今度は産地偽装米騒動

 

 JAグループ京都の米穀卸の「京山」による、米の産地偽装疑惑が浮上した。

 週刊ダイヤモンド2017/2/18号に、京山が精米・販売したコシヒカリ4袋(各5kg入り)を購入、日本穀物検定協会に開封と、サンプル 採取のための均分を依頼し、同位体研究所に炭素・酸素・窒素安定同位体比による原産地判別を依頼したという。
 同位体研究所 原産国・産地の判別検査  
 これは作物の原産地により含まれる炭素、酸素、窒素の安定同位体が異なる事を利用した検査法で、高精度で判定できるとされる。
 生元素安定同位体比解析によるコシヒカリの産地判別の可能性  
 米以外にも高精度で判定できるため広く採用されている。
  安定同位体比による茶産地の判別  
  安定同位体比分析による国産・中国産・および韓国産塩蔵ワカメの産地判別 
 安定同位体比分析 
 同位体研究所による検査結果は、滋賀こしひかりが10粒中6粒、魚沼産こしひかりが10粒中4粒、京都丹後こしひかりが10粒中3粒が中国産と判定されたという。
 記事に書かれている様に、ホントに10粒中6粒となると、誤って混入したというより故意に混ぜたとしか考えられない比率である。
 記事では「10粒中6粒」という混入割合を、”意図せざる”混入とするのはかなり無理がある、と書いている。

 一方、京山サイドは強く反発していて、週刊ダイヤモンドに対して刑事告訴へ踏み切ることを明らかにした。
  雑誌「週刊ダイヤモンド」2017年2月18日号に掲載された記事について 
 この文書の趣旨は
 ・京山が輸入米を新たに包装し、加工して販売する事は無い。
 ・現在輸入米を取り扱っておらず、過去に輸入した米についても、輸出国で袋詰めされたものをそのまま販売した。
 ・輸入米が京山の精米工場に搬入される事は無く、輸入米が精米・袋詰めの過程で混入する事はあり得ない。
 ・本件記事の検査結果についてはその検査方法や検査機関の実績などから正確性が強く疑われる。
 ・現在農水省に調査を依頼しており、事実が明らかになると考える。
 等である。

 この京山の文書には少々首をひねらざるを得ない箇所がある。
 検査方法の安定同位体比分析は、食品偽装、産地偽装の検査方法として精度は高く実績も有り、世界的に用いられている。
 検査機関の実績と言っているが、同位体研究所はビューローベリタスジャパンや日本同位体分析研究所と共に、安定同位体比分析では実績のある会社だが・・・
 また、農水省に調査を依頼と書いてあるが実際は立ち入り検査で、2/14の農水大臣の記者会見ではそのことに触れている。

 記者
 JAクループ京都の米卸からですね、産地偽装の疑惑のコメが出まして、ネット等でも非常に反響が広がっているんですけれど、疑惑の発信源がですね、JAグループということもあって、これから大きな問題になっていくのかなという気がしているんですが、現時点での大臣の受け止めを教えてください。

 大臣
 週刊ダイヤモンドの報道は承知をしています。農林水産省としては、報道を踏まえまして、直ちに、報道のございましたコメの卸売業者に対しまして調査を開始いたしました。この報道が事実であるということになれば、大変重大な問題でございます。したがいまして、この農政局の調査をしっかりと見守っていき、正確な事実の把握をしていきたいというように思っております。その上で食品表示法やコメのトレーサビリティ法や食糧法、こういったものとの関係でしっかりとした対処をしていきたいというように思っております。

 記者
 1点ちょっと細かい点で質問なんですけど、昨日、京山がホームページに公表した資料で、京山という会社が農林水産省に調査を依頼しているというふうな、向こうからの依頼があって農水省が調査をしているような書きぶりになっていたんですが、これと立入検査というのはかなり意味合いが違ってくると思うんですけれども、事実関係はいかがでしょうか。

 大臣
 どのような点でホームページにそういう記載がなされたかについては、存じ上げませんが、今、詳しい調査の手法等につきまして事務方がお答えの用意があるようでございますので、会見後、一つ事務方にお尋ねいただきたいというように思います。

 記者
 最後にですね、今後の業者調査に臨むに当たっての、どういった姿勢で臨むかということと、あと今後のスケジュール感ですね、いつぐらいには明らかにしたいというふうにお考えかということを教えてください。

 大臣
 臨む姿勢というのは、産地偽装というのは私どもが進めている食の信用や安全、これに反するものですから、これは徹底的に、厳正に対処するという姿勢で臨んでいきたいと思っております。スケジュール感でございますが、これは農政局からの報告を聞いて、その上で判断したいというように思っております。

農林水産大臣記者会見 2017/2/14 

 双方の主張する様に、京山では中国産米とのブレンドはしていなく、ダイヤモンド編集部の言う様に実際に中国産米が検出されたとなると、考えられる可能性は次の2点。
 1)京山の販売している米を何者かが偽装した。
 2)京山に納入された国産米にすでに外国産米が混ぜられていた。
 京山とダイヤモンド編集部の主張がどちらも正しかったとすれば、個人的には納入された米にすでに混ぜられていた可能性が高いと考える。
 元々、米は産地偽装が横行していると言われ、魚沼産コシヒカリの様な怪しい商品もある。(産地の方、ごめんなさい)
 北陸農政局の資料によると、平成25年度の全国の米の生産高8,603,000トンに対し、魚沼産は82,300トンと全国の生産量の1%にも満たない。
 にもかかわらず、魚沼産コシヒカリはあちこちで見かける。
 農作物作付面積(栽培面積)・収穫量(平成25年産)  
米の安定同位体比分析は1件で3万円~4万円程度かかるため、薄利の米卸業者では特段の理由でも無い限り実施はされない。
国産米と信じて仕入れた米に、外国産米が混ぜられていた可能性は大いにあると思う。

今回の件は、近畿農政局が検査に入ったとされる。
主食の米だけに徹底した調査を望む。
 

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