与していなくても、水素水がタダの水ならこちらはミルク、水素水よりはマシといったところか。
ちなみにお味の方は、牛乳と比べて少々甘みが濃く結構美味いが、オリゴ糖やマルチトールなど難消化性の糖類を含むため、飲み過ぎると下痢などの原因になる。
まぁ、「ミルクde水素」による下痢は危険な下痢では無いけど、飲み過ぎにはご注意。
ちなみに、摂取量は1日に1パック(200ml)と記載されている。
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