小倉正行センセの針小棒大、煽り記事「アフラトキシンM1」

 

 フリージャーナリストの小倉正行センセが相変わらず、デタラメとは言わないが、針小棒大記事を書いている。
 『発がん性あるカビ毒汚染の牛乳・乳製品が流通…輸入穀物のアフラトキシン無検査の危険性

 アフラトキシンはカビの生成物であり、代表的な産生種はアスペルギルス・フラブス (Aspergillus flavus)はアフラトキシンB1、B2、アスペルギルス・パラシチクス(Aspergillus parasiticus)はアフラトキシンB1、B2、G1、G2を作りだす。
 同じアスペルギルス属菌で、醸造に使われるアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae ニホンコウジカビ)もアフラトキシンを産生するのではないかと疑われた事もあったが、アフラトキシンを作り出す機能が無いことが確認されている。
 最も毒性の強く、産生量の多いのがアフラトキシンB1であち、以前のアフラトキシンの規制の対象ははアフラトキシンB1であった。
 食品中のアフラトキシンの規制値はB1、B2、G1、G2の合計で10μg/kg未満となっていて、10μg/kgを超えると食品衛生法違反となり回収の対象となる。
 アフラトキシンM1は飼料に含まれるアフラトキシンB1の代謝物で、動物実験ではアフラトキシンB1の毒性の約1/10と言われている。

 しかし、日本のアフラトキシンM1基準値は、EUに比べても緩いものである。
 EUでは、生乳について0.05μg/kg、調製粉乳について0.025μg/kg、乳幼児向け特殊医療目的の栄養食品について0.025μg/kgとの基準値としており、日本の基準値の10倍から20倍厳しい基準値を設定している。
 EUは、「AFM1の摂取量は合理的に達成可能な範囲でできる限り低くすべき」との立場を表明している。

 2010年度に日本で行われた乳児用調製粉乳のアフラトキシンM1汚染実態調査では、乳児用調製粉乳の粉末から0.177μg/kgのアフラトキシンM1が検出された。
 EUの基準値では流通が認められないレベル汚染であった。
 また、2003年度に行われた生乳の調査でも0.043μg/kgのアフラトキシンM1汚染が判明しており、これは、EU基準値をギリギリで満たすレベルであった。
 やはり、EU並みの基準値を導入して規制を強めるべきである。

 各国のアフラトキシンM1の規制値は次の通り。
 
 国際基準のコーデックスが0.5μg/kgであり、日本やアメリカはコーデックスの基準値を採用していて、日本だけが基準が甘いと言うわけでは無い。
 実際に市販の牛乳や生乳の濃度分布は次の通り。
  
 市販牛乳では208検体中207検体から検出され、最大値が0.029μg/kg、平均濃度±標準偏差0.009±0.0004μg/kgであった。
 生乳では299検体中296検体から検出され、最大値が0.043μg/kg、平均濃度±標準偏差0.0074±0.0047μg/kgであり、全てEUの基準値をクリアしている。

 小倉センセが矢鱈と炎上記事というか煽り記事を書いている。
 >2003年度に行われた生乳の調査でも0.043μg/kgのアフラトキシンM1汚染が判明しており、これは、EU基準値をギリギリで満たすレベルであった。
 >やはり、EU並みの基準値を導入して規制を強めるべきである。

 この調査は299検体中すべてがコーデックス基準より厳しいEUの基準をクリアしていて、安全性に問題が無いと言うことを示している。

 粉乳でもきわめていい加減な事を書いている。
 >2010年度に日本で行われた乳児用調製粉乳のアフラトキシンM1汚染実態調査では、乳児用調製粉乳の粉末から0.177μg/kgのアフラトキシンM1が検出された。
 >EUの基準値では流通が認められないレベル汚染であった。

 小倉センセが引用しているのは食品安全委員会の『かび毒評価書』であり、この様な事が書かれている。

 2010 年度に食品・添加物等規格基準に関する試験検査として乳児用調製粉乳の汚染実態調査が実施された。
 AFM1が検出されたのは108検体中36検体(33%)で、検出限界以上が14 検体、定量下限以上は2 検体であった(定量下限は0.12μg/kg、検出限界は0.04μg/kg)。
 調乳(粉末乳14 g を100 mL に溶解)として換算すると、最高値は0.025μg/kg (粉末として0.177μg/kg)、全体の平均値は0.002μg/kgであった。
 かび毒評価書 乳中のアフラトキシンM及び飼料中のアフラトキシンB 

 乳児用調製粉乳の汚染実態調査の結果、AFM1が検出されたのは108検体中36検体(33%)で、調乳として換算すると、最高値は0.025μg/kg 、全体の平均値は0.002μg/kgと、生乳あるいは牛乳中のAFM1濃度より低く、EU の最大基準値0.025μg/kgを下回る値であった。

 EUの調製粉乳の基準は使用時の状態に溶解した状態での数値であり、粉末として0.177μg/kgは溶解した状態では0.025μg/kgで、ぎりぎりではあるがEUの基準値をクリアしている。
 このかび毒評価書の食品健康影響評価項目に次の様なことを記述してある。

 これらの値から、モンテカルロ・シミュレーション法により求めたAFM1生涯総摂取量に基づいて発がんリスクを推計した結果、HBsAg 陽性者を含む日本人全体の発がんリスクは、日本の人口当たり年間一人に満たなかった。
 この推計は、生涯における乳及び調製粉乳の摂取量等について、不確定要素を含んでいるものの、日本の現状における乳中AFM1 の発がんリスクは極めて低いと考えられた。

 現状ではアフラトキシンM1による発がんリスクはきわめて低いと明言している。
 ちなみにこれらの調査から10年以上経過しているが、その事に関して2015年5月27日開催の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会の議事録に次の様な記述がある。

 ○倉根委員 13ページのM1の実態が平成15年度のデータで299というのだけれども、今は平成27年で、大分たっていますよね。そのときのデータによって最大値が0.043μg/kgと。そのときはそうだったのでしょうが、近年、余り変わっていないという、そういうデータはあるのですか。
 ○事務局 こちらには記載しておりませんが、一度、乳肉水産部会で了承が得られたときから、AFM1についての試験法を開発する目的で、現在流通している食品についても、どれぐらいの汚染実態なのかは検査しております。
  こちらには載せていなくて大変申し訳なかったのですが、それも検出値としては非常に低くて、これまでの検出事例報告とほとんど差はないという状況にはあります。
 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会議事録 

 調査結果は発表していないが、その後の検査で大きな変化はないとしている。

 しかし、飼料用トウモロコシは輸入時のアフラトキシン検査はなされていない。
 政府は配合飼料になった時にアフラトキシン検査をするので問題ないとしているが、過去に飼料用トウモロコシのアフラトキシンB1汚染は、70ppb(1989年)、81ppb(1998年)、68ppb(2002年)と高濃度汚染していたことが明らかになっている。
 やはり、輸入時に検査をして基準値を超えるものの輸入はストップすることが、牛乳・乳製品の安全性を保証するためには必要といえる。

 飼料中のアフラトキシンの基準値は次の通り。

 日本の基準値が特に甘いと言うわけでは無い。
 飼料のアフラトキシンの検査結果は次の通り



 かび毒評価書では次の様なことを記述してある。

 1989 年から日本で実施されている配合飼料等の汚染実態調査の結果、農林水産省が配合飼料中のAFB1 について暫定的に指導基準値を定めている現状においては、年ごとの最高値に変動があるものの、配合飼料中の平均AFB1 濃度は指導基準値に比して低いレベルを維持していた。
 日本で実施された食品における汚染実態調査の結果、配合飼料中のAFB1 濃度が指導基準値以下である現状においては、畜産物にAFB1 を含むアフラトキシン類の残留は認められなかった。
 以上の知見に加え、AFB1 を投与した家畜及び家きんへのAFB1 及びその代謝物の組織等における残留に関する試験データより、配合飼料中AFB1 濃度が現行の指導基準値以下であれば、乳中のAFM1も含め、畜産物中のAFB1代謝物残留によるヒトへの健康影響の可能性は極めて低いと考えられた。

 現状では飼料に含まれるアフラトキシンでの健康被害のリスクはきわめて少ないとしている。

 飼料用のトウモロコシはアメリカからの輸入が多いが、アメリカでは輸出するトウモロコシは全ロット検査し、総アフラトキシンが0.02mg/kg以下のロットのみアメリカ政府の発行する検査証明書を添付し日本に輸出される。
 国内でも独立行政法人農林水産消費安全技術センターがモニタリング試験を行っているし、飼料メーカーも自主検査を行っていて無検査という訳では無い。
 飼料中のかび毒に関するリスク管理(アフラトキシンを事例に)
 モニタリング試験結果の公表 

 小倉センセ、『かび毒評価書』を持ち出したが、自らの都合のよい事だけ抜き出すなど、トンデモ系センセ連中と同じ手口である。
 『牛乳や乳製品などのアフラトキシン汚染の恐怖』などのサブタイトルも付いているが、現状では乳製品のアフラトキシン類での健康リスクは低く、小倉センセの記事は煽り記事、炎上商法と言って良いであろう。

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