クロワッサン誌の無責任極まわりない記事『おにぎりは発酵食』

   2018/06/12

 クロワッサン誌の5/25号に無責任極まりない記事が掲載されている。
 「手塩にかけたおにぎりは、おいしい発酵食?」という記事がそう。
 料理研究家の本田明子センセの記事である。

 しかし近年は過度な清潔志向で、母親が作るおにぎりが妙なことになっている。
 「素手は不衛生だからと小さいお子さんがいる家ではラップや食品用手袋で握る人もいますよね。
 でも素手で握るからこそ”おにぎり”は美味しいんです。
 手のぬくもりに塩が溶けてまんべんなくご飯と馴染むし、母親の愛情がこもります。
 人の手まで不潔だと悪モノにしたら、日本の伝統的発酵文化そのものが成り立ちませんよ。」

 など、おにぎりとはまったく別物のぬか漬けを引き合いに出している。
 揚げ足をとる様なことを言えば、手の温もりではなくご飯の温もりのはずだが・・・

 「もちろん手を洗うことは大切。
  けれど石鹸のない時代からお母さんたちは、手を良く洗ってごはんをにぎってきたんですからね。
 私は粗塩でてを洗います。
 塩なら適度に手の油分が残るし、抗菌効果も有りますから。」

 と、非科学的な事を書いている。
 塩に細菌を押さえる作用があるのは間違っていないが、腸炎ビブリオの様に塩分が無いと繁殖できない細菌もある。
 ヒトの常在菌として食中毒の原因となる黄色ブドウ球菌がある。
 人体の皮膚表面、顔、毛孔に存在し、特に鼻腔内に存在する常在菌であり、諸説あるが30% – 100%のヒトが保有していると言われ、産生するエンテロトキシンが食中毒の原因となる。
 この菌の特徴は、5~47.8℃の温度域で増殖(至適増殖温度:30~37℃)し、エンテロトキシンが産生されるのは10~46℃とされる。
 さらに耐塩性があり、食塩濃度16~18%でも増殖し、他の条件が適当であれば食塩濃度10%でもエンテロトキシンを産生するとされる。
 ブドウ球菌食中毒 
 つまり、黄色ブドウ球菌に対しては、本田センセの主張している様な塩の静菌作用は全く期待できないことになる。
 次のグラフは厚生労働省の食中毒統計資料から、2008年から2017年の10年間のおにぎりを原因とする食中毒をピックアップしたグラフである。
 
 おりぎりを原因とする食中毒の原因は大部分がブドウ球菌によるものである。
 この件数はあくまでも医療機関から保健所に届出のあった件数で、実際には届出がされないケースが多く、食中毒統計に表れる数字は氷山の一角とされる。

 ブドウ球菌食中毒の全食中毒事例に占める割合は、1984年以前は 25~35%であったが、1985年以降25%以下となり漸次減少傾向を示し、1995 年には約10%、1997年には3%まで減少した。
 その理由は、ブドウ球菌食中毒の最大の原因食品であった「にぎりめし」による食中毒が激減したためであると考えられている。
 国立感染症研究所 ブドウ球菌食中毒とは

 おりぎりが黄色ブドウ球菌の最大の原因食であったとしている。

 >けれど石鹸のない時代からお母さんたちは、手を良く洗ってごはんをにぎってきたんですからね。
 その結果、以前は食中毒の原因としてのブドウ球菌の割合が25%~35%だったのが、1985年以降減少傾向となっているが、最大の原因食品のにぎりめし(おにぎり)による食中毒が激減したためとしている。
 クロワッサンの記事に、おにぎりを弁当箱に詰める画像があるが、おにぎり弁当は黄色ブドウ球菌にとっては天国の様な環境である。
 最大の愛情は、食中毒を起こさないおにぎりを作ることが最大の愛情と思うが・・・・・。

 この記事に藤田紘一郎東京医科歯科大学名誉教授が無責任なコメントを書いていて、初耳だがおにぎりは発酵食品だそうで・・・・??
 「おにぎりを素手で握る効果は体内に乳酸菌などの常在菌を取り込むことです。
 石鹸でゴシゴシ手を洗ったら常在菌が死んでしまいます。~略」
 そもそも、食品の微生物汚染の最大の汚染源は人間であるが、中でも手は様々な物に触れるため、様々な微生物で汚染している。
 衛生に気をつけないと、おにぎりは腐敗食となる可能性の方が格段に高い。
 乳酸菌などの常在菌を取り込むこととの事だが、乳酸菌より常在菌の黄色ブドウ球菌を取り込む可能性が高いと思うが。

 藤田センセ、「カイチュウ博士」と呼ばれユニークな先生であった。
 東京医科歯科大学を退官後、日経新聞のインタビュー記事で、「腸内細菌は免疫を作り、自然治癒力の源泉にもなっている大事なものです。それなのに、日本人の体内では減っています。それは大地で育つ野菜や果実の摂取量が減る一方で、防腐剤や添加物入りの食べ物などをたくさん食べていることとも関係があると思います」と述べている。
 それに対し、食品安全情報ネットワークから、記事に対する公開質問状が出されているが、藤田センセはシカトしている様である。
 「1月29日夕刊《「きれい好き」の落とし穴》への公開質問状  

 また、健康食品の販売会社「シャブロン」の薬事法違反幇助で書類送検されている。
 副作用なくがん細胞が自滅」などと効能を謳っていた他、肺がんの影が薄くなった例を、プロポリスのためとする、根拠の無い感想を書いていた。
 藤田センセはユニークな教授と思っていたが、晩節を汚しているようである。

 なにより弁当の様に常温で扱う食品に対しては、精神論では無く衛生管理こそが最大のポイントである。
 有名なクロワッサン誌が、このような科学的根拠の無いいい加減な記事を載せるの見識を疑う。

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