安部司センセらしいトンデモ記事の「超残念な真実」

 

 安部 司センセが東洋経済ONLINEに「平気で「サラダ」を買う人が知らない超残念な真実」という、毎度おなじみの「超残念な真実」シリーズの記事を書いている。

 「次亜塩素酸ナトリウム」を溶かしたプールで「洗っては移し」を繰り返し、最初は「200倍」、次に「500倍」「1000倍」「2000倍」などと徐々に濃度を低くして、何回かに分けて野菜を洗浄します。それは「次亜塩素酸ナトリウム」の残留を減らすことに加えて、「臭い」を残さないためです。~
 ~しかし問題は、洗浄の過程で、「次亜塩素酸ナトリウム」が塩素と反応して「ビタミンC」が破壊され、流出しがちだということです。
「ビタミンC」は水溶性ですから、家庭においても、野菜をカットして水道水で洗えば一定量は流出してしまいます。しかし「次亜塩素酸ナトリウム」を使って何度も洗浄されている市販のサラダは、より多くの「ビタミンC」が失われてしまっている可能性が十分あるのです。

 >「次亜塩素酸ナトリウム」が塩素と反応して「ビタミンC」が破壊され、流出しがちだということです。
 野菜の殺菌に使われる有効塩素濃度が100mg/kgの次亜塩素酸ナトリウムではビタミンCの損失は確認できなかったとの報告がある。

次亜塩素酸ナトリウム
 100 mg/kg における、加温溶液による野菜の殺菌処理についてパセリにおける試験では、全ビタミン C および、酸化型・還元型ビタミン C は、未処理区のものと有意差がなかった 。
 次亜塩素酸水

 有効塩素濃度が2倍の200ppm(200mg/kg)の次亜塩素酸ナトリウムでもビタミンCに影響が無かったという報告もある。

 【方法】レタスの外葉及び芯を除去した後、包丁にて4cm四方にカットしたレタスを試料とし、次亜塩素酸ナトリウム溶液(200ppm)浸漬による洗浄殺菌処理と水道水による洗浄処理(1分間、20分間)を行った。その後、調製したカットレタスの各栄養成分[ビタミンC及びミネラル類(カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄)]について定量分析を行った。実験期間は栄養素の季節変動を考慮し、季節ごとに年4回(2007年秋~2008年夏)と設定した。
 【結果】調製したカットレタスの栄養成分データについて比較した結果、いずれの栄養成分においても各調製試料間に有意な差は確認されなかった。以上の結果より、洗浄方法の違いによってカットレタスのビタミンC及びミネラル類(カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄)に有意な損失はないことが示唆された。また、季節ごとの栄養素の変動について一定の規則性は確認されなかった。
 カットレタスの洗浄方法の違いが栄養成分に及ぼす影響について

 安部センセはせっせと次亜塩素酸ナトリウムにこだわっているが、現在ではカット野菜には微酸性次亜塩素酸水を使うケースも増えている。
 名前は似ているが次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸水は全く別物。
 次亜塩素酸ナトリウムの殺菌作用は次亜塩素酸イオン ClO-によるもので、pHは約12で強アルカリ性。
 微酸性次亜塩素酸水の殺菌作用は次亜塩素酸HClOによるもので、ph5.0~6.5であり中性にちかい弱酸性である。
 微酸性次亜塩素酸水が次亜塩素酸ナトリウムと比べて優れている点は
 ・次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素濃度の半分程度の濃度でも次亜塩素酸ナトリウム以上の殺菌作用がある。
 ・次亜塩素酸ナトリウムは塩素臭が強いのに対して次亜塩素酸水はほとんど臭わない。
 ・安全性が高い。(次亜塩素酸ナトリウムは酸と混ざると有害な塩素を発生する)
 ・人体への刺激が少ない。(次亜塩素酸ナトリウム水溶液はpH12で強アルカリ性に対し、微酸性次亜塩素酸水はpHph5.0~6.5で弱酸性)
 次亜塩素酸水  
 微酸性次亜塩素酸水とは 
次亜塩素酸水は塩化ナトリウムあるいは塩酸を電気分解して作る訳で。次亜塩素酸水生成器で作られた次亜塩素酸水のプールの中でにカットされた野菜が流される事になる。

 食品中の栄養成分に及ぼす影響として、微酸性次亜塩素酸水処理によるビタミン C 等の含量への影響を検討した結果、水道水処理等の場合と比較して影響を与えなかった。
 次亜塩素酸水

 さらに他の添加物として

 「野菜の洗浄剤」(主に「シュガーエステル」)
 「界面活性剤(乳化剤)」の一種で、汚れを落とすために使われるものです。

 ショ糖脂肪酸エステルとかポリグリセリン酸エステルなどは安全性は高く、乳化剤として食品に幅広く使われているし、家庭用の野菜用や哺乳瓶の洗剤としても使われている。
 野菜・ほ乳瓶・食器用洗剤ナチュ  

 【3】「シャキシャキ剤」(主に「フマル酸」「乳酸カルシウム」、酸性の「ポリリン酸ナトリウム」など)
 野菜を「シャキシャキさせる」ために使われる添加物です。「浅漬けの素」などにも使われています。ただ、私も現役当時はよく使っていましたが、正直あまり効果があるようには思えませんでした。

 そんな物は全く不要で、普通の水で良い。
 少々しんなりしたレタスを適当にちぎり、冷水にしばらく浸けておけばパリパリになる。
 トンカツ屋の千切りキャベツも水にさらさないとシャキシャキの食感が出ない。
 これは細胞膜が半透膜であるためで、濃度の薄い方から濃度の高い方に水が浸透して行くため。
 シャキシャキの食感を出すには水にさらすだけでOK。

 【4】「切り口の変色防止剤」
 「カットした野菜の切り口の変色用」に用いられます。「バナナの黒ずみ防止」にも使われるものです。

 これも水にさらすだけで大丈夫。
 カットした野菜の断面は細胞が破壊され、細胞液が空気に接触するため含まれる酵素の作用で変色する。
 水洗いで細胞液が流されるため変色しにくくなる。

 水洗いは腐敗防止にもなる。
 細胞液には糖質やその他ね栄養分を含み、それを栄養源にして細菌などの微生物が繁殖しやすい。
 水洗いする事により細胞液を除去する事により腐敗しにくくなる。
 水洗がカット野菜の品質保持に非常に重要な役割を持つが、ここで重要なのは水洗後には完全に脱水する必要がある。
 水が残ると腐敗などの品質劣化につながる。
 ウォーターパワー侮り難しと言う事。

 その他、袋詰めの歳に窒素ガスなどを充填したり、特殊な包装材料を使うなど、添加物を使わない品質保持もとられる。
 ガス置換包装を用いたフードロス削減の取り組み  
  業務用鮮度保持フィルム カット野菜用  

 そもそもレタスは100グラム(一玉の4分の1程度)とっても、「食物繊維」は1グラムちょっと、「ビタミンC」は5ミリグラム程度です。ビタミンCは水に溶けやすいので、それも洗浄の過程で失われてしまっているかもしれません。

 市販のサラダやカット野菜が全く意味の無い野菜になる訳では無い。

 始めに書いたように、「カット後に一部の栄養成分量が減少する」といっても「栄養の全くない意味のない野菜」になってしまうというわけではありません。インターネットを見ますと、「(スーパーなどで売っている)カット野菜は野菜としての価値はない(極めて低い)」といった行き過ぎた情報も見当たりますが、そのようなことはありません。
 医薬基盤・健康:栄養研究所 健康・栄養フォーラム

 カット野菜やサラダは必要な分だけ購入する事で、使い残して廃棄するなどフードロス予防にもなる。
 カット野菜やサラダに使われる野菜自体が栄養が比較的乏しい事を認識していて居れば『』平気で「サラダ」を買う人が知らない超残念な真実』にはならない。
 安部司センセらしいトンデモ記事の超残念な真実である。

 東洋経済、こんなトンデモ記事を載せる一方で次の様な記事も燃せている。
 「サラダ無人販売」がランチ時間にもたらす革命  
 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

この記事へのコメントはこちら

メールアドレスは公開されませんのでご安心ください。
また、* が付いている欄は必須項目となりますので、必ずご記入をお願いします。

内容に問題なければ、下記の「コメント送信」ボタンを押してください。

CAPTCHA