科学ジャーナリスの渡辺雄二センセの非科学的記事、加工肉。
科学ジャーナリスの渡辺雄二センセの非科学的記事。
『大腸がんを患う日本人急増の理由…WHO、ハムやソーセージの発がん性に警鐘』
今や日本人の2人に1人ががんを発病しているといわれていますが、がんのなかでももっとも罹患者が多いのは大腸がんです。国立がんセンターが発表した「2017年のがん統計予測」によると、同年のがん罹患者数は101万4000人で、そのうち最多は大腸がんで14万9500人でした。
次いで胃がんの13万2800人、肺がんの12万8700人となっています。
日本で大腸がんが増えた最大の理由は、食生活の欧米化と考えられます。
日本人のがん罹患率が上がっているのは事実である。
がん罹患率の増加の主な原因は高齢化で、高齢者の比率が上がれば罹患率が増えるのは当然のこと。
確かに大腸がんの罹患数は増えている。
がんの統計’17 部位別がん罹患数推移(47ページ)
これをみると大腸がん(結腸がん+直腸がん)の罹患数が増えているのは間違いない。
大腸がんの年齢階級別がん罹患率をみるとやはり高齢者の罹患が高く、1980年に比べ高齢者の増えた2013年の罹患数が増えている。
がんの統計’17 年齢階級別がん罹患率推移(51ページ)
高齢化の影響を排除した年齢調整罹患率を見てみると大腸がんは男女共、1990年代の半ばからほぼ横ばいとなっている。
がんの統計’17 がん年齢調整罹患率年次推移(49ページ)
年齢調整罹患率からすると大腸がんの増加は加齢が一番の原因で、加齢を排除すれば急増というわけではない。
渡辺センセは市販のハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉の摂取をしないのが第一の予防としてる。
第一に挙げられるのが、市販のハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉をできるだけ食べないようにすることです。
2015年10月、世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)は、「ハムやベーコン、ソーセージなどの加工肉を食べると、大腸がんになりやすくなる」というショッキングな発表を行いました。
これらの加工肉を1日50グラム食べると、結腸がんや直腸がんになるリスクが18%高まるとのことです。これは、世界の研究論文約800本を分析して得られた結論だといいます。
赤身肉や加工肉の発がん性に関してはWHOは関連ありとしている。
2014年に開催された国際諮問委員会は、IARCモノグラフプログラムによる評価により赤身肉と加工肉を高い優先度として勧告した。
この勧告は、疫学的研究に基づいており、いくつかの癌のリスクのわずかな増加は、赤肉または加工肉の高消費に関連する可能性があることを示唆してる。
これらのリスクは小さいものの、公衆衛生上重要となる可能性がある。~~
~~独立した学術研究機関である世界疾病負担プロジェクト(World Burden of Disease Project)による最新の推定によると、世界中で年間約34,000の癌の死亡は、加工肉が多い食事に起因しているとしている。
赤身肉を摂取することは、がんの原因としてまだ確立されていないが、報告された関連性が証明されたならば、世界的な疾病負担プロジェクトは、赤身肉の摂取が世界中の50,000人の癌の死亡原因となると推定している。
Q&A on the carcinogenicity of the consumption of red meat and processed meat
このQ&Aによると、加工肉について10件の研究成果を評価し毎日50gの加工肉の摂取で大腸がんのリスクが18%、赤身肉の摂取100gごとに17%増加するとしている。
一方で年間の世界中のがんの死亡者数は、喫煙により100万人、飲酒により60万人、大気汚染により20万人としている。
赤身肉及び加工肉そ摂取によるリスク自体は低いが、公衆衛生上(大量摂取による)問題となる可能性ありとしている。
なお、この「赤身肉」とは、牛、豚、山羊、羊等の獣肉のことであり、鶏等の鳥類の肉は含まれない。
またこのQ&Aの中で、肉を食べる事による健康上の利点は知られている。
多くの国は、心臓病、糖尿病、および他の病気による死亡リスクの増加と関連している加工肉および赤身肉の摂取を制限するよう人々に勧告している、として食べるのを止める様には書いていない。
重要なのはIARC発がん性分類は、人に対する発がん性があるかどうかの「根拠の強さ」を示すものであり、物質の発がん性の強さや暴露量に基づくリスクの大きさを示すものではない。
これに関して、イギリスのウェブサイトがIARCの評価を次の様に例えている。
フィリップス教授が解説するように、IARCはリスク評価をしているわけではなく、ハザード識別をしている。
これはとても技術的に聞こえるが、IARCはある物質がどの程度の発がん性があるかどうかを示してるわけでは無く、発がん性の可能性の有無を示しているだけである。
バナナの皮を例にとると、バナナの皮は滑って転倒する事故の原因になるが、実際にはバナナ工場で勤務でもしない限り頻繁に起きるものでは無い。
そしてバナナの皮で転倒する事故は、一般的には自動車事故ほど深刻では無い。
しかし、IARCののハザード識別システムでは、どちらも事故の原因になることから、バナナの皮も自動車も同じカテゴリーに入ることになる。
CANCER RESEARCH UK/Processed meat and cancer ? what you need to know
ちなみにIARC発がん性分類では、加工肉を「グループ1」(人に対して発がん性がある)に、「赤身肉」を「グループ2A」(人に対しておそらく発がん性がある)に分類している。
たしかに国立がん研究センターのウェブサイトでも赤肉肉(牛、豚、羊など)や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)の摂取が原因の1つとしている。
国立がん研究センターがん情報サービス、大腸がん
また、国立がん研究センター予防研究グループの研究でも肉類の摂取は結腸がんのリスクをあげるとしている。
赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて
これによると、赤肉による大腸がんリスク上昇のメカニズムは、動物性脂肪の消化における二次胆汁酸、ヘム鉄による酸化作用、内因性ニトロソ化合物の腸内における生成、調理の過程で生成される焦げた部分に含まれるヘテロサイクリックアミン(発がん物質)等が関与している可能性が有るとしている。
一方で、加工肉の摂取は、現在の一般的な日本人の摂取量では大腸がんのリスクにはならないとしている。
赤肉・加工肉のがんリスクについて
2013年の国民健康・栄養調査によると日本人の赤身・加工肉の摂取量は一日あたり63グラム(うち、赤身肉50g、加工肉は13グラム)で、世界的に見て最も摂取量の低い国の一つであり、現在の消費量であればがんのリスクは低いとされる。
二次胆汁酸は、脂肪の消化のために分泌される胆汁に含まれる一次胆汁酸が、腸内細菌による代謝で二次胆汁酸に変化するが、これが大腸がんのリスクファクターの1つとされる。
大腸がんのリスクファクター
さらに二次胆汁酸は肝臓がんのリスクも高めるという研究もある。
肥満に伴う腸内細菌の変化が肝がんの発症を促進する
食肉に多く含まれる鉄が発がんのリスクを高めるという。
鉄代謝の臨床 鉄欠乏と鉄過剰:診断と治療の進歩
ヘテロサイクリックアミンはタンパク質やアミノ酸を多く含む食品(食肉類)を150℃以上の温度で調理した際に生成する物質で、発がん性があるとされる。
食品中でのヘテロサイクリックアミンの含有実態調査報告書
渡辺センセの言う加工肉の亜硝酸塩の摂取量だが、食品添加物として摂取する亜硝酸塩は全体としてはわずかで、食品に元々に含まれる硝酸塩由来の亜硝酸塩の方が多い。
河岸和宏センセの店員イジメ
大腸がんのリスクとして重要なのが糖尿病であるとの説もある。
糖尿病でない人との比較で、肝臓がんが1.97倍、膵臓がんが1.85倍、大腸がんが1.4倍リスクが上がるとされる。
日本癌学会 市民公開講座
加工肉のリスクよりこちらの方が余程重要である。
スコットランド、ダンディー大学の研究では、がんのリスク増加の原因は遺伝子変異ではなく免疫系の老化が原因の可能性を示唆している。
研究チームは、免疫系の加齢ががんの発生率を上昇させるという仮説に基づき、18~70歳の200万人について、がんのデータを調べ、免疫系の低下に関連してがんの発生率がどのように上昇するか予測するモデルを開発し、この予測を100種類のがんの年齢プロファイルと比較した。
このモデルは、複数の突然変異に基づく仮説に比べ、データの適合度が高く、免疫系は一般に男性よりも女性ではゆっくりと低下するため、がんの発生率の性差については、突然変異だけでは説明が難しいが、このモデルを用いると説明できるという。
胸腺でT細胞が産生され,T細胞は身体を循環して、機能不全の細胞または外来物質を死滅させるが、胸腺の萎縮は1歳前後から始まり、胸腺は16年で大きさが約半分になり、それに応じてT細胞の産生が低下する。
特定のがんの可能性が増加することと新たなT細胞の数が減少することには、非常に強い相関があることを乱したとしている。
Thymic involution and rising disease incidence with age
現状の日本人の標準的なな赤身肉、加工肉の摂取量では、他のガンのリスクと比較して大きくない。
加工肉はあくまでも数多くあるリスクの1つでしかなく、渡辺センセの主張する様に加工肉を喰わなければがんにならないのであれば、誰も苦労はしないわけである。
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