1級フードアナリストってこのレベルなの???
デイリー新潮の2022年05月06日の記事に「フードアナリストが語る「私が絶対摂らない食品添加物」 9種類の実名は?」が載っている。
避けた方がいい9種類の食品添加物として次の9種類が名指しされている。
予防医学指導士・1級フードアナリストの若尾洋祐センセがコメントしているが、科学的根拠は皆無、感情論一杯の記事である。
1.タンパク質分解物
タンパク質をアミノ酸にまで分解した物で、アミノ酸液とも言い調味料として使用される。タンパク質に塩酸を加え高温でタンパク質を分解する加水分解法と、酵素で分解する方法があるが、コスト面で加水分解法が多い。
含まれるアミノ酸は材料のタンパク質により組成は違うが、多くのアミノ酸を含み旨味となる。
魚タンパク加水分解物の栄養価
九州などの甘みのある醤油造りには欠かせない材料となっている。
気になるのは、作られる過程で発がん性物質が発生する、という指摘が出ていること。
あとは単純に、豚の皮なのか骨なのか、何から抽出されたものなのかが分からないから「気持ち悪い」。これを避けるようにすると、ほとんどの加工食品が買えなくなります。
発がん性物質はクロロプロパノール類の事だが、工程の終わりに過剰なアルカリを加えてクロロプロパノール類を提言する技術が確立していて、コーデックス委員会でも認められている。
農林水産省による調査でも大幅に低減していると言う結果が出ている。
平成16~28年度(2004~2016)食品中の3-MCPD及び1,3-DCPの含有実態調査の結果について
>あとは単純に、豚の皮なのか骨なのか、何から抽出されたものなのかが分からないから「気持ち悪い」。
タンパク質なら何でも材料となるが、圧倒的に多いのは脱脂大豆や小麦グルテンを材料とした物。
精肉時に出た端材や、腱など堅い等で食用不適な部分も使われるが、これも食材である事は間違いなく、使えば資源、捨てれば廃棄物と言う事。
ちなみに皮や骨は製菓材料等に使われるゼラチンの材料で、ゼラチンメーカーも皮や骨を材料にしていると明言している。
新田ゼラチン、ゼラチンの製造法
2.果糖ブドウ糖液糖
原料は主にトウモロコシ。そのほとんどが遺伝子組み換えトウモロコシであるのは明らかです。
英語ではハイフルクトースコーンシロップ(HFCS)と言います。
フルクトースとは果糖のことですから、果糖が多く含まれたコーンシロップということになります。
ブドウ糖の方が混合比率が高い場合、ブドウ糖果糖液糖となります。
体内でエネルギーとして使われない果糖は中性脂肪に変化して肝臓に溜まっていきます。体に良いはずがありません。
> そのほとんどが遺伝子組み換えトウモロコシであるのは明らかです。
果糖ブドウ糖液糖の材料はデンプンだが、デンプンに遺伝子情報は含まれないから、遺伝子組み換えで有ろうが無かろうが関係なし。
遺伝子組み換えとか騒ぎ立てるのはナンセンス。
> ブドウ糖の方が混合比率が高い場合、ブドウ糖果糖液糖となります。
>体内でエネルギーとして使われない果糖は中性脂肪に変化して肝臓に溜まっていきます。体に良いはずがありません。
ま、これは嘘では無いが果糖ブドウ糖液糖に限った事では無い。
健康食と言われる蜂蜜も、果糖とブドウ糖の比率は果糖が多く食べ過ぎれば果糖ブドウ糖液糖と同じ事。
3、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング
全て「トランス脂肪酸」を含む油脂で、主に植物油等に水素を添加して固めたものです。
食品添加物ではなく食品扱いで、菓子パンやお菓子などに含まれています。
心臓疾患をはじめとするさまざまな病気との関係が指摘されているトランス脂肪酸については、アメリカや台湾、カナダなどでは事実上使用禁止となっています。
一方、日本は野放しのままです。
>全て「トランス脂肪酸」を含む油脂で、主に植物油等に水素を添加して固めたものです。
いわゆる部分水添硬化油で加工の際にトランス脂肪酸が出来るのは知られているが、最近はトランス脂肪酸が生成されないエステル交換油の使用が増えている。
>トランス脂肪酸については、アメリカや台湾、カナダなどでは事実上使用禁止となっています。
トランス脂肪酸の使用を許可している国は無いよ。
正確には部分水添硬化油の使用を禁止している訳で、この記事は正しくない。
>日本は野放しのままです。
野放しというといかにも無策と言わんばかりだが、元々日本のトランス脂肪酸摂取量は欧米に比べて少なかった。
トランス脂肪酸の平均摂取量はエネルギー比で1%以下が望ましいとされる。
トランス脂肪酸の平均摂取量(エネルギー比)
○アメリカ:2.2%
○日本:0.3%
食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価について
また、業界の自主規制でトランス脂肪酸の含有量は確実に減っている。
平成26・27年度調査結果(穀類加工品、乳類、油脂類、菓子類、嗜好飲料類、調味料・香辛料類、調理加工食品
法的な規制は無いが実際には確実に減っている訳で、野放しというのは煽り記事しかない。
4、人工甘味料
種類としては、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムKなど。人工甘味料の中には摂っても問題ない、と言われているものもありますが、僕はそれらも含めて入っている商品は一切買いません。
人工甘味料の多くは国内外の公的機関で安全性評価が行われ、 一日摂取許容量(ADI)が設定されている。
アスパルテーム:40(mg/kg体重/日)
アセスルファムカリムム: 15(mg/kg体重/日)
スクラロース: 15(mg/kg体重/日)
これらの甘味料を動物実験でADI相当を投与し続けたら腸内細菌叢に変化があったなどの研究もある。
厚生労働省のマーケットバスケット調査での20歳以上の人の一日推定摂取量は次の通り。
アスパルテーム:0,055(mg/人/日)
アセスルファムカリムム:1,779(mg/人/日)
スクラロース:0,752(mg/人/日)
いずれも、一日推定摂取量/一日摂取許容量の比率は小数点以下であり、これらの甘味料が健康に影響がある可能性は極めて低い。
令和元年度 マーケットバスケット方式による甘味料の摂取量調査の結果について
ま、買うかどうかは個人の自由だが。
5、加工デンプン
加工デンプンという表記の他に、「増粘剤」「糊料」「安定剤」「ゲル化剤」「乳化剤」と表記されたものに入っていることも多いです。
加工デンプンはデンプンに化学的処理をしたデンプンで、日本に於いては長期間にわたり食品として扱われていたが、海外では添加物として扱われていたため海外との整合性を取るため2008年より添加物に変更された。
日本では11種類の加工デンプンが食品添加物として認められている。
使用する加工デンプンの種類により、スナック菓子やベーカリー類の食感改良、冷凍食品の食感改良、デンプンの老化の防止、粘度安定性の維持など、幅広く使われる。
表示上は増粘剤、安定剤、ゲル化剤または糊料として使う場合は用途名が併記される。
増粘剤(加工デンプン)
乳化剤として使う場合は一括表示ができる。
また主な使用目的がこれらに該当しない場合は単に(加工デンプン)と表示され、多くはこの表示が多い。
加工デンプンは食品として扱われていた頃からの食経験も長く、その安全性は十分担保されていて、加工デンプンによる健康被害の報告も無い。
一日摂取許容量(ADI)も設定されていない。
加工デンプンの特性と食品への利用法
加工でん粉の基礎知識と現状について
6、リン酸塩/リン酸ナトリウム
この添加物も練り物や加工肉に入っていることが多いです。安いソーセージやハムには必ず入っています。僕はそういった加工肉はスーパーでは買わず、信用できる個人店で購入するようにしています。
リンは僕らの体に必要な物質ですが、野菜や肉を食べていれば十分に摂れる。リン酸塩などが入っているものを頻繁に食べていると体内のリンが過剰となり、腎臓をやられます、
リンは元々の食材に多く含まれる。
多いのは魚介類、畜産物、穀類、豆類、海藻などに多く含まれる。
平均的な日本人成人の1日のリンの摂取量は約1000mgで、そのうち成人のリン酸化物としての接種量は
オルトリン酸:250.4mg
縮合リン酸: 15.2mg
合計: 265.6mg
マーケットバスケット方式による食品添加物の一日摂取量の調査(2013年度)
食品から摂取するリン酸化物のうちで、食品添加物からのリン酸化物の摂取量は、人工透析専門医の団体、公益社団法人日本透析医会が発行している日本透析医会雑誌によると、食品添加物から 一日に摂取するリン酸化物は、約50~60mgと推定してる。
日本透析医会雑誌、Vol.30 No3 2015年 512ページ
日本人の食事によるリン摂取量
これからするリンの総摂取量のうち、食品添加物からの摂取量は5%程度しかない事になる。
少なくとも添加物のリン酸塩で、健康な人の腎臓ががやられる可能性は極めて低いと考えられる。
130人が死亡と、おどろおどろしいサブタイトルでリン酸の安全性には無関係な「森永ヒ素医ミルク事件」を載せているが・・・・・
ちなみに1955年に起こり、130人のお子さんが亡くなった「森永ヒ素入り粉ミルク事件」の原因はリン酸塩類でした。
凝固剤として使用したリン酸塩類が純度の低い安価なもので、多量のヒ素が含まれていたのです。
凝固剤と書いているが、粉ミルクの溶解促進を目的としてリン酸水素2ナトリウムを使う予定であったが、実際に納入された物はボーキサイトからアルミニウムを製造する際に発生する副生物の粗製リン酸ナトリウムであり、4~6%のヒ素化合物が含まれていた。
本来廃棄物であるのに、品質の確認もせず漫然と使用した事による事故であり、リン酸塩の安全性とは全く無関係である。
科学技術のリスク評価における非専門家の役割 -森永ヒ素粉乳中毒事件を中心に-
7、イーストフード
パン生地の発酵に欠かせないイースト菌の発酵を促すためのもので、文字通りイースト菌のエサということでイーストフード。イースト菌がそれを「食べる」ことで活動が活発になり、パンが早く膨らむわけです。~
~“工場の機械のため。発酵の工程が早く済めば、それだけ機械に対する負担が軽減される”と。消費者側から見ればどうでもいい事情で使われているわけです。
酵母の栄養源として必要な、窒素、リン、カリウムを供給するのがイーストフードで安全性の高い物質が使用される。
>消費者側から見ればどうでもいい事情で使われているわけです。
コストダウンになるわけで価格も抑える事が出来、消費者の選択肢を増やしている。
イーストフードを使わないと発酵時間が長くなりコストアップする。
イーストフードが嫌なら使用していない物を選べば良いわけであり、消費者から見ればどうでもいい事情ではない。
8、調味料(アミノ酸等)
言わずと知れた「食品添加物の王様」。「L-グルタミン酸ナトリウム」などがひとまとめにされていますが、ほとんどがいわゆる「うま味調味料」でしょう。
僕が子供のころは塩などと一緒に食卓に置いてあり、何にでもかけていました。
ところが、ある時期、アメリカのニューヨークにある中華街で食事をすると体調が悪くなる、と訴える人が相次いで、MSG(グルタミン酸ナトリウム)が原因ではないか、との声が出てきた。
そこからMSG排除運動が始まったのですが、いつの間にか日本では表記がL-グルタミン酸ナトリウムからアミノ酸に変わってしまった。
それが今では「調味料(アミノ酸等)」。アメリカなどでグルタミン酸ナトリウムの評判が悪くなってしまったので隠してしまおう、という意図を感じます。
>ある時期、アメリカのニューヨークにある中華街で食事をすると体調が悪くなる、と訴える人が相次いで、MSG(グルタミン酸ナトリウム)が原因ではないか、との声が出てきた。
グルタミン酸ナトリウムの安全性は色々な研究で、安全性に問題は無いとの結論は出ている。
食品には自然のグルタミン酸ナトリウムが含まれる事が多く、アメリカでは食品に元々グルタミン酸ナトリウムが含まれる場合に、「No MSGまたはNo added MSG」の表示は禁止されている。
>それが今では「調味料(アミノ酸等)」。アメリカなどでグルタミン酸ナトリウムの評判が悪くなってしまったので隠してしまおう、という意図を感じます。
「アミノ酸等」の表示は、旨味調味料の種類が多くなったため個別表示が難しくなった為であり、一番使用量の多い物で一括表示できる様にした訳で、「アミノ酸等」の表示は表示上のルールであり食品メーカーが勝手に「アミノ酸等」の表示にしているわけではない。
精製塩に要注意
〈若尾氏はこうした「食品添加物」だけではなく、「塩」と「砂糖」にも注意を払うべきだと忠告する。〉
精製された塩と砂糖が生活習慣病の元凶であることは疑いようがないでしょう。ただ、テレビに出てくるような偉い先生でも、「塩分を減らしましょう」としか言いません。
そうではなく、本来は「精製塩を減らしましょう」と言わなければならないのです。精製塩とは、「塩化ナトリウム」の純度が99.5%以上の塩のことを指します。
精製塩=塩化ナトリウムを摂るとなぜ体に良くないかというと、カルシウムやカリウムといった体内で必要なミネラルが、塩化ナトリウムを処理するために消費されてしまうからです。
だから、多くのミネラルが含まれた天然の塩と精製塩は分けて語るべきなのに、そういう区別が全くされていないのは問題だと思います。
僕は天然塩を使う分には問題ないと考えていますので、それほど使用量を気にせず使っています。一方の砂糖については、黒砂糖であれてんさい糖であれ、砂糖は砂糖。なるべく摂らないようにする方がいいと考えています。
>精製塩=塩化ナトリウムを摂るとなぜ体に良くないかというと、カルシウムやカリウムといった体内で必要なミネラルが、塩化ナトリウムを処理するために消費されてしまうからです。
天然の塩だろうが精製塩であろうが塩化ナトリウムである事に変わりは無い。
いわゆる天然塩(天然塩の表示は禁止)には不純物としてマグネシウムとかカリウムが含まれるが、食塩だけでこれらを必要量摂取する事は不可能。
いわゆる天然塩も精製塩もあくまでも成分は塩化ナトリウムであり、体内動態は全く同じ。
>僕は天然塩を使う分には問題ないと考えていますので、それほど使用量を気にせず使っています。
>一方の砂糖については、黒砂糖であれてんさい糖であれ、砂糖は砂糖。なるべく摂らないようにする方がいいと考えています。
塩は良くて砂糖はダメって訳ですね。
これらの食品添加物を排除する事はまず不可能。
食費がいくら掛かろうが関係ない人ならともかく、普通の人は先ず無理。
とかく食品添加物は叩かれるが、適正に使用する事により品質の向上、品質の劣化の抑制など、結果として消費者の利益となっている。
食品添加物を使わないで同等の品質を維持するには相当のコストアップとなり、最終的な価格で不利益を受ける事になる。
それでも良いと思う人はそれで良いが、多くの人には大きな負担となる。
科学的根拠より感情論としかか言い様がない記事だが、フードアナリストってこの程かなと思わせるレベル記事であった。
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