BCGワクチンは新型コロナウィルス(COVID-19)に有効??

   2020/05/01

 現在、世界中に新型コロナウィルス(COVID-19)が蔓延し人々を恐怖に陥れている。
 日本でも4/25時点で感染者数は13,182人、死亡者数348人とされている。
 そのような状況下で新たな説が浮上している。
 結核のワクチン、BCGワクチンがCOVID-19の感染防止や重症化防止に効果があるとの説である。
 最近は日本でも感染者が急増してるが、欧米に比べれば感染者、特に死者数は少ない。

 4/2のデータではあるが、Akshat Rathi氏のデータでも日本だけでなく、シンガポールや香港も感染者の増加はなだらかである。

@AkshatRathi

 ここで出てきたのが、BCGワクチンとの罹患率の相関性である。
 Correlation between universal BCG vaccination policy and reduced morbidity and mortality for COVID-19(普遍的なBCGワクチン接種方針とCOVID-19の罹患率および死亡率の低下との相関) 
 BCGワクチンの接種は、呼吸器感染症に対して幅広い保護をするとの報告がある。
 BCGワクチンの定期接種が無い国(イタリア、オランダ、アメリカ等)は、長期間ににわたるBCGワクチンの定期接種と比較して、深刻な影響を受けていることがわかった。
 BCGワクチンの定期接種がおくれた国(イラン、1984年以降)は死亡率が高く、BCGワクチンが予防接種を受けた高齢者を保護するという考えと一致した。
 BCGワクチン接種により、報告されたCOVID-19の症例数が減少した事がわかった。
 といった内容である。

The BCG World Atlas: A Database of Global BCG Vaccination Policies and Practices 

<a href=”https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11043.html” rel=”noopener noreferrer” target=”_blank”> 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和2年4月25日版)</a>


 国別の罹患率とワクチン接種をしている国を見比べると、確かに定期接種を行っている国の罹患率、死亡率に差が出ている。
 ただし、BCGワクチンがウイルス感染に対して有効であるという研究は以前から有った。
 「BCG Vaccination Protects against Experimental Viral Infection in Humans through the Induction of Cytokines Associated with Trained Immunity(BCGワクチンはヒトの実験的ウイルス感染を免疫訓練で誘導できるサイトカインを通して防御する)
 今回着目されたのはスペインとポルトガルの罹患者数、死亡者数である。
 スペインとポルトガルは隣接していて、風土、生活習慣も比較的似ているが、罹患者数、死亡者は大きな差が出ている。

2020/4/25時点

 スペインの人口はポルトガルの約4.4倍であり、分母が違うので単純に比較できないが、人口差を考慮しても罹患者数はポルトガルの約2.2倍、死亡者数も約6倍でスペインの方が多いことには間違いない。
 ポルトガルはBCGワクチンの定期接種を続けていたが、スペインは1981年に中止していて、これが罹患者数、死亡者数の差になっていて、BCGワクチンが有効ではないかとの説である。
 その他、欧米比べて感染者数の少ない理由(仮説)として
1.日常的な挨拶としてのキス、抱擁の習慣が無い。
 2.土足で家の中に入る習慣が無い。
 3.N95の様な特殊な規格のマスクで無いと感染防止にはならないが、感染防止になるとの勘違いでマスクを使用し、結果として拡散防止になっている。
 4.コロナウイルス自体は特殊なウイルスではなく、日本ではCOVID-19に比較的似ていて病原性の低いコロナウイルスが既に広がっていて、ある程度の抗体ができている。
 などの説があるが仮説の段階である。
 日本ワクチン学会のBCGワクチンのCOVID-19に対する有効性は、現時点では否定も肯定もできないとしている。
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するBCG ワクチンの効果に関する見解 
 そして、BCGワクチンを定期接種しているトルコでは4/25の時点で感染者が 104,912人、死亡者2,600人となっていて、接種していても感染が少ない訳では無さそう。

 この様な報道がされたため、医療機関にBCGワクチンの接種を求めるケースが増え、3月末でワクチンの出荷量が前年比で約3倍になり、本来の乳幼児の向けのワクチン接種に影響する懸念が広がっている。
 BCGワクチンはいわゆる判子注射とかスタンプ注射とか言われる経皮接種だが、添付文書に絶対に注射してはならないと明記されているにも係わらず、注射してしまうという重大な誤接種も起きているという。

 (1)本剤は、経皮接種用の濃厚なワクチンであり、もし皮内等に注射すると強い局所反応を呈するので、絶対に注射してはならない。
   乾燥BCGワクチン添付文書 

 実際に皮下注射をしてしまい、救急受診となったケースも有るとのこと。
 新型コロナ予防しようと…BCGワクチン接種ミス 成人に“絶対禁止”の皮下注射 
 知人に日本感染症学会認定の専門医が居るが、この生地に怒り狂っていた。
 ・BCGワクチンは生ワクチンのため、正規の接種法でもまれにワクチン株による感染症が起きる可能性が有り、アナフィラキシーショック等、重篤な副反応が起きる可能性が有る。
 ・それを皮下注射等で接種するとそのリスクが格段に高くなる。
 ・添付文書にきちんと目を通していればこの様な事はありえない。
等々、あきれ果てていた。

 本来の乳幼児に接種するワクチンの不足も懸念されていて、日本小児科学会も「乳児へのBCGワクチン優先接種のお願い」という文書を出している。
 乳児へのBCGワクチン優先接種のお願い 
 BCGワクチンのCOVID-19の有効性に関しては、オーストラリアなどで治験を開始しているので早晩判明するであろうが、有効性がきちんと解明されるまで過大な期待は禁物であろう。


 5/1追加 
 このスペインとポルトガルの値だが、BCGワクチンが有効であると言う説には無理があるという指摘があったので追加。
 ポルトガルの外国からの観光客が、スペインに比べ少ないとの指摘もある。  World Tourism Barometer 
 2018年のデータだが、スペインの年間8,280万人に対し、ポルトガルは2,280万人で約1/4である。
 実際に、スペインで最初に感染者が発見されたのが1/31に対し、ポルトガルは3/2であった。
 Novel Coronavirus(2019-nCov)
 新型コロナウイルス感染情報(3月2日)
   そして、感染が発生した後の対応に大きな違いがあった。
 スペインで感染が判明したのが1/31だったが、緊急事態宣言を発令したのが3/14であった。
 一方ポルトガルの対応は、3/12に全国警戒宣言を発令している。
  新型コロナウイルス感染情報(3月13 日)
   スペイン、新型コロナウイルスで非常事態宣言 全土で原則外出禁止
 ポルトガルは迅速に対応したため、スペインとの比較で感染者数が少なかったのも一因ではないかとされる。
 また、スペインは財政問題で医療リソースが低下していたとの説もある。
 ベルギーの死亡率が世界一高いといわれる理由、ポルトガルが低い理由

   

 いずれにしろ、BCGワクチンがCOVIC-19に対して有効であれば非常に喜ばしいが、現時点での有効性があるかどうかは不明である。<br>

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