馬科学ジャーナリストの渡辺雄二センセの、馬科学的記事
馬科学ジャーナリストの渡辺雄二センセが、相変わらず馬科学的記事を書いている。
『一部のエナジードリンク、食品衛生法違反ではないか?未知の要素含む化学物質使用』
若者を中心に人気が高まっているエナジードリンク。最近では、各メーカーからさまざまな種類が売り出されていますが、実はそのひとつに、食品衛生法に違反する疑いのある原材料が使われているのです。
その原材料とは、「L-カルニチンL-酒石酸塩」です。
これは、L-カルニチンという物質と、指定添加物のひとつであるL-酒石酸を化学的に合成したものです。
L-カルニチンL酒石酸塩は、エンジドードリンクのほかにサプリメントの原材料としても使われています。
カルニチンはアミノ酸の1種で、Lカルチニンと異性体のDカルニチン、DカルニチンのLカルニチンの混交物のDLカルニチンがあり、食品として使われるのはLカルニチンである。
カルニチンは潮解性があり溶解性が高く、用途としては飲料水、ゼリーなどに使用される。
サプリメントの様に錠剤や粉末の場合には不都合なため、有機酸と結合させたカルニチン有機酸塩として使用される。
日本ではLカルニチン酒石酸塩とLカルニチンフマル酸塩が使用される。
ILS(株)のLカルニチン
これらは用途別に使い分けられている訳で、渡辺センセはエナジードリンクにL-カルニチン酒石酸塩と言っているが、飲料水のためLカルニチンを使っている可能性が高いと思われる。
しかし、L-カルニチンL-酒石酸塩は、新たにつくり出された化学合成物質であり、それだけ未知の要素を含んでいます。
そのため、添加物であるL-酒石酸よりも危険性は当然ながら高いことになります。
したがって、L-カルニチンL-酒石酸塩については、少なくともL-酒石酸と同様に添加物として扱うべきです。
L-カルニチンL-酒石酸塩は新たに作り出されたわけではなく、欧米では1980年代からサプリメントなどに使用されていた。
>添加物であるL-酒石酸よりも危険性は当然ながら高いことになります。
これは馬化学としか言い様がない。
たとえば塩酸と水酸化ナトリウムは毒物劇物取締法で劇物扱いとなっている。
塩酸と水酸化ナトリウムが反応して出来るのが塩化ナトリウム、早い話が食塩で、劇物の塩酸と水酸化ナトリウムが反応すた結果として危険性が下がった訳である。
酒石酸に強い毒性はないが、酸性の物質であり眼などに刺激を与えるのは、食酢などと同じことであり、食品として使われる量であれば健康被害はきわめて低い。
皮膚腐食性・刺激性
: 強酸性(pH1.6)で腐食性が強いので、区分1Aとした。
重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷(区分1A)
眼に対する重篤な損傷・眼刺激性
:強酸性(pH1.6)で腐食性が強いので、区分1とした。
重篤な眼の損傷(区分1)
昭和化学、L-酒石酸SDS
一方、L-カルニチンL酒石酸塩の方はどうかというと・・・
L-カルニチン及びL-カルニチンL-酒石酸塩は皮膚や目に刺激を与えず、皮膚への感作もない。
食品安全委員会、食品安全総合情報システム
酒石酸はカルニチンと結合することにより、眼や皮膚への刺激性がなくなった訳で、危険性が下がったことになる。
L-カルニチンL-酒石酸塩、Lカルニチンフマル酸塩の体内動態は判っていて、消化管内でLカルニチンと酒石酸、フマル酸に遊離する。
L酒石酸が指定添加物の為に危険というロジックだろうが、酒石酸には毒性は低く生体内では不活性で、ヒトの場合摂取量の20%が尿中に、残りは腸内細菌により代謝されるとされている。
医薬品情報21
またフマル酸も毒性はなく、生体内に存在する有機酸であり、主にクエン酸回路において、コハク酸の酸化により生成し、リンゴ酸に変換されてエネルギー産生に関与する。
ところが、L-カルニチンL-酒石酸塩は、指定添加物として認可されていません。認可されていないものを添加物として使用していた場合、食品衛生法違反となります。
ですから、L-カルニチンL-酒石酸塩を食品に使うことは、同法に違反していると考えられるのです。
Lカルニチンは食品扱いであり、Lカルニチンの化合物のL-カルニチンL-酒石酸塩も食品扱いであり、食品衛生法違反にはならない。
これは、欧米では長年L-カルニチン酒石酸が]食品扱いにされていて、欧米の規制と整合性をとったと思われる。
逆のパターンで、長年食品扱いされていた加工デンプンを欧米の規制に合わせて食品添加物と変更した例がある。
L-カルニチンL-酒石酸塩も、L-酒石酸に類似した物質です。
そして、L-酒石酸カリウムやL-酒石酸カルシウムと同様に指定添加物として認可されていません。
この点からも、L-カルニチンL-酒石酸塩を食品に使うことは、食品衛生法に違反すると考えられるのです。
L-カルニチンL-酒石酸塩とL-酒石酸は類似した物質ではない。
たとえばL-酒石酸のpHは1.6(10%水溶液)で強酸性で刺激性が強いが、L-カルニチンL-酒石酸塩のpHは3.0~4.5で弱酸性で眼などへの刺激性はない。
物質名に酒石酸が入っているだけで類似した物質と言うのは正に馬化学である。
昭和化学、L-酒石酸SDS
AS Material L-カルニチン酒石酸塩
少なくともL-カルチンL-酒石酸塩についてすぐに安全性を検討し、安全性が高いということであれば指定添加物として使用を認可し、安全性が保証されない場合は使用を禁止すべきです。
L-カルチンL-酒石酸塩の安全性評価は終わっている。
欧米では1980年代からサプリメントなどに使用されていたため安全性の評価がなされていた。
安全性に関する評価の概要
L-カルニチンのDRI 又はRDA は未だ設定されていない。
これは、そのような値がビタミンやミネラル、その他の必須栄養素にのみ設定されているためである。
L-カルニチンは、必要量が体内合成能力を越える状況下での条件付き必須栄養素とみなされている。
L-カルニチンは、承認された医薬品適応症や栄養の補足から動物飼料に至るまで幅広く適用されている。
EFSA は広範な安全性評価を行い、2g までのL-カルニチン又は3g のL-カルニチンL-酒石酸塩は毎日摂取しても安全であるとみなしている。
食品安全委員会事務局 健康食品等の安全性情報に関する調査報告書
欧州食品安全機関(EFSA)の安全性評価の結果では、2gのL-カルニチン又は3g のL-カルニチンL-酒石酸塩(L-カルニチン2g相当)を毎日接種しても安全であるとしているとしている。
L-カルニチンL-酒石酸塩の安全性に関して色々資料を調べてみたが、まともな資料で安全性に問題があるという資料は見つからなかった。
具体的な根拠もなくL-カルニチン酒石酸塩の安全性を煽る、馬科学ジャーナリストの渡辺雄二センセの馬科学記事でした。
ちなみにL-カルニチン酒石酸塩はサプリメントにも使われていて、どの程度のカルニチンが含まれているかだが、大塚製薬のNature Madeカルニチンは、1日に接種するLカルニチンとして510mg含まれている。
L-カルニチンL-酒石酸塩だと約760mg程度になり、EFSAの安全性評価の結果の、「2gのL-カルニチン又は3g のL-カルニチンL-酒石酸塩」を大幅に下回っている。
Nature Made L-カルニチン
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