食品ジャーナリストの郡司和夫センセは算数の計算が出来ない????
食品ジャーナリストの郡司和夫センセがBusiness Journal に、『コンビニおにぎりと弁当は危険!原価5円?添加物まみれで健康被害の恐れ』という毎度おなじみの記事を書いている。
まず、ほとんどのコンビニおにぎりに使われている添加物がグリシンという炊飯改良剤です。ごはんのつやを出す効果や保存性を高める目的で添加されています。グリシンは人工的に合成されたアミノ酸です。体内でつくられるアミノ酸のグリシンは脳に働きかけ睡眠を深くさせる作用があります。こうしたことから、添加物グリシンは一部の製薬会社から安眠効果を高めるサプリメントとして販売されています。
しかし、人間の体内でつくられるアミノ酸のグリシンと、人工的につくられた添加物のグリシンとは別の物質と理解しておかないと、予想もしない健康被害に遭う恐れがあります。
『人間の体内でつくられるアミノ酸のグリシンと、人工的につくられた添加物のグリシンとは別の物質と理解しておかないと、予想もしない健康被害に遭う恐れがあります』という非常に非科学的な事が書かれている。
人体内で合成されようが、天然由来だろうが、人工的に合成されようがグリシンはグリシンと言う事。
もっとも心配されるのが過剰摂取です。「食品添加物公定書」という公的な専門書には、グリシンをモルモットに大量に与えると、筋緊張の消失と一過性の完全麻痺が起こったという報告があります。
また、大きな特徴として右回りの円運動を行うとも報告されています。大量に食べると、ということですが、グリシンはコンビニおにぎりだけでなく、ほとんどのコンビニ弁当に使われています。
食品ジャーナリストを称するのにこういう事を書いて良いのかな?
「食品添加物公定書」は認可された食品添加物の試験方法、試薬・試験薬等の規定、食品添加物の成分規格・保存規格などを規定してる文書で、危険性等には触れていない。
第8版食品添加物公定書、成分規格・保存規格 グリシン、320ページ
グリシンの危険性等だが
対象外物質評価書 グリシン
急性毒性
>ラットを用いたグリシンの経口投与による急性毒性試験におけるLD50は、約3,340 mg/kg体重であった。
食塩(塩化ナトリウム)のラットの経口のLD50(半数致死量)は3,000mg/kgなので食塩と同等程度という事になる。
塩化ナトリウム・安全データシート、純正化学(株)
>鶏(白色レグホン)を用いたグリシンの経口投与による急性毒性試験が実施された。4,000 mg/日以上の投与で、中毒症状を呈し、極度の疲憊、昏睡及び死亡がみられた。さらに水分の排泄量は減少し、その窒素含量は4倍に増加し、プリン濃度も上昇した。腎臓は著しく萎縮した。
白色レグホンの23週齢の成鳥の体重は、雄が約2kg、雌が約1.5kgとされる。
岡山県養鶏試験場
ヒトと鶏の感受性の違いを無視して体重50kgのヒトに単純に置き換えると、100g~133gに相当する事になる。
慢性毒性及び発がん性
>ラット(F344系)を用いたグリシンの飲水投与(2.5及び5.0 %:1,250及び2,500 mg/kg体重/日に相当)による108週間慢性毒性/発がん性試験が実施された。雌雄ともに用量に依存した体重減少、腎乳頭部の壊死が、また雌の8 %(2.5 %群)及び6 %(5.0 %群)に腎盂乳頭腫が認められた。NOAELは設定できなかった。
雌雄ともに用量に依存した体重減少、腎乳頭部の壊死が発生し、雌に関しては良性の腫瘍が発生したとされ、投与量は体重50kgのヒトに置き換えると62.5g/日、125g/日となる。
実際にどの程度のグリシンを摂取しているかというと、少々データは古いが平成11年度の調査がある。
公益財団法人日本食品化学研究振興財団、食品添加物の年齢別摂取量
これによると、一日のグリシンの摂取量の平均値は、1~6才が136mg,7~14才が209mg,15~19才が279mg、20~64才が295mg、65才以上が270mgであった。
これは天然由来のグリシンと、食品添加物として添加されたグリシンの合計の値で、食品として摂取する量からは健康を害する量を摂取するのはまず不可能と良いって良い。
ただし、サプリメントを使う場合は要注意で、摂取しすぎには注意すべきであろう。
ちなみに、海上自衛隊(呉補給廠)では、pH調整剤の添加されているパックご飯は使えないことになっています。おそらく、国を守る隊員に対しては、健康に悪影響を与える食品は提供できないということなのでしょう。
呉補給廠とは何とも古い表現で、現在の名称は海上自衛隊呉造修補給所だが、糧食品規格書では確かにph調整剤を含まない事となっているが・・・
一方で陸上自衛隊ではph調整剤の使用を認めている。
陸上自衛隊仕様書:白飯、非常用食料、袋型によると材料は
・うるち米
・クエン酸
・クエン酸ナトリウム
・トレハロース
となっていて、クエン酸とクエン酸ナトリウムはph調整剤そのもので、しっかりph調整剤を使っている。
ちなみにトレハロースはご飯の品質保持剤で、これを入れるとご飯が冷めてもパサつきにくくなる。
さて本題の算数の計算出来ないの件だが・・・・・
確かに、1個100円前後ですから安いと思うでしょう。しかし、コンビニおにぎり1個の原価(コメのみ)は、間違いなく5円以下です。昨年などコメの取引価格が暴落して、産地によって違いはありますが、多くは60キロ(1俵)7000円台で生産者から卸業者へ売られています。コンビニおにぎりに使用されるコメは1個当たり80グラムほどですから、7000円台のおコメで計算すると、1個3円程度です。少し高いコメを使っても5円以下のはずです。具とか輸送費、人件費などを入れても1個100円はとんでもなく高い価格です。
60kgの米の価格が7000円、おにぎり1個に使われる米が80gとして、おにぎり1個当りの米の価格を計算してみよう。
60kgは60X1000=60000で、60,000gとなる。
1gの米の価格は7000÷60000=0.1166666~で、0.117円とする。
おにぎり1個分の米80gの価格は、0.117X80=9.36で、おにぎり1個分の価格は9.36円であり、3円にはならない。
逆におにぎり1個分、80gで3円とするには
1gの米の価格、3÷80=0.0375で、1gの価格は0.0375円
60kgの価格はというと
0.0375X60000=2250で、60kgが2250円の価格の米を使わないとおにぎり1個の米代が3円にはならない。
明らかにこの記事の価格はおかしく、基本的な事を間違えたか、捏造したか、算数の計算を間違えたとしか思えない。
>昨年などコメの取引価格が暴落して、産地によって違いはありますが、多くは60キロ(1俵)7000円台で生産者から卸業者へ売られています。
昨年というと平成26年の事だろうが、昨年は米価格が暴落したがそれには理由があった。
農業協同組合新聞(電子版)2014.10.2によると
中小の米卸が、26年産米への資金調達目的もあり、在庫として抱えていた25年産米を銘柄に関係なく搗精代込みで1kg180〜190円という超低価格で外食へ投売りしたのが、米価暴落のきっかけだったという。
1kg180~190円が超低価格で投げ売りと言う事だが、これが60kgというと10,800~11,400円という事になり、超低価格でも60kgで10,800~11,400円位と言う事になる。
公益社団法人米穀安定供給確保支援機構の「米の相対取引価格 全銘柄平均価格の推移(出荷業者/速報/平成27年8月)」によると、平成26年産の米の価格は60kg当り11,891~12,481で推移している。
60kg当り10,800円の米を、おにぎり1個当り80g使用した場合の、1個当りの米の価格は
1gの価格 :10800÷60,000=0.18
80gの価格:0.18X80=14.4
おにぎり1個当りの米代は14.4円と言う事になり、どうあっても1個当り3円にはならない。
スポット価格では60kgが7000円くらいの米が買えるかもしれないが、継続してこの価格で調達するのは不可能であろう。
具とか輸送費、人件費などを入れても1個100円はとんでもなく高い価格です。
原価計算に必要な米の価格がデタラメなので原価計算してもしょうが無いが、他に梱包用の資材、光熱費、土地建物が自社物件なら固定資産税、賃貸なら地代家賃、製造用設備は減価償却費なりリース料、コンビニのオーナーへのマージン、消費期限切れの廃棄などが固定費として発生する。
おにぎりや弁当は利益率の高い商品としても、とんでもなく高い価格ではないと思う。
この記事は、食品ジャーナリストを称する人が書いたにしては、おおボケ、お粗末極まりない記事といえる。
確かに食の安全に対して誇張された偽論は社会の不安を行うしかないです。
(お握り白飯80g作るため、お米は40gぐらい要ります。何故ならばご飯の半分は水分ですね。ご参考ください)