南清貴センセ、たまにはマトモ?「糖質制限食」

 

 南清貴センセが、たまにはマトモな記事を書いているかと思ったら、相変わらずのトンデモ系記事であった。
 糖質制限ダイエットが体と脳を壊す…炭水化物を“正しく”食べることが重要  
 こんなことを書いている。

 「ここのところ、急にヘモグロビンA1cが下がったんだよ」と、うれしそうに言ったことです。
 まず筆者が思ったのは、こういう中年男性でもヘモグロビンA1cなんて言葉を日常で使うんだ、ということでした。
 次いで、急にヘモグロビンA1cが下がるというのは、けっこう危険なことなのだが、それを今、言ってあげたほうがいいのだろうか、という思いがよぎりました。

 ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、赤血球のタンパク質であるヘモグロビンが糖化した物質である。
 ヘモグロビンの寿命は約120日で、HbA1cはさかのぼって約1.5ヶ月の血糖の平均値とされる。
 HbA1c
  ~5.5%   正常域
  5.6~5.9%  正常高値
  6.0~6.4%  境界域
  6.5%以上  糖尿病
 直前の食事に影響される空腹時血糖値と違いヘモグロビンA1cは、過去1.5月程度の平均値で食事に直接影響されないため、健康診断でもヘモグロビンA1cが影響される場合が増えた。、
 終末糖化産物類(AGEs)はタンパク質と糖が結合した物質のことを言い、強い毒性をもち、AGEsが蓄積すると心筋梗塞、脳梗塞、白内障など、前進の健康に影響を及ぼす。
 ヘモグロビンA1cはヘモグロビンが糖化して、AGEヘ変化する一歩手前の中間糖化物質である。
 AGEは何種類もあるが、高血糖が続くとAGEが大量に蓄積することになるため、ヘモグロビンA1cの値は低いのが良い事になる。

 糖質摂取で問題になるのが、接種した栄養素が血糖に与える影響にある。
 
 タンパク質や脂肪に比べ、糖質の摂取は急速に血糖値を上昇させる事にある。
 ヒトが吸収できる糖質は、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトースの様な単糖類でないと吸収できず、摂取した糖質は酵素により消化され、単糖になり吸収される。
 主な糖質の消化は次の通り
 デンプン
  デンプン(アミラーゼ)→マルトース(マルターゼ)→グルコース
 砂糖(スクロース)
  スクロース(スクラーゼ、サッカラーゼ)→グルコース+フルクトース
 乳糖(ガラクトース)
  ガラクトース(β-ガラクトシダーゼ)→ガラクトース+グルコース
 単糖のグルコース、フルクトースや2糖の砂糖などは短時間に吸収される。
 消費仕切れなかった糖質はグリコーゲンや脂肪に変換される。
 とくにフルクトースは血糖に影響を与えないと言われるが、効率よく中性脂肪に変換されるとされる。

 そんなわけで、言い争いを避けるために、その男性には言いませんでしたが、実は短期間にヘモグロビンA1cを急激に下げてしまうと、網膜症を悪化させる危険性があります。
 そして、もしこの男性が糖尿病による網膜症で、誰かに勧められて糖質制限ダイエットに取り組み、その結果ヘモグロビンA1cが急激に下がったというのであれば、話は難しい方向にいきかねません。

 『生兵法は大怪我のもと』ですよ~!!
 糖尿病網膜症の予防や進行防止には血糖コントロールが重要になる。
 ただ、南センセの言っているように、急激な血糖コントロールが網膜症を一時的に悪化させることは判っている。
 下記のケースが急激な血糖コントロールにより、網膜症が悪化しやすいとされる。

 1.糖尿病網膜症で糖尿病が発見されるなど、無治療期間が長い場合
 2.血糖コントロール不良期間が長い場合
 3.腎症の進行により透析導入が間近、あるいは透析導入直後の場合
 4.活動性肝疾患、血液疾患、感染症などの全身疾患を有する場合
 5.高血圧あるいは起立性低血圧を有する場合
 6.妊娠中
 7.高齢者 など
 糖尿病黄斑浮腫ドットコム 

 上記のようなケースが血糖コントロールによる網膜症の悪化しやすいとされ、HbA1cの改善度は1ヵ月に0.5~1%を超えないようにすることが推奨されている。
 特段の問題が無い限り、HbA1cは正常域にコントロールすることが望ましいことになる。
 しかし、HbA1cの改善度が1ヵ月に0.5~1%というのは相当な努力が必要であろう。

 2019年のアメリカ糖尿病学会が糖質制限を推奨という報道があった。
 アメリカ糖尿病学会糖尿病学会コンセンサスレポート 

 Carbohydrate Eating Patterns
 Low-carbohydrate eating patterns, especially very low-carbohydrate (VLC)eating pattern have been shown to reduce A1C and the need for antihyperglycemic medications.
 These eating patterns are among the most studied eating patterns for type 2 diabetes.
  One metaanalysis of RCTs that compared lowcarbohydrate eating patterns (defined as #45% of calories from carbohydrate) to high-carbohydrate eating patterns(defined as .45% of calories from carbohydrate) found that A1C benefits were more pronounced in the VLC interventions (where ,26% of calories camefrom carbohydrate) at 3 and 6 monthsbut not at 12 and 24 months (110).

 炭水化物の摂食パターン
 低炭水化物の食事パターン、特に非常に低炭水化物(VLC)の食事パターンは、A1Cと血糖降下薬の必要性を減らすことが示されている。
 これらの食事パターンは、2型糖尿病の最も研究されている食事パターンの1つでである。
 低炭水化物食と高炭水化物食の比較したRCTの1つのメタ分析で、低炭水化物食(炭水化物からの摂取カロリーが]45%以下)は高炭水化物食(炭水化物からの摂取カロリーが45%以上)との比較で、A1Cの有益性は3ヵ月および6ヵ月のVLC介入(炭水化物からのカロリーが26%未満)でより顕著であったが、12ヵ月および24ヵ月では顕著でなかった。

 短期的な効果はあるが長期的な効果ははっきりしないとしている。
 これは、HbA1cが7%以上で、合併症のリスクが高い患者に対して、低炭水化物食はHbA1cを下げ、投薬の減薬を目指すといったところで有ろう。

 2017年にランセットオンラインに、高炭水化物食は死亡リスクを上昇させるという論文が載った。
 Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents    
ここに図 
 糖質制限を推奨している江部康二センセなどは、鬼の首を取ったような事を述べている。
 「糖質制限」論争に幕?一流医学誌に衝撃論文」 

 なお、炭水化物は「糖質+食物繊維」ですから、「糖質の摂取増加で死亡リスク上昇」と言い換えてももいいでしょう。
 このことは一般の人には衝撃的かもしれませんが、糖質制限食を推進してきた私からしますと、「日頃の主張がとうとう証明された」という印象です。

 ところがこの論文、総摂取エネルギーが60%を超えると死亡率が上昇するとしているが、低炭水化物が良いとはしていない。
 この論文には次の様な記述がある。

 Importantly, a certain amount of carbohydrate is necessary to meet short-term energy demands during physical activity and so moderate intakes (eg, 50–55% of energy) are likely to be more appropriate than either very high or very low carbohydrate intakes.

 重要なことは、活動中の短期的なエネルギー需要、および炭水化物の適度な摂取(例えば50から55 %エネルギー)は、炭水化物の摂取量が非常に多い、または非常に少ない事より適切である可能性が高い。

 要は、炭水化物の中程度の摂取(総エネルギー摂取量の50~55%程度が最適といっている訳である。
 江部康二センセは、ランセットの論文を基にしながら、ランセットの論文の推奨を無視していて、普通はこういうことを「我田引水」と言われる。

 米、小麦粉、砂糖等の植物性食品は、バターや肉類などの動物性食品より安価であり、発展途上国はこの傾向にある。
 日本の典型的な食事は正にこの通りであり、大量の米飯を塩分の濃い副食や汁物で食べていた。
 戦前までご飯は大盛りで食べるのが普通だった  
 食堂での丼飯は1合5勺であり、栄養としては乏しい白米の米飯大量に、漬け物などの塩分の濃い副食や汁物で食べていたわけである。
 その結果、戦前の寿命は平均50歳を下回っていた。
 第22回生命表について 
 これによると昭和10年代の0歳の平均余命は、男46.92歳、女4993歳であり、男女とも0歳の平均余命が50歳を超えるのは戦後であり、ランセットの論文はこの様なケースを指摘していると思われる。

 江部康二センセなどは、糖質の摂取が肥満や老化の原因であり、糖質制限によって肥満を防ぎ、老化を遅らせるばかりでなく糖尿病などのさまざまな病気を予防できると主張している。
 一方、極端な糖質制限食がしぼうりすくを上昇させるという研究もある。
 Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis
 45~64歳の約1万5000人のアメリカ人を面接し、食事摂取頻度を調査して25年間追跡し、炭水化物の摂取割合別に死亡者数を調査した研究である。
 この研究によると摂取エネルギー中、糖質から50~55%程度摂取した場合が死亡率が低く、それより多くても少なくても死亡リスクが上昇するという研究である。
 
 むしろ糖質の摂りすぎより、摂取量の少ない方がハイリスクとなっている。
 ま、「過ぎたるは及ばざるがごとし」ということわざ通りであろう。

 総摂取エネルギーの50%程度を糖質から摂取し、食物繊維も豊富に摂るのが現実的であろう。
 前出のアメリカ糖尿病学会糖尿病学会コンセンサスレポートでも、糖尿病患者は最低でも1000kcalあたり14gの食物繊維の摂取を勧めている。
 要注意なのが食物繊維。
 食物繊維といえば野菜や果物と言ういことになるが、果物は要注意。
 果物に含まれる糖分はフルクトース(果糖)で、摂取後のグルコースの上昇が遅いので、健康的な糖だと考えられた時期もあったが、中性脂肪などに変換されやすく、最近ではこのフルクトース自体が、肥満や生活習慣病を引き起こす張本人ではないかと考えられるようになった。
 飲料水に用いられる異性化糖(食品表示は果糖ブドウ糖液糖)が問題にされるのも、グルコースもフルクトースも単糖で吸収が早く、血糖値を急激に上昇させるため。
 フルクトース毒性 
 果物類は品種改良で糖度の高い物が増えているため、食べ過ぎは良くない。
 四群点数法は、食品を栄養的な特徴によって4つのグループに分け、バランスのよい食事がとれることを目的にした食事法で、80kcalを1点とする。
 e-ヘルスネット 
 りんご半分・バナナ1本・いちご16粒が約80kcal(1点)に相当し、過剰に摂取すると果糖の過剰摂取により中性脂肪の増大や肥満の原因となる。
 摂取エネルギーの50%程度を糖質とし、色々な食品をバランス良く摂取するのがベストという事で有ろう。
 病気の食事療法であれば、管理栄養士などの専門家の指導で行うべきである。
 
 トンデモ系の南センセとしては、まぁマトモな記事と思っていたらやはりトンデモ系であった。
 糖質制限ダイエットと人工甘味料で、わざわざ自分の体を壊す“悪魔のサイクル”

 加えてアスパルテームは、脳障害をもたらす可能性もあると指摘されてもいます。
製造企業などから資金的援助を受けずに独立した研究をしている機関の94%が、アスパルテームは、うつ病や頭痛などの有害作用を引き起こすことを伝えています。

 アスパルテームは、化学的にはアスパラギン酸とフェニルアラニンから構成されていますが、フェニルアラニンに含まれるメチル基が分解されてメタノールを形成します。
 これが体内で、有害物質であるホルムアルデヒドに変換されますが、人体ではこれを無害化できないため、このホルムアルデヒドが網膜損傷を引き起こすのです。
 最悪のケースとしては失明することもあり得ます。
 メーカーは当然のことながら、「微量であるから健康に影響はない」と言います。しかし、それは長年にわたっての使用で得られたデータではありません。
 したがって、いつの日か、その安全性が覆ることも視野に入れなければならないと、筆者は考えます.

 南センセの様なトンデモ系の人達は、ご自身に都合の良い研究や論文を金科玉条のごとく尊ぶ人々が多い。 
 アスパルテームの公的機関による最新の評価としては、欧州食品安全機関(EFSA)が2913年12月に再評価を行っている 
 これは2009年1月20日までに認可された添加物すべてを再評価するプログラムの一環である。
 その結果、白血病、リンパ腫などの原因となることを否定している。

 ヒトでの安全性の懸念の可能性に関するパネルの結論は次のとおりである.
  ・研究は、妊婦の早産、白血病、脳腫瘍、脳・リンパおよび造血系(血液)がんを含む、あらゆるがんリスク増加とアスパルテーム摂取の関連を示唆しない。
  ・証拠の重みはアスパルテームの摂取が行動や認知機能に影響がないことを示唆している。
  ・アスパルテームの摂取が発作の原因となるという証拠はない。
  ・アスパルテームの摂取が頭痛の原因となる説得力のある証拠はない。
  ・証拠の重みはアスパルテームがアレルギー反応に関係しないということを示している。
  ・アスパルテーム由来のメタノールは、全ての摂取源由来のメタノールへの総暴露のうちのごくわずかである。
  ・全体的な食事暴露へのアスパルテームの分解物(フェニルアラニン・メタノール・アスパラギン酸)の寄与は低い。
 更に、入手できるデータはアスパルテームの遺伝毒性の懸念を示さない(つまり細胞中の遺伝物質であるDNAに影響しない)。
 アスパルテームに関するFAQ、食品安全委員会 

 EFSAは製造企業では無く、欧州連合の専門機関の一つで、公的機関である。
 その公的機関が、脳障害や頭痛の原因であるという根拠は無いとしている。
 メタノールで失明することもあると脅し文句があるが、アスパルテームによるメタノールの暴露は、食材由来のメタノールによる暴露のごく僅かとしていて、アスパルテームによる失明などあり得ないことになる。

 しかし最近になって、研究が進み、スクラロースが体内で代謝され、脂肪細胞に蓄積することがわかったのです。
 ラットを使った実験では、肝臓に明らかな変性が見られ、毒性の影響があることが確認されています。
 スクラロースは腸内細菌を 50%減らすこともわかっており、腸内 pH を上げてしまうことで、腸内菌叢を不健康的な状態に向かわせます。
 食欲調節機能に支障をきたし、結果的に体重を増加させることにもつながっていきます。
 スクラロースは安価に入手できるため、惣菜などの甘み付けにも使われることが多いのですが、実はスクラロースは高温になると有害物質であるクロロプロパノールを生成することも指摘されています。
 クロロプロパノールは塩素化合物の一種ですが、アスパルテームからも検出され、発がん性があるともいわれています。

 >ラットを使った実験では、肝臓に明らかな変性が見られ、毒性の影響があることが確認されています。
 安全性評価で肝臓障害というのはみられないが・・・・
 スクラロースの指定について  

 >スクラロースは腸内細菌を 50%減らすこともわかっており、腸内 pH を上げてしまうことで、腸内菌叢を不健康的な状態に向かわせます。
 これはラットを使った実験で、1.1~11mg/kgの大量投与によるものである。
 スクラロースは腸内細菌を 50%減らすとは書かれていないが。
 plenda alters gut microflora and increases intestinal p-glycoprotein and cytochrome p-450 in male rats.  
 サッカリンやスクラロースが腸内細菌叢を変化させるということだけで、人間の健康への悪影響を及ぼす十分な証拠はないという研究もある。
 Effects of Sweeteners on the Gut Microbiota: A Review of Experimental Studies and Clinical Trials  
 ちなみに平成27年度のマーケットバスケット調査によると、日本人の1人あたりの平均摂取量は0.825mgである。
 スクラロースの一日許容摂取量(ADI)は、日本やEUは15mg/kg、アメリカは5mg/kgとなっている。
 平成 27 年度マーケットバスケット方式による甘味料の摂取量調査の結果について  
 日本やEUの基準であれば、体重58.6kgのヒトであれば、1人あたりの許容摂取量は879mgであり、対ADI比としては0.09%、アメリカの基準でも0.29%に過ぎない。

 >実はスクラロースは高温になると有害物質であるクロロプロパノールを生成することも指摘されています。

 ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、スクラロースを含む食品を、120℃を超えて加熱を続けると熱分解し塩素を放出し、有害な塩素化合物が生成する可能性が有ることを公表した。 
 ただし、現時点で最終的な結論を導き出すにはデータが不十分であり、スクラロースを含む食品が120℃を超えて加熱された際に毒性反応の副産物として生成される物質及び量の詳細は不明確としている。
 欧州食品安全機関(EFSA)は2020年12月を目処に、スクラロースの再評価を進めている。 
BfRは、結論となるリスク評価結果が入手可能となるまでは、スクラロースを含む食品を、焼く、高温で揚げる、ローストする際に達する温度まで加熱しないよう、またスクラロースは加熱直後に添加するよう助言している。 
 食品安全関係情報詳細  

 120℃を超える温度で加熱し続けると有害な塩素化合物が生成する可能性があるという情報であり、あくまで可能性であり、生成される物質や量は不明としている。
 リスク評価が定まるまで、スクラロースを含む食品を、ローストしたり揚げる際に、分解する可能性の有る温度まで加熱しないように、または加熱後に添加する様にというアドバイスである。

 南センセ、たまにはマトモな事を書くと思ったら、やはりトンデモ系であった。

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