渡辺雄二のデタラメ記事「おせち料理」

   2018/02/01

 自称科学ジャーナリストの渡辺雄二のデタラメ記事『一部の市販おせち料理は危険? 黄金色の数の子や真っ赤な酢だこ、発がん性の指摘も

 数の子

 数の子はニシンの卵ですが、それは本来薄茶色をしていて、血が付いていることもあったりして、どう見てもきれいではありません。
 そこで、漂白してきれいにするために古くから過酸化水素が使われていました。過酸化水素の漂白作用は強力で、見た目の悪い数の子を「黄金色」にすることができたからです。

 
 ところが1980年1月、厚生省(現厚生労働省)は「過酸化水素に発がん性のあることがわかったので、食品には可能な限り使用しないように」という内容の通達を食品加工業者に出しました。
 同省の助成金によるマウスを使った実験で、過酸化水素によって十二指腸にがんの発生が認められたためです。

 この経口による過酸化水素の発がん性は、次の研究によるものである。

 JECFA(1980)の引用によれば、Ito ら(1980)は、C57BL/6J マウス(各群雌雄各 50 匹)に過酸化水素(0(対照群)、0.1、0.4%)を 8 週齢から 108週齢にかけて飲水投与する試験を実施している。
 その結果、過酸化水素投与群で消化器、十二指腸にびらん、十二指腸に腫瘍が認められたとされている。

 対照群にも、腺胃に小結節過形成、十二指腸過形成など、通常は認められないいくつかの病変が認められたとされている。
 摂水量は報告されておらず、過酸化水素の暴露量は不明であったとされている。
 なお、生存率について、投与群で対照群より高かったとされている。JECFA は、過酸化水素には保存料が含有されていることが多く、保存料による発がんへの寄与に関する評価が必要としている。
 (案)添加物評価書過酸化水素 2012年 

 一方で、経口による過酸化水素の発がん性は低いとの報告もある。

 Desesso ら(2000)のレビューによれば、Ito らが実施したマウスに過酸化水素(0.4%)を飲水投与する試験について、胃や十二指腸のびらんや過形性が認められたのは、飲水量の減少により固形飼料が胃及び十二指腸粘膜を刺激させたためとし、過酸化水素の経口摂取による発がん性は低いと結論している。
 その理由として、Ito らは飲水量を記載していないが過酸化水素の投与で飲水量が顕著に減少することが報告されていること、前胃には何ら病理組織学的変化がみとめられていないこと、Li ら(1993)によって行われたハムスターに 70 ㎎/㎏の濃度で過酸化水素をカテーテル投与する試験では、胃及び十二指腸粘膜に異常は認められなかったこと、をあげている。
(案)添加物評価書過酸化水素 2012年

2016年の最新の添加物評価書によると次の通りとなっている。

 なお、低カタラーゼ活性マウスである C57BL 系統のマウスを用いた 100 週間飲水投与試験(Ito ら(1981))及び 30~740 日間飲水投与試験(Ito ら(1982))において十二指腸癌の発生が認められたが、30~740 日間飲水投与試験における DBA マウス及び BALB マウスにおいては、十二指腸癌の発生は認められていない。
 さらに、十二指腸癌の発生率についての統計学的解析も行われておらず、カタラーゼ活性が低くないマウスに対する発がん性は認められない。
 一方、体内動態のまとめによれば、過酸化水素はカタラーゼ等の酵素や金属イオン等により速やかに代謝されると考えられ、また、カタラーゼ活性についてCalabrese & Canada(1989)によれば、種差が知られているとされている。
 以上より、本委員会としては、現在得られている試験結果からは、過酸化水素について発がん性の有無を判断することはできないものの、ラット 18 か月間飲水投与試験において発がん性が認められなかったことに留意するとともに、低カタラーゼ活性マウスでの十二指腸癌の発生については、カタラーゼ活性の低下していないヒトに外挿することは適切でなく、カタラーゼ活性の低下していないヒトにおいて発がん性の懸念は認められないと考えた。
 添加物評価書 過酸化水素 

 本委員会としては、しらす加工品について使用基準改正がなされた場合の添加物「過酸化水素」の推定一日摂取量は、過酢酸製剤の使用に係る添加物「過酸化水素」の推定一日摂取量から僅かに増加しているものの、残留試験の結果において処理の有無による過酸化水素の含量に差がないことも踏まえ、添加物評価書「過酢酸製剤及び同製剤に含有される物質」(第 2 版)(2015)における評価結果と同様に、毒性試験成績から NOAEL が得られているものの、過酸化水素の安定性、体内動態のメカニズム、実際に体内に取り込まれる量、リスク管理措置を考慮し、添加物「過酸化水素」が添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念がないと考えられ、ADI を特定する必要はないと判断した。
 なお、低カタラーゼ活性マウスにおいて十二指腸癌の発生が認められているが、上述のとおりヒトにおける過酸化水素の実際に体内に取り込まれる量は非常に低い値であり、仮に摂取したとしても、ヒトの唾液中等に存在するペルオキシダーゼ等、カタラーゼ以外の酵素により過酸化水素が代謝されることから、カタラーゼ活性の低下しているヒトについても、添加物「過酸化水素」が添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念はないと判断した。
 添加物評価書 過酸化水素 

 食品安全委員会の添加物評価書によると、食品中の過酸化水素の安全性に関しては懸念が無いとしている。

 しかし、実際には過酸化水素を完全に除去することはなかなか難しいのです。
 私が過去に東京都と千葉県で購入した数の子4製品を一般財団法人・日本食品分析センターで調べてもらったところ、2製品から過酸化水素が0.2ppm検出されことがありました。

 食品中には天然由来の過酸化水素が含まれる場合が多い。
 食品添加物含有量データベースに、食品に含まれる天然由来の食品添加物自然含有量の調査結果が乗っている。
 加工食品中の過酸化水素含有量(190品目,1271検体)によると、数の子は10サンプル中、未検出~0.7μg/g、平均で0.4μg/g(0.4ppm)含まれていたとしている。
 身近なもので多いのは
 濃い口醤油:平均7.6μg/g(7.6ppm)
 イカナゴ佃煮:同9.1μg/g(9.1ppm)
 らっきょう甘酢漬け:同5.7μg/g(5.7ppm)
 インスタントコーヒー粉末:同368.5μg/g(368.5ppm)
 など、食品自体に過酸化水素を含むケースが多く、渡辺雄二センセがホントに検査を依頼したのかどうかは判らないが、数の子を検査すれば過酸化水素を使用していなくても検出される可能性は大きい。

 私はこれまでスーパーなどで売られている数の子を何度も試食してきましたが、時々薬っぽいような、変な味や違和感を覚えることがあります。
 それは、本来の数の子の味とはまったく違うもので、おそらく過酸化水素が残留していると考えられます。

 オキシドール(3%過酸化水素水)は歯科や口腔外科では、口内炎の治療に10倍に薄めたオキシドールをうがいに使う事がある。
  オキシド-ル「タカスギ」添付文書 
 10倍に薄めたオキシドールの濃度は約0.3%、3000ppmになる。
 10倍に薄めたオキシドールはを口に含むと特に味も無く、わずかにオゾン臭の様な臭いが口中に残る感じで、更に100倍に薄めたオキシドール(濃度約0.03%、300ppm)になると普通の水と区別がつかなくなる。
 それを考えると、食品中に数ppm残留した過酸化水素で変な味や違和感を覚える可能性は低いと考えられる。
 ホントに変な味や違和感を感じたのなら、過酸化水素ではなく数の子自体が劣化していたのじゃないの?

 ちなみに国際ガン研究機関(IARC)は1999年に、過酸化水素について評価を行い、過酸化水素を「ヒトに対する発がん性について分類できない(グループ3)。」と分類している。
 IARC発がん性リスク一覧
 ・グループ1:ヒトに対する発癌性が認められる
 ・グループ2A:ヒトに対する発癌性があると考えられる
 ・グループ2B:ヒトに対する発癌性が疑われる
 ・グループ3:ヒトに対する発癌性が分類できない
 ・グループ4:ヒトに対する発癌性がおそらくない

 酢だこ

 通常、市販の酢だこは鮮やかな赤い色をしていますが、それは合成着色料でタール色素の一種である赤色102号によるものです。
 しかし、タール色素はいずれも危険性が高いのです。

 赤色102号は、それを3%含むえさをラットに1年以上与えた実験では、次第に食欲がなくなって体重が減りました。
 また、アメリカで発がん性の疑いが強いという理由で使用が禁止された赤色2号と化学構造が非常によく似ているため、発がん性の疑いがあります。

 >赤色102号は、それを3%含むえさをラットに1年以上与えた実験では、次第に食欲がなくなって体重が減りました。
 この手の先生連中はソースを明らかにしないため、どの実験か判らないが、渡辺センセの触れている実験は次の様になるはずである。
 ラットの体重は、実験動物を扱う紀和実験動物研究所のサイトによると200g~350gとなっている。
 紀和実験動物研究所ラット 
 ラットの一日当たりの餌の摂取量は、同じく実験動物を扱うEPS益新(株)のサイトによると15~30gとなっている。
 EPS益新 対応動物種・摂取量 
 体重300gのラットの餌の摂取量を30gとすると、3%の赤色102号の量は
 30gX0.03=0.9gとなる。
 体重1kg当たりに換算すると3g/kgとなる。
 ヒトの赤色102号のADI(一日摂取許容量)は体重1kgあたり4mgとなっていて、渡辺センセの記事が正しいとすれば、ヒトのADIの750倍というとてつもない量を摂取させたことになる。

 実際にヒトがどれほど赤色102号を摂取しているかだが、厚生労働省が平成28年にマーケットバスケット方式の調査によると、ヒト1人の平均摂取量は0.005mgとなっている。
 体重58.6kgkgのヒトが摂取できる赤色102号は
 4X58.6=234mであり、実際の摂取量は大幅に下回っていて、酢だこを喰ったところで健康被害が発生するとはきわめて考えにくい。
 ま、発がん性を気にするなら、禁酒、禁煙(間接喫煙を含む)をした方が余程現実的であろう。
 平成28年度マーケットバスケット方式による保存料及び着色料の摂取量調査の結果について 

 >アメリカで発がん性の疑いが強いという理由で使用が禁止された赤色2号と化学構造が非常によく似ているため・・・・
 この赤色2号の実験であるが、きわめて杜撰な実験であったことが判明し赤色2号の発がん性は否定されたが、代替の赤色102号がすでに使用されていたためアメリカでは食品添加物として復活する事は無かった。
 赤色2号(アマランス)は日本では使用可能だが、マーケットバスケット調査の結果を見ると使用実績は殆どないのではないかと思われる。

 黒豆

 さらに、祝い肴三種のひとつである黒豆にも注意しなければならない点があります。それは、市販の黒豆の中には、添加物の硫酸第一鉄を使っている製品があることです。
 原材料名に「硫酸第一鉄」と表示されているのでわかります。
 
 硫酸第一鉄は黒豆の黒い色を際立たせるために添加されていますが、毒性が強く、ラットに体重1kg当たり0.319gを経口投与したところ、半数が死亡しました。ヒト推定致死量は20~30gです。

 >毒性が強く、ラットに体重1kg当たり0.319gを経口投与したところ、半数が死亡しました。ヒト推定致死量は20~30gです。
 硫酸第一鉄の毒性はそんなに強いとは思えませんが。
 このソースも全く不明である。
 硫酸第一鉄の正式名称は硫酸鉄(Ⅱ)で、ちなみに食品添加物に使われる硫酸第一鉄は7水和物で、硫酸第一鉄の分子1個に7個の水の分子が付いていて、薄緑色をしているため緑礬とも呼ばれる。
 この硫酸第一鉄・七水和物のラットの半数致死量LD50は1389mg/kg、マウスのLD50は1520mg/kgとなっている。
 硫酸鉄(II)七水和物安全データシート 純正化学 
 硫酸鉄(Ⅱ)七水和物〔硫酸第一鉄〕SDS 昭和化学 
 「ラットに体重1kg当たり0.319gを経口投与したところ、半数が死亡」という数字の出所は何処だろうか。
 ちなみに上記の安全データシートのLD50は七水和物の場合で、無水ではどうなるかというと
 硫酸第一鉄・七水和物のモル質量は約278g/mol
 無水硫酸第一鉄のモル質量は約152g/mol
 ラットの七水和物に対するLD50のデータを無水に置き換えると
 152÷278=0.546
 0.546*1389=759.4mg
 0.319g=319mgにはどうしてもならないんですが・・・・・
 ちなみに食塩(塩化ナトリウム)のヒトの致死量が体重1kgあたり0.5~5gとされているところからも、硫酸第一鉄の毒性が強いとは思えないが・・・・・
 日本中毒情報センター 塩、醤油

 ちなみに無水の硫酸鉄(Ⅱ)は、医薬品として鉄欠乏性貧血の治療に用いられる。
 テツクール徐放錠100mg あすか製薬  http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3222004X1030_1_03
 フェロ・グラデュメット錠105mg マイランEPD合同会社 
 いずれも無水硫酸第一鉄が320mg程度配合されていて、一日に1錠~2錠服用ということなので、硫酸第一鉄・七水和物に換算すれば0.58g~1.17gとなり食品添加物の使用量とは比べものにならない。

 黒豆の煮物に使われる量を0.03%とすると、煮豆100gあたり30mgということになる。
 テツクール1錠の硫酸第一鉄を煮豆で摂取するには
 580÷30≒19.3
 100X19.3=1933=1.93kg
 2kg近く食べる必要がある。
 黒豆の煮物は全く気にする必要は無い。
 
 黒豆の煮物を食べて、『これまでに、硫酸第一鉄を摂取して人が死亡した例があり、この際には激しい腸管刺激、虚脱、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青くなること)が見られました。』なんて事は到底あり得ないという事である。

 食肉加工品

 しかし、市販のパストラミビーフには発色剤の亜硝酸Na(ナトリウム)が使われているので要注意です。
 亜硝酸Naは、ハムやソーセージにも使われているもので、毒性が強く、さらに肉類に含まれるアミンという物質と結合して、発がん性のあるニトロソアミン類に変化します。

 WHO(世界保健機関)の外部組織であるIARC(国際がん研究機関)は2015年10月、「ハムやソーセージなどの加工肉を1日に50g食べると、結腸がんや直腸がんになるリスクが18%高まる」と発表しました。これは、ニトロソアミン類が原因していると考えられます

 赤身肉赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて 
 この研究によると肉類の摂取は結腸がんのリスクを上げるとしている。

 赤肉・加工肉のがんリスクについて
  この資料によると、全世界の年間のがんの死亡者数は
 ・喫煙 100万人
 ・アルコール 60万人
 ・大気汚染 20万人
 ・加工肉 3万4千人
 としている。
 一方で「大腸がんの発生に関して、日本人の平均的な摂取の範囲であれば赤肉や加工肉がリスクに与える影響は無いか、あっても、小さいと言えます。」としている。
 赤身肉や加工肉は数ある「がんのリスク」の一つであり、食事全体のバランスが重要と言うことである。

 亜硝酸態窒素の摂取量は食肉加工品からの摂取より、他の食品からの摂取量のほうが多い。
 食品添加物再び、郡司和夫センセのアホ記事

 ガンに限らず、健康を維持するにあたり、様々な食品をバランス良く摂取することが重要という事になる。

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