山崎製パン、臭素酸カリウムの使用を再開

 

山崎製パンが2014年に使用を中止していた、小麦改良剤の臭素酸カリウムの使用を再開した。
  ■ 臭素酸カリウム使用製品
当社では、角型食パンの品質改良のため、以下の製品に小麦粉改良剤の臭素酸カリウムを使用します。
 (1)超芳醇(2020年3月1日出荷分〜)
 (2)特撰 超芳醇(2020年3月1日出荷分〜)
 (3)デイリーヤマザキのサンドイッチ製品に使用される角型食パン(ロイヤルブレッド及び全粒粉食パンを使用したサンドイッチは除く)(2020年3月10日出荷分~)
 小麦粉改良剤「臭素酸カリウム」による角型食パンの品質改良について

山崎超芳醇 税込み価格¥170
小麦改良材としての臭素酸カリウムに関しては、トンデモ系の渡辺雄二センセが科学的リテラシーゼロの著書をだしている。(現在は新版になっている。)
  新・ヤマザキパンはなぜカビないか─誰も書かない食品&添加物の秘密
   この本の内容に関しては、鈴鹿医療科学大学の長村洋一教授が、その内容の非科学的なことを指摘している。
 「ヤマザキパンはなぜカビないか」論に見る一般人に対する騙し行為
 このトンデモ本を出版している緑風出版のサイトをみると面白いことが書かれている。
 本書は、旧版『ヤマザキパンはなぜカビないか─誰も書かない食品&添加物の秘密』の増補改訂版です。山崎製パンは、臭素酸カリウムを添加物として用いてきました。臭素酸カリウムは発がん性物質で国際的には食品への使用が禁止されているにもかかわらず、厚生労働省の基準の範囲で食パンなどに小麦粉改良剤として使用していたのです。
 本書旧版の指摘により、著者を交えた消費者と山崎製パンとの議論を経て、同社はその使用を取りやめる決断をしました。本書増補改訂版は、その顛末をまとめながら、改めて誰も書かない食品&添加物の問題点を取り上げます。


 これによると渡辺雄二センセの働きかけで、ヤマザキが臭素酸カリウムの使用を止めたと受け止められるが、実際のところどうかというと・・・
 ところが、同社は2014年には使用を中止しました。反対派の批判、デマに屈した、という見方もありましたが、そうではありませんでした。
 実は、臭素酸カリウムの調達が難しくなったのです。2014年当時、国内で添加物規格の臭素酸カリウムを製造していた唯一の企業が、製造を取りやめ。添加物を販売するには、不純物を減らし高度な規格をクリアしなければならず、かなりのコストがかかります。この国内企業の終売により、山崎製パンは、臭素酸カリウムを海外の企業から調達することを検討しましたが、当時は同社の基準を満たす企業・製品が海外にはありませんでした。
 「ヤマザキ」が“発がん物質”臭素酸カリウムの使用をわざわざ再開する理由
食品添加物グレードの臭素酸カリウムが製造中止になったため、使用を中止せざるを得なかったというのが現実だったようで、渡辺雄二センセは自分の手柄話にすり替えた様である。
 パンに対する臭素酸カリウムの使用基準は、臭素酸として0.030g/kg(小麦粉1kgにつき)であり、臭素酸カリウムとしては0.035g/kgである。
 臭素酸カリウム以外の小麦改良材としては、ビタミンCやトランスグルタミナーゼの様な酵素剤があるが、ビタミンCや酵素剤は製パン以外にも広く使われている。
 一方臭素酸カリウムは製パンだけの用途で、その使用量も僅かであり、薬品メーカーも採算がとれず製造中止という事になったのであろう。
 外国で山崎の要求する品質の臭素酸カリウムを供給できるメーカーを探し当て、臭素酸カリウムを使用したパンを再開したと言うのが現実である。

 日本では、1953年に食品衛生法に基づき、臭素酸カリウムが食品添加物(小麦粉処理剤及び魚肉ねり製品)として指定された。
 臭素酸カリウムの安全性に関しては、1977年に実施された既存添加物の安全性確認で、ラットの発がん性試験で腎への発がん性が認められたことから、消費者団体等の反対により多くのメーカーは使用を中断した。
 その後開発された、パンの臭素酸残留分析法(イオンクロマトグラフィ、定量限界500ppb)でパンの残留臭素酸の調査を行い、残留が認められなかった事から、厚生省は1988年の食品衛生調査会での審議を経て使用基準を改正し、パン以外への使用を禁止し、使用量を臭素酸として小麦粉 1 kg につき 0.030g以下とし 、最終製品には残存してはならないとした。
 その結果、多くの製パンメーカーは臭素酸カリウムの使用を再開した。

 国際的な安全性評価では、食品規格に関する国際機関のJECFAは、1989年開催の代3回JECFAでは小麦粉改良剤として、75mg/kgの使用ではパン中に臭素酸の残留が確認されたため、許容量としては60mg/kg以下とすべきであるとして、臭素酸カリウムの許容量以下の使用では、臭化物は毒性学的に問題とならないとの見解を示した。
 1992年の第39回JECFAでは、臭素酸カリウムは遺伝毒性発がん物質であるとの結論となり、小麦粉への60mg/kg以下の使用であっても微量の残留が認められる事が明らかになったため、小麦改良剤としての使用の許容量が削除された。
 そのため国内製パンメーカーは、臭素酸カリウムの使用自粛となった。
 1997年には、新たなパン中の臭素酸カリウム分析法(ポストカラムHPLC法、定量限界10μg/kg)を採用し通知、さらに2003年に食品中の臭素酸の分析法を改正(改良ポストカラムHPLC法、定量限界0.5μg/kg=0.5ppb)し通知し、パン中の臭素酸の基準値は0.5ppb以下となった。
 ファクトシート・臭素酸カリウム

 その結果として、小麦改良剤臭素酸とし小麦1kgあたりて0.030gの許容量、最終製品のパンとして改良ポストカラムHPLC法で、残留臭素酸が0.5ppb以下であることを条件に食品添加物としての使用が認められた。
 水道水にも臭素酸が含まれることがあるが、これは原水に含まれる臭素や、消毒剤の次亜塩素酸塩に不純物として含まれる臭素によるものである。
 水道水の臭素酸の基準値は10μg/kg(10ppb)以下となっていて、基準値以下の臭素酸が検出された事も有り、パンの残留基準値が水道水と比べても非常に厳しい値となっている。
 EUは臭素酸カリウムの食品添加物として使用禁止としている国が多く、中国も小麦改良剤としての使用を禁止している。
 アメリカでは、米国食品医薬品庁(FDA)が小麦粉の全粒粉に75 ppm未満、漂白粉に50 ppm未満の使用を認めていて、FDAはパン中の臭素酸残留量の安全レベルを20 ppb以下と評価し、高感度分析法を開発し、この値を超えないよう残留臭素酸のモニタリングが行われている。
 州によっては臭素酸カリウムの使用の旨を表示を義務づけている州もある。
 使用に対して厳しい批判のある臭素酸カリウムの使用を山崎製パンがこだわるのは、臭素酸カリウムが小麦粉改良剤として非常に優秀だからである。

 小麦粉改良剤として臭素酸カリウムを使用した場合と、ビタミンCを使用した場合の生地を電子顕微鏡で観察すると、臭素酸カリウムを使用した生地はグルテンの薄い膜がデンプン粒を包み込むように被っているのに対し、ビタミンCを使用したパン生地は、グルテンの膜が厚くデンプン粒はむき出しとなっている。
 製品のクラム(食パンの白いやわらかい部分)のデンプンを除去しグルテン膜の状態を観察すると、の写真が示すとおり、臭素酸カリウム使用製品では均一で連続的な薄い膜状になっているのに対し、ビタミンC製品は細い繊維構造になっている。

出典:山崎製パンwebサイト

結果として臭素酸カリウム使用製品では水分が保たれることにより、しっとりした食感を長く維持できるのに対し、ビタミンC使用製品ではデンプンからの水分の移動が生じ易くなり、食感のパサつき等、劣化が速くなるとしている。
 山崎が臭素酸カリウムを使用するパンを角形食パンに限定したのは、パンの種類により臭素酸の残留値が異なってることによる。
 厚生労働省が定めた、パン中の残存臭素酸測定法である改良ポストカラムHPLC法(検出限界0.5ppb)を用い、パンの種類および製法の違いによる、パン製品中の残存臭素酸量への影響を確認した結果、山型食パンやロールパンでは基準値を超える臭素酸が認められたのに対し、角形食パンは製法にかかわらず検出されなかった。

出典:山崎製パンwebサイト

角型食パンには臭素酸の残存が一切認められず、山型食パンでは上部クラスト(パン表皮部)に微量の残存が認められた理由は次の通り。
 角型食パンは、容器にパン生地を入れて蓋をして焼くため、オーブン内で生地の温度がゆっくりと上昇し、生地中に水分が保持されると共にグルテンタンパク質の熱変性が抑えられ、保持された水分が臭素酸を分解し、またグルテンタンパク質は臭素酸の分解によって生じる酸素の受け手として機能するため、角型食パンでは臭素酸の分解が促進するとしている。
 一方、山型食パンやロールパンのように蓋のないパンは、オーブン内で一気に温度が上がるので、臭素酸の分解がおくれるため結果として微量が残留する。

出典:山崎製パンwebサイト


山崎製パンは、臭素酸カリウムの管理として、工場のの検査室で秤量、分包して製造ラインで使用し、製造現場で誤って過剰使用しないようにされている。
 また基準値の3倍使用しても、最終製品のパンに残留しないことは検証されている。
 出来上がったパンは、定期的にモニタリング検査を行い臭素酸が残留しないことを確認するなどの品質管理が行われる。

 臭素管カリウムを使用するのは、トンデモ系先生連中を中心に、コストダウンのためと言った説が飛び交っているが、これは誤りというかデマ。
 小麦粉改良剤としては、ビタミンCや酵素剤も使われるが、ビタミンCや酵素剤の用途は幅広いが、それに対して臭素酸カリウムは小麦粉改良剤のみであり、用途が限定され調達コストは高くなる。
 使用に際しても使用量の管理や、製品のモニタリング検査など管理にもコストがかかるのが必定であり、臭素管カリウムを使わない方が製造コストは下がる。
 企業が儲けのために発がん性物質を使うという根拠の無いデマにだまされない事が必要と考える。
 山崎の超芳醇は税込みで170円前後、特選超芳醇が190円前後で、食パンとしては高額な価格である。
 個人的な見解だがどちらも非常に美味しい。
 美味しさというメリット、残留しないという科学的根拠、さて皆様買いますか?
 私は買いましたけど。
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