冷凍メンチカツでO157食中毒

 

 静岡県沼津市の食品加工会社「タケフーズ」が製造し、神奈川県平塚市の食肉加工卸会社「肉の石川」が販売した『肉の石川 メンチカツ』で、O157による食中毒が発生したとの報道があった。
 その後、同じく「タケフーズ」に製造を委託していた「米久」の『ジューシーメンチカツ(ピロ)』でもO157による食中毒が発生し、『ジューシーメンチカツ(ピロ)』と『クリーミィーコロッケ(ピロ)』を回収する事態となった。
 当初は冷凍食品との報道だったが、総菜半製品という事であった。
 どちらも冷凍で販売される商品で、表示内容をよく読めば違う商品である事が判るが、普通はそこまで気をつける事は無く、冷凍食品と総菜半製品の違いがわかる人はほとんどいないと思う。

 冷凍食品に関しては、3つの規格基準が、「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号)で定められている。
 (1)無加熱摂取冷凍食品(冷凍食品のうち製造し、又は加工した食品を凍結させたものであって、飲食に供する際に加熱を要しないとされているものをいう。以下この項において同じ。)は、細菌数(生菌数)が検体1gにつき100,000以下で、かつ、大腸菌群が陰性でなければならない。
 (2)加熱後摂取冷凍食品(冷凍食品のうち製造し、又は加工した食品を凍結させたものであって、無加熱摂取冷凍食品以外のものをいう。以下この項において同じ。)であって凍結させる直前に加熱されたものは、細菌数(生菌数)が検体1gにつき100,000以下で、かつ、大腸菌群が陰性でなければならない。
 (3)加熱後摂取冷凍食品であって、凍結させる直前に加熱されたもの以外のものは、細菌数(生菌数)が検体1gにつき3,000,000以下で、かつ、E.coliが陰性でなければならない。(ただし、小麦粉を主たる原材料とし、摂食前に加熱工程が必要な冷凍パン生地様食品については、E.coliが陰性であることを要しない。)
 冷凍食品 
 ハンバーグやメンチカツなど食肉を使用した食品では、食肉を50%以上含む製品は食品衛生法では食肉として扱われる。
 本来なら冷凍された食品では、食肉が50%未満では「冷凍食品」、50%を越える場合で加熱済みなら「冷凍加熱食肉製品」、非加熱なら「冷凍食肉」として販売されるはずである。
 ちなみにこの表示をみると、ハンバーグやメンチカツなど食肉加工品で、「冷凍食品」なら食肉の比率が半分以下、「冷凍加熱食肉製品」、「冷凍食肉」なら食肉が50%以上使われている事が判る。

 「食品、添加物等の規格基準」には総菜の規格基準は無く、昭和54年に出され、平成7年の第3次改正された厚生省環境衛生局食品衛生課長通知「弁当及びそうざいの衛生規範」が有るだけである。
 弁当及びそうざいの衛生規範 
 それによると総菜とは
 そうざいとしては、通常、副食物として供される食品であって、次に掲げるものをいう。
 ①煮物:煮しめ、甘露煮、湯煮、うま煮、煮豆等
 ②焼物:いため物、串焼、網焼、ホイル焼、蒲焼等
 ③揚物:空揚、天ぷら、フライ等
 ④蒸し物:しゅうまい、茶わん蒸し等
 ⑤あえ物:胡麻あえ、サラダ等
 ⑥酢の物:酢れんこん、たこの酢の物等
 となっている。
 総菜半製品には規格が無く、地方自治体が独自の基準で指導している自治体もあるが、管理や販売の方法は業者側に委ねられているのが実態である。
 新潟県食品の指導基準 
 総菜自体の規格が曖昧なため、過大解釈で「総菜半製品」が誕生したわけである。
 今回の件は、本来なら「冷凍食品」、「冷凍加熱食肉製品」、「冷凍食肉」のいずれかとして販売されるべき物が、 「総菜半製品」として販売されていた事になる。

 病原性大腸菌のO157は家畜、特に牛の常在菌で(牛に対する病原性は無い)、珍しい存在ではない。
 O157の生存・増殖条件は
 ・水中、土の中で数週間~数ヶ月。(堆肥中で1年後でも生存していたという調査も有り)
 ・低温に強く冷凍来ないでも生存可能。
 ・酸性に強く、胃酸中でも生存可能。
 ・熱には弱く、75℃/1分間で死滅。
 などの特徴が有る。

 熟成不足の堆肥を使って栽培した野菜でのO157食中毒も現実に起きているし、冷凍でも死滅しないから今回の件のように冷凍されていた食品でも起こりえる。
 熱に弱いため十分に加熱すれば問題ないが、揚げ物ではしばしば微生物による食中毒が起きている。
 これは揚げ物特有の現象である。
 揚げ物の場合、衣に含まれる水分が熱した食用油の中で蒸発し、その気化熱のため内部の温度上昇が緩やかになる。
 そのため、衣の部分はカリカリだが、中はジューシーといった揚げ物特有の食感が得られるが、内部の加熱不足という事にもなり得る。
 揚げ物を作るときに、高温の油に入れると表面はキツネ色に仕上がるが、内部は加熱不足で細菌やウィルスが残っているというケースもある
 生肉や生の魚介類を使った揚げ物を作るときには、低温の油に入れた後にゆっくり温度を上げる様にしないと危ない。
 O157は熱に弱く十分な加熱で死滅するが、O157が作り出すベロ毒素は熱に対して非常に安定した物質のため加熱しても無毒化は出来ず、注意が必要である。

 今回の件で、厚生労働省は新たな基準策定などに着手する方針を固めたとしているが、当然であろう。
 消費者にとっては冷凍食品も総菜半製品も冷凍された食品であり、規格の違いなど知っている人は少ない。
 それを考えるともっと早く規制しておくべきだった。

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コメント一覧

  1. 通りすがり より:

    >O157は熱に弱く十分な加熱で死滅するが、O157が作り出すベロ毒素は熱に対して非常に安定した物質のため加熱しても無毒化は出来ず、注意が必要である。

    感染型と毒素型の違いをもう少し調べて補足をお願いします。
    レセプターとか潜伏期間などエンテロトキシンとの違いについて説明不足と思われます。

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