総菜のテイクアウト、デリバリーは法令違反????

 

 5月4日に行われた政府対策本部により、4月7日に発令されている「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」が5月31日まで延長された。
 地域により違うが、東京などは従来通りの対応となる。
 飲食店はいずれも、営業自粛の対応で苦労していて、飲み屋などもテイクアウトでなんとかしようとしている。
 その様な状況で次の様なオンラインニュースの現代ビジネスで次の様な記事を見かけた。
 実は法令違反だらけ…!飲食店「持ち帰り・デリバリー」のヤバい実態  
 この中で次の様な記述がある。

 飲食店がテイクアウト・デリバリーでできる定義は、「そのもので一食の体を成すこと」。もう少し説明すると、おかずがあり、ご飯があるお弁当状態のものを指す。
 つまり、「アラカルトのメニュー単品」のように、おかずだけを販売してしまうと、「惣菜製造業」という違う業種の申請・許可が必要になる。

 はぁ?おかずだけだとNG??
 この記事はフードビジネスコンサルタントの永田 雅乙氏が書いているが、以前は食品関係に係わっていただけに、おかずだけは駄目というのは疑問だったので調べてみた。

 東京都の場合だが、次は東京都渋谷区のウェブサイトである。
 【よくある質問】飲食店で持ち帰り(テイクアウト)・出前(デリバリー)を行うには

 Q1.飲食店で作ったそうざい、弁当を客に持ち帰りさせたい
 A1.直接摂食消費する(そのまま食べる)ことを前提として飲食店で作ったそうざい、弁当を客に持ち帰らせることは、飲食店営業の許可の範囲で行えます。別途保健所に届出等を行う必要はありません。食品表示法に基づく表示も必要ありません。

 Q4.飲食店の調理品を出前したい
 A4.需要者の求めに応じて食品を調理し、需要者のところに持ち込む行為は飲食店営業の許可の範囲で行えます。
 別途保健所に届出等を行う必要はありません。食品表示法に基づく表示も必要ありません。
 また、出前の受注方法は問いません。電話、ウェブサイト、ファクシミリ等いずれの受注方法も可能です。

 直接消費する事を前提に総菜、弁当を持ち帰らせる事や、出前は飲食店営業の許可の範囲内で可能としていて、総菜の持ち帰りに新たな届出は不要となっていて現代ビジネスの記述は誤っている訳で、フードビジネスコンサルタントが書いた記事としては非常にお粗末。

 食品衛生は法律による規制と条例による規制があり、地方により微妙に異なって居る。
 例として、広島県の場合で、こちらは東京都と微妙に異なっている。
 
 飲食店営業1類でできる行為
 ・弁当・総菜     →飲食店で提供している食事を客の注文を受けて調理し、客が持ち帰ること、調理後すぐに店側が配達すること
 ・総菜        →客の注文の有無に関わらず、あらかじめ調理した食品を店内で陳列販売する場合。 ただし、食品表示が必要

 飲食店営業3類でないとできない行為
 ・弁当・サンドイッチ →客の注文の有無に関わらず、あらかじめ調理した食品を店内で陳列販売すること

 1類と3類の違いは次の通り。
 ・飲食店営業1類:主に客席を設けて飲食の提供を行う営業
 ・飲食店営業3類:弁当類の陳列販売又は卸しを行う営業、仕出しを行う営業
 飲食店営業3類に変更すると施設内に客をいれる事ができない。
 飲食店でテイクアウト等を始める営業者の皆様へ 広島市

 いずれにしろ飲食店が作った弁当、総菜類のテイクアウト、デリバリーが、現代ビジネスの記述の様に違反と言うわけではない。

 ただし、販売する品物により飲食店営業許可で販売ができない品物もある。
 ・飲食店で作ったそうざい、食肉製品等を通信販売等で販売する場合。
  そうざい     →そうざい製造業、
  冷凍       →冷凍食品製造業
  真空パック    →そうざい製造業、

 ・他に飲食業営業許可で販売できない物として
  食肉製品     →食肉製品製造業
  牛乳、乳飲料等  →乳類販売業
  ケーキ類     →菓子製造業
  鮮魚介類、鯨肉等 →魚介類販売業
  酒類       →酒類小売業免許

 焼き肉屋が、飲食店営業のまま焼き肉セットとして生肉や、味付け肉を販売するのは違法となる。
 
 中には紛らわしいケースも有る。
 寿司屋が刺身盛り合わせのテイクアウトやデリバリーをすることは出来ないが、にぎり寿司や海鮮丼はOKである。
 刺身盛り合わせが駄目でにぎり寿司がOKな理由を地元の保健所に問い合わせてみたところ、現行の法規制が施行される前から、寿司の出前(デリバリー)やお土産(テイクアウト)が習慣として有ったためでは無かろうかとの回答であった。

 酒類も紙コップ等に入れての販売は問題無いが、瓶や缶のままの販売は違法となる。
 2020年4月9日、国税庁が、新型コロナウィルスの影響を受けている飲食店への救済措置として、期限付酒類小売業免許を付与すると発表した。
 この免許を取得すると、最大6ヶ月間、飲食店は在庫酒類のテイクアウト販売をすることが可能となる。
 期限付酒類小売業免許届出について 国税庁 

 いずれにしろ、食品のテイクアウトやデリバリーは都道府県により異なっている場合が多く、地元の保健所に確認することが重要。
 非常に気になるのが、食品の衛生に関する事で有る。
 作られた弁当や総菜を店の前に並べて売っている場面をしばしば見かける。

 弁当や総菜を容器にパッキングする際に、十分に冷却しないと蒸れて腐りやすいことが知られている。
 テイクアウトの場合は出来たてを詰める場合が多いが、すぐ食べてしまう場合は問題が少ないが、時間が経過して食べる場合は問題となる。
 テイクアウト、デリバリーの場合、通常の営業よりも衛生管理が必要となる。
 作り置きをしない、食べるまで時間のかかる場合冷蔵するように客に伝えるなどが重要であろう。
 これは法的規制以前の問題であり、テイクアウトなどで苦境をしのごうとしても、食中毒が発生すれば元も子もない事になってしまう。

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