「すこやか酵母」に根拠なし、通販会社に措置命令

 

消費者庁は22日、サプリメントの「すこやか酵母」が広告で食事制限なしで痩せる効果をうたったのは根拠-がなく、景品表示法に違反するとして、(株)全日本通販に対して合理-的根拠なしに表示をしないよう命令した。
すこやか酵母
http://lp.dmjegao.com/camp/koubo_lp/afi/0233/003_y/
『ムリな食事制限なしで 12kg体重減!』、『私のダイエットはもうキツイ我慢なし』、『63.5kgが54kgに減った!』と記載 』、『食べてもOK!?そんな減量ケアあり?「炭水化物」対策で注目の酵母パワー』などと広告に記載、その根拠となる証拠の資料の提出を求められたが、提出された資料は広告の表示の合理的な根拠を示すと認められなかった。
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/150522premiums_2.pdf

最近ネット上で酵母ダイエットなるダイエットがやたら見受けられ、何社も酵母サプリメントを販売してる。
そのメカニズムとしては
 1)酵母の発酵作用で糖分を分解し吸収を妨げる。
 2)普段の食事では摂りにくいビタミン、ミネラル、アミノ酸等をバランス良く含む。
 3)共益リノール酸が燃焼運動によるダイエットをサポート。
 4)酵母の作り出す酵素の作用
などを訴えている。

1)の発酵による糖分の分解は2種類有る。
酵母は酸素の十分な環境では、糖分を二酸化炭素と水にまで分解してしてエネルギーを得ているが、酸素不足の環境だとアルコールと二酸化炭素に分解してエネルギーを得ている。
酒造りは酵母を酸素の少ない環境で働かせてアルコールを得ている。
酵母ダイエットの広告で砂糖水に酵母サプリメントを入れて、発酵が進む動画等を表示して糖分がサプリメントによって、分解していると見せかけていたりする。
これは子供だましの様な物で、パン作りの際のドライイーストの予備発酵と全く同じ事。
立つ動画の傍らに『体内の様子ではありません』などと表示されている。
いかにも酵母が糖分を分解している様に思わせているが、これが体内で起きればもう病気と言うことになる。
飲まないのに泥酔状態 胃の中でアルコール醸造
胃の中は胃酸のために強酸性となっていて、タンパク質の消化を助けているほかに、細菌などの微生物の増殖を抑えているが、何らかの原因で胃液のphが上がってしまうと殺菌作用が弱まり、微生物が増殖を始める事がある。
酵母は酸性に弱いので普通は胃で増殖することは出来ないが、胃酸が少なくなると普通は増殖出来ない酵母が胃の中で増殖するとCNNのニュースの様になる。
症例は少ないそうで、私の知り合いの内科医の話だと研修医時代の一人を含め二人ほど患者を診たことがあるとのこと。
人間の消化器の内部は酸素が少ない環境のため、もし酵母が繁殖すればアルコール発酵をするはずで、CNNニュースの様にデンプン質や糖分を摂取しただけでよっぱらいという事になる。
と言うことで酵母が糖分を分解しているとは思い難い。
サプリメント等を製造販売しているDHCのサイトでは『ビール酵母には、直接的なダイエット効果はない』と言い切っている。
http://www4.dhc.co.jp/supplejiten/html/60.html

2)のビタミン、ミネラル、アミノ酸等だが、すこやか酵母の広告によるとパン酵母には100gあたり50,040mg(50.04g)のアミノ酸を含んでいることになっている。
すこやか酵母は一粒580mgで一日二粒が目安と言うことなので、仮に580mg全部が酵母としても一日の摂取量は1.16gとなり、摂取できるアミノ酸は1.16g/100g*50.04g=0.58gにしかならない。
実際にはカプセルなどや添加物が有るからもっと少なくなるはず。
いかにも各種栄養が摂れる様に感じるが実際はそんなに多く摂れていない。

3)の共役リノール酸だが、すこやか酵母の広告では『酵母に加え、肉や乳製品に少量含まれる不飽和脂肪酸の一種「共役リノール酸」年齢体型や若々しさが気になる 中高年ダイエッターに話題の成分を配合』としている。
ウィキペディアでは共役リノール酸の事を

共役リノール酸は構造的にトランス型の二重結合を有するものも多く、天然に含まれるトランス脂肪酸であるが、体内で非共役トランス脂肪酸以外の脂肪酸と同様に振る舞うことから、アメリカ食品医薬品局ではトランス脂肪酸の規制から除外している。デンマークにおけるトランス脂肪酸の規制でも同様に規制対象外となっている。

要は天然型トランス脂肪酸と呼ばれている物質の事だが、天然型トランス脂肪酸も体に良くないという報告もある。
オランダのアムステルダム自由大学のIngeborg A. Brouwerが『トランス脂肪酸は人口のものでも天然のものでも同じような害を人体に与える』という研究結果を発表している。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2830458/
また食品安全委員会の食品安全関係情報詳細に、『フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)、共役リノール酸(CLA)を強化したオイルの使用にかかわる安全性の評価について意見書を提出』という記事があり、『新たなデータは、CLA(共役リノール酸)混合物が効果がないばかりか有害影響の懸念があることを示すものであった。 』としている。
食品安全委員会の食品安全関係情報詳細
国立健康栄養研究所の「健康食品の素材データベース」では、『体脂肪増加の抑制についての報告があるが、さらなる科学的根拠の蓄積が必要である』としている。
健康食品の素材データベース
共役リノール酸がダイエットに有効かどうかもよくわからないし、危険であるという研究もあり要注意といったところだろう。

4)の酵母の作り出す酵素の作用だが、ほとんどないのではないかと思われる。 酵素はタンパク質を基にして構成されている。
でんぷんの分解酵素のアミラーゼや、脂質のの分解酵素のリパーゼの様に経口の消化薬に使用される酵素もあるが、ほとんどの酵素は胃液に含まれる塩酸とタンパク質分解酵素のペプシンの作用で失活してしまう。
つまりサプリメントや食品に含まれる酵素のほとんどは普通のタンパク質同じて消化吸収されてしまう。
人間の必要な酵素は人間自身が作り出しているので、酵素を経口で摂取しても意味がないことになる。

これは個人の判断次第ということになるが、私は酵母ダイエットは非常に怪しいダイエットと思う。

なお「すこやか酵母」自体は安全性の問題をしてきするものではないとして販売は継続するようだ。

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