南清貴センセの妄想記事「野菜」

 

 南清貴センセによると、日本の野菜が栄養不足だそうで・・・・。
 『日本の野菜が栄養不足になってしまった“深刻な理由”』

 筆者に言われなくても、「野菜が大事だということくらいわかっている」という方もいるとは思いますが、その野菜の質が低下しているということをご存じの方は、あまり多くありません。
 レタスはレタス、キャベツはキャベツ、大根は大根、人参は人参。昔から同じじゃないかとお思いの向きもあるでしょうが、実態はそうではありません。
 野菜の栄養価は、ここ数十年で、相当落ちています。つまり、野菜が栄養不足に陥っているのです。

 この、日本の野菜の栄養不足というのは、新旧の『日本食品標準成分表』の値を単に比較して不足していると言っている場合が多い。
 たとえば下記のサイト
 Healthy Stand ヘルシースタンド【野菜の栄養価、昔と今ではこんなに違う!?】
 1982年の4訂版日本食品標準成分表と2000年の5訂版日本食品標準成分表の数値を比較して、栄養が低下しているとしている。

 野菜100グラムあたりのビタミンCの含有量が20年前と比べてニンジンは7mgから4mgに、トマトは20mgから15mg、ほうれん草は65mgから35mgに低下していることがわかりました。

 この数値だけ見るとビタミンCが低下している様に見えるが、4訂版日本食品標準成分表と5訂版日本食品標準成分表では、データの採り方が異なっている。
 4訂版日本食品標準成分表の編集された1982年当時は、野菜はその野菜の本来成育する時期、言わば旬の野菜が生産が中心であったが、その後ハウス栽培、水耕栽培等の発達で通年生産される野菜が増えた。
 4訂成分表は、旬の野菜の栄養データであったが、5訂栄養表(2000年)では実態に併せて、「年間を通じて普通に摂取する場合の全国的な平均値を表わす値」が記載される様になった。
 野菜の栄養成分は、その野菜の旬の時期が一番多くなる事が判っている。
 早い話、4訂版日本食品標準成分表では言わば「最大値」、5訂版日本食品標準成分表では「平均値」が記載される事になった。
 通年の平均値となったため、見かけ上の値は下がるが、旬の野菜の栄養価が変化しているわけでは無い。
 野菜の旬と栄養価 ~旬を知り、豊かな食卓を~  

 旬の時期とそれ以外で栄養価が大きく異なる野菜にホウレン草がある。
 5訂と7訂の栄養表を比べると興味深い。
 五訂増補日本食品標準成分表  
 七訂日本食品標準成分表2015年版 
 5訂ではでホウレン草の生葉のビタミンCは、100g当たり35mgとなっているが、7訂では次の通りとなっている。
  ほうれんそう葉 通年平均 生:35mg 
  ほうれんそう葉 夏採り 生 :20mg
  ほうれんそう葉 冬採り 生 :60mg
 通年平均では35mgで、5訂と同じだが冬採りでは60mgと4訂の65mgとほぼ同じになっている。

 また、分析方法が異なってる事も値が異なる原因となる。
 栄養価を分析する際に、本来目的とする物質以外にも反応する物質が存在する場合があり、その分値が見かけ上大きくなってしまう。
 対象以外の物質の影響を排除できれば、より正確な値が分析できることになる。
 改訂ごとに栄養成分の分析方法が見直されているが、それを考慮せずに比較しても無意味ということになる。
 日本食品標準成分表の改訂に伴う野菜中のビタミンC収載値の変動に対する分析法の影響 
 この論文は、ビタミンCをターゲットに分析方法の違いによる、分析結果への影響を指摘していて、成分表に収載されている値のみを用いて出された「野菜の栄養価が昔に比べて減少している」とする情報の解釈には慎重な対応が求められる、としている。
 

 また、品種改良に伴い栄養価の減少した作物もある。
 しかし、トマトだけは変わりました。今日、店頭の主流である桃太郎種の持つ甘みが、ビタミンCを少なくしました。
 昔の酸味あるトマトのビタミンCは40mg、甘みトマトのビタミンCは15mgほどに減少しています。
 これは消費者が、店頭で甘い品種を選択したためです。
 野菜の旬と栄養価 ~旬を知り、豊かな食卓を~ 

 結論として旬の野菜に限れば、南センセの主張する様な『日本の野菜が栄養不足になってしまった』訳では無い。
 ま、これは大手の新聞でも改訂ごとのデータの採集方法や分析方法を無視し、単に数値の違いのみで栄養が減ったと報道してしまうのだから仕方が無いのかもしれない。
 結果として、旬の野菜に限定すれば、南センセの主張する様な栄養の大きな低下は無い。
 栄養価が下がった様に見えるのは、5訂食品標準成分から平均値に変更になった、分析方法が変わった、品種が変わった等の理由で栄養価が下がった様に見えるだけである。
 栄養価を重視するなら、旬の野菜を中心に摂取すれば良いだけである。
 問題は栄養価では無く、消費量の方。
 農林水産省の資料でも、細かな増減はあるが消費量は減少傾向にあり、こちらの方が余程問題であろう。

 化学肥料にしがみついている人たちは、ある意味、農薬や化学肥料のメーカーと、それを販売する企業に体よく騙され、洗脳されているだけです。

 これは、農家の倅としては看過できない。
 農林水産省発表している資料に次の資料がある。
 有機農業をめぐる事情   
 この中で、新・農業人フェアにおける就農希望者の意識調査で、有機農業をやりたい28%、興味があるが65%であると言う結果であった。 
  一方で、有機農業に取り組んでいる農家数は、有機JASが約4000戸(0.2%)、有機JAS以外が8000戸(0.3%)で合計でも0.5%であった。
 作付面積でも有機JASで0.2%である。
 農林水産省は、おおむね平成30年度までに我が国の耕地面積に占める有機農業の取組面積割合を倍増(0.4→1.0%)させる目標を設定としているが、まぁ机上の空論であろう。
 国内における有機JASほ場の面積の推移  
 なぜ国内の有機栽培が増えないかというと、農家がすべてのリスクとコストを被らなければ無いからである。

 たとえば、無農薬栽培。
 日本の様に農地が隣接し、高温多湿では無農薬は難しく、無農薬で大規模な病害虫が発生したら収入の激減に直面する。
 有機肥料に関しても、南センセの言っていることは間違いでは無い。
 有機肥料は購入するにしろ、自家で確保するにも、コストも手間もかかり、コスト面では化成肥料の方が安上がり。
 そして、多くの農家は高齢化、人手不足に直面している。
 アルバイトを雇おうにも、高齢化、少子化で雇える人が居ないのが現状である。
 有機農業をやりたくても出来ない農家が大多数というのが現状であり、有機農業に取り組む農家は奇人変人扱いされかねないのも現状である。
 この様な悪条件下で有機栽培を手がける農家には頭が下がる。

 都内の大手百貨店での光景だが、青果売り場で購入したキャベツに小さな虫食い穴に対して、猛クレームを付けている客を目撃したことがある。
 農薬は嫌だが、野菜の虫食いも嫌という勝手な消費者も多い。  その点、外国はおおらかである。
 ドイツのオーガニックマーケットで見かけたのは、虫食いが有ったり変形した野菜を普通に売っていて、買う方も平然と買っていく。  売る方も買う方も、オーガニック野菜が虫食いになるのは当然といった認識がある。
 日本における有機栽培は、農家だけではどうにもならない状況下にある。
 肥料や化学肥料メーカーに洗脳されてるだけと罵倒しても何もならない。

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