自称科学ジャーナリスト渡辺雄二センセの非科学的記事「甘味料」

 

 自称科学ジャーナリスト渡辺雄二センセらしい記事。
 『合成甘味料入りダイエット飲料、1日1回飲用で脳卒中や認知症発症の確率3倍との調査結果

 渡辺センセ早速、甘味料のスクラロースに噛みつく。

 スクラロースは、有機塩素化合物の一種で、体内に摂取されても消化酵素によって分解されることがありません。
 砂糖などとは違ってエネルギーに変換されることがないのです。そのため、ゼロカロリーなのです。
 ただし、スクラロースは消化管から吸収されて血液中に入り、全身を巡ります。
 地球の環境中に排出されたダイオキシンや農薬のDDTなどの化学物質は、分解されることなく環境中をぐるぐる巡って「環境汚染」を引き起こしています。
 同様に、人体に入って分解されることなく体中を巡る添加物は、「人体汚染」を起こしているといえます。
 人体汚染物質は、肝臓や腎臓などの臓器の機能を低下させたり、遺伝子を傷つけて、がんの引き金になる可能性があります。

 「人体汚染物質」ですか・・・・・、渡辺センセの造語ですね。
 スクラロースを同じ有機塩素化合物と言うことで、DDTやダイオキシン類と同じ扱いというのがすごい。
 経口接種したスクラロースは10~30%が体内に吸収され、残りは糞中に排泄される。
 吸収されたスクラロースは尿中に排泄され、ヒトの血中のスクラロースの半減期は、2.5~23時間とされる。
 ラットにおける体内動態は、腸管を除くと臓器中では肝臓や腎臓が最大値を示したが、24 時間後には血漿レベル以下になった。脳内への分布は低い。
 スクラロースの指定について 
 摂取したスクラロースの大半は便として排泄され、吸収されたスクラロースは代謝されることは無く、尿として排泄される。

 >同様に、人体に入って分解されることなく体中を巡る添加物は、「人体汚染」を起こしているといえます。
 体内に蓄積することはなく、分解されることなく排泄されると言うことは人体に負担をかけないと言うこと。
 たとえば、酒(アルコール)を摂取すると、肝臓でエチルアルコール→アセトアルデヒド→水、二酸化炭素に分解され排泄されるが、これが肝臓の負担になるのであり、分解されないで排泄すると言うことは身体に負担をかけていないと言うこと。

 スクラロースを5%含むえさをラットに4週間食べさせた実験では、脾臓と胸腺のリンパ組織の萎縮が認められました。
 これは、リンパ球が減って免疫力が低下する可能性があるということです。

 とのことだが、この実験の詳しい内容は次の通り。

 亜急性毒性試験-ラットにスクラロースを、10,000、25,000、50,000 ppm の用量で、4週間混餌投与した試験では、死亡例は見られなかった。
 50,000 ppmの用量で、脾臓及び胸腺のリンパ源胞の萎縮が認められた。
 1、2、4、8%のスクラロースを9週間混餌投与したラットの試験においては、4%以上の用量で、体重の増加抑制や盲腸重量の増加が認められた。
 ラットに、一日あたり2,000、3,000、4,000 mg/kg の用量を、それぞれ13、9、4 週間強制経口投与した場合には、全用量で盲腸重量の増加が認められたが、毒性学的に意義のある所見は認められなかった。
 以上の試験において観察された盲腸重量の増加については、低吸収性で浸透圧活性物質の高用量で見られる所見であり、毒性学的意義は乏しいものと考えられる。
 さらに、マウスにおいても34日間の混餌投与試験が行われているが、特記すべき所見は観察されなかった。
 スクラロースの指定について 
 注)50,000ppmが5%に相当する。

  SDラット20周齢のSDラットの平均体重と摂餌量は次の通り。
 体重:536.8g  摂餌量:21.5g(雄)
 SDラット長期モニタリングデータ 
 日本チャールズリバーの雄の20周齢ラットで5%のスクラロースの摂取量は次の通り。
 21.5*0.05=1.075g 
 体重1kg当たりに換算したスクラロースの摂取量次の通り。
 1000/536.8=1.86
 1.075*1.86=1.999g
 ヒトの一日許容摂取量(ADI)は15mg/kg/体重なので、ヒトのADIの133倍のとてつもない投与量である。
 安全性評価のための大量投与の結果を基に「リンパ球が減って免疫力が低下する可能性がある」など、全くの戯言。
 さすが自称食品ジャーナリストらしい、データの良いとこ取りである。
 ちなみに、厚生労働省の調査によると、スクラロースの1日の1人当たりの平均摂取量は、0.825mgであり、対ADI比も小数点以下である。
 平成27年度マーケットバスケット方式による甘味料の摂取量調査の結果について 
 スクラロースの次は、アセスルファムカリウムに噛みついている。

 アセスルファムKは、自然界に存在しない化学合成物質であり、スクラロースと同様に体内で分解されることなく、血液中に入って全身を巡ります。
 つまり、同様に人体汚染を起こすのです。

 ヒトのアセスルファムカリウムの体内動態は、ほぼ全量が体内に吸収され、摂取後1~1.5時間以内に最高血中濃度に達し、半減期は約2.5時間とされ、1週間以内にほぼ全量が排泄される。
 人体汚染など戯言である。

 アセスルファムKを3%含むえさをイヌに2年間食べさせた実験では、肝臓障害の際に増加するGPTが増加し、リンパ球が減少しました。
 つまり、肝臓にダメージを与えたり、免疫力を低下させる恐れがあるということです。

 これもデータの良いこと取り。

 さらに、イヌにアセスルファムカリウムを0、0.3、1、3%の用量で2年間混餌投与した試験において、一般状態、死亡率、体重に有意な影響は認められなかった。
 0.3%の用量において、リンパ球の減少、好中球の増加が、1%の用量において、血清GPTの減少が、3%の用量において、血清GPTの増加、リンパ球の減少が認められたが、生物学的変動範囲内であり、毒性学的意義は乏しいものと判断された。
 臓器重量に有意な影響は認められなかった。
 病理組織学的検査においても、特筆すべき所見は観察されなかった。
 アセスルファムカリウムの指定について  

 つまり、3%で血清GPTの増加、リンパ球の減少が認められたが、生物学的変動範囲内であり、安全性に問題ないとしている。
 先ほどの甘味料摂取調査では、アセスルファムカリウムの1人当たりの1日の平均摂取量は1.357mgであり、 対ADI比も小数点以下である。
 平成27年度マーケットバスケット方式による甘味料の摂取量調査の結果について 
 アセスルファムカリウム、一日許容摂取量(ADI):15mg/kg/体重

 渡辺センセ、人工甘味料と脳卒中、痴呆のリスクの上昇について触れている。

 2017年4月、アメリカのボストン大学の研究グループが興味深い発表を行いました。
 それは、合成甘味料が脳卒中や認知症になるリスクを高めるというものです。
 同グループは、マサチューセッツ州のフラミンガムという町で住民の健康について継続的に調べているのですが、脳卒中は45歳以上の男女2888人、認知症は60歳以上の男女1484人を対象に、食生活などを詳しく聞いた後、10年以内に脳卒中になった97人と認知症になった81人について分析しました。
 その結果、合成甘味料入りのダイエット飲料を1日1回以上飲んでいた人は、まったく飲まない人よりも虚血性の脳卒中やアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)になる確率が約3倍も高かったのです。
 なお、砂糖入りの飲料を飲んでいる人についても調べましたが、脳卒中や認知症との関連は認められませんでした。

 この研究はAHA/ASA Journalsに掲載されている。
 Sugar- and Artificially Sweetened Beverages and the Risks of Incident Stroke and Dementia  
 この研究は「フラミンガム心臓研究」という、世界的に有名な研究のデータを利用している。
 「フラミンガム心臓研究」というのは、米国マサチューセッツ州ボストンの都心から30数キロ西にあるフラミンガムで、1948年に米国立心臓研究所(現在の国立心臓、肺、血液研究所の前身)の指導により着手された国家的プロジェクトである。
 フラミンガム心臓研究は、コホート調査とう手法を採り、簡単に言えば次の様な事を行っている。
  1.調査への協力者を募集する。
  2.協力者に、日常の生活習慣や食習慣の聞き取り。
  3.身長体重、かかっている病気、既往歴の記録。
  4.長期間にわたり同じ人に調査協力してもらう。
 長期間調査を続ければ、脳卒中や痴呆症を発症する人がでてくるはずで、調査開始のデータを見て、特定の食品を多く摂取していた人と、摂取していなかった人を比較する。
 特定の食品を多く摂取していた人が脳卒中や痴呆症を多く発症していれば、その食品がリスクを上げる、逆に多く摂取した人の発症が少なければ、リスクを下げているかもしれないことになる。

 研究チームはフラミンガム心臓研究のデータから、脳卒中で45歳以上の(2888人平均年齢62歳;男性45%)、痴呆症で、1484人の(平均年齢60歳;男性46%)参加者を10年間調べて、人工甘味料入り飲料と病気のリスクを調査した。
 その結果、人工甘味料を含む飲料を「毎日1杯以上飲む人」は、「全く飲まない人」と比べ、脳卒中(脳梗塞)のリスクが2.96倍に、認知症(アルツハイマー型)になるリスクが2.89倍になり、一方で砂糖入りの(人工甘味料未使用)飲料ではこの様な関係は見られなかったというもの。

 人工甘味料が健康に悪影響を与えると主張する人たちは、この研究結果をみて鬼の首を取ったようになっているが・・・・・・。
 しかし、この研究で判ったことは、人工甘味料入り飲料を飲んだ人は、飲まなかった人に比べて脳卒中や痴呆症のリスクが上がったという結果だけで、人工甘味料が脳卒中や痴呆症のリスクをためているかの「因果関係」は不明と言うこと。
 高血糖が痴呆症や脳卒中のリスクを上げることは判っている。
 糖尿病と認知症の「危険な関係」 血糖値が高いと認知症リスクが上昇  
 糖尿病と脳卒中 
 高血糖を自覚している人が高血糖を気にして、人工甘味料入りの飲料を飲んでいただけで、実際の原因は高血糖であった可能性も否定出来ない。
 この研究だけでは、人工甘味料が痴呆症、脳卒中のリスクを上げていたという立証は出来ていなく、元々痴呆症や脳卒中のリスクの高い人が人工甘味料入り飲料を飲んでいただけであった可能性もある。
 研究チームも、人工甘味料が本当に脳卒中や認知症のリスクを高めているのか、その『因果関係』を示すことはできないとしている。

 Because our study was observational, we are unable to determine whether artificially sweetened soft drink intake increased the risk of incident dementia through diabetes mellitus or whether people with diabetes mellitus were simply more likely to consume diet beverages.

 我々の研究は観察によるものであり、人工甘味料使用のソフトドリンク摂取が糖尿病による認知症のリスクを増加させたのか、それとも糖尿病患者が単にダイエット飲料を摂取する可能性が高かったのかを判断できない。

 そもそも、この研究だけでは人工甘味料と痴呆症などの因果関係は立証できていない。
 先ほども述べたように高血糖の人が、血糖値を気にして人工甘味料入りの飲料を飲んでいただけということも大いに考えられる。
 しかしながら、渡辺センセは原因は人工甘味料であると示唆してる。

 なぜ脳卒中やアルツハイマー型認知症の発生率が高くなったのかについては不明ということですが、砂糖入り飲料では影響が認められなかったことから、合成甘味料が脳の血管や組織になんらかの悪影響をもたらしたことが考えられます。

 一口に人工甘味料と言っても、アスパルテームの様に体内で代謝され利用されるものもあれば、アセスルファムカリウムの様に吸収はされるものの、そのまま排泄されるものも有る。
 マウスに人工甘味料の一つであるサッカリンを投与すると、腸内細菌叢の分布が変化し、糖負荷試験で耐糖能異常を認めたとする研究もある。
 人工甘味料といってもその体内動態は様々である。、
 人工甘味料の摂取が認知症や、脳卒中との因果関係があるかどうかを立証するための試験が必要であろうし、因果関係があるとすれば具体的にどの人工甘味料が関係するかの研究も必要であろう。

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