ワクチン告発のトンデモ映画の上映中止

 

 新三種混合ワクチン(MMRワクチン)を告発する内容の映画『MMRワクチン告発(原題、Vaxxed: From Cover-Up to Catastrophe)』を国内で配給予定だったユナイテッドピープル株式会社が、同映画の劇場公開の中止を発表した。
 映画『MMRワクチン告発』公開中止のお知らせ  
 MMRワクチンは麻疹(measles)、流行性耳下腺炎(おたふく風邪、mumps)、風疹(rubella)の三種の弱毒化ウイルスが混合された生ワクチンで、頭文字からMMRワクチンと呼ばれる。
 ジフテリア(Diphtheria)、百日ぜき(Pertussis)、破傷風(Tetanus)の三種混合ワクチン(DPTワクチン)と区別するため、新三種混合ワクチンとも呼ばれる。
 日本では、1988年から1993年まで実施されていが、大阪大学微生物病研究所の占部株ムンプスワクチンによる無菌性髄膜炎発生率が高い事が問題となり、接種中止となった。
 現在、日本ではMMRワクチンは未承認であり、生産はされていないが、トラベルクリニック等で自由診療で輸入したMMRワクチンの接種を受けられる。
 接種を受けた乳幼児は全国で183万1072人で、健康被害の救済認定を受けたのは1040人、うち3人が死亡したとされる。
 新三種混合ワクチン 
 2006年4月から、副反応が問題となった占部株ムンプスワクチンを除いた、麻疹・風疹混合(MR)ワクチンの予防接種が開始された。
 現在日本では、安全性を高めたMMRワクチンの導入の検討がなされている。

 『MMRワクチン告発』だが、映画は、米国疾病対策センター(CDC)の研究員の内部告発内容をもとに、MMRワクチンと自閉症との因果関係の有無を問う内容で、監督はアンドリュー・ウェイクフィールドとなっている。
 アンドリュー・ウェイクフィールドは元医師で、1998年に「新三種混合ワクチン予防接種で自閉症になる」という論文を『ランセット』誌に発表したが、2004年に『ランセット』に開示していなかった重大な利益相反があったとして、同論文の一部を撤回した。
 論文の内容も科学的な問題点が指摘され、2010年1月、英国医事委員会は、新三種混合ワクチンと自閉症の関連性を否定し、2010年に、論文が全撤回された。
 英医学誌、自閉症と新三種混合ワクチンの関係示した論文を撤回 
 2010年5月にはアンドリュー・ウェイクフィールドの医師免許を剥奪するという懲戒処分に至った。
 MMR row doctor Andrew Wakefield struck off register  
 さらに2011年に追調査が行われ、詐欺であったことを裏付ける論文が発表されている。
 Wakefield’s article linking MMR vaccine and autism was fraudulent  
 これらの状況にもかかわらず、ウェイクフィールドの論文を信用したイギリスやアメリカなどの諸国では、子供にMMRワクチンの接種を避ける人が増え、結果として多くの人が麻疹に感染することになった。
 Andrew Wakefield, Father of the Anti-Vaccine Movement, Responds to the Current Measles Outbreak for the First Time  
 イタリアでは予防接種をする子供が減少した結果、麻疹の発症が3倍に増えるという余波が見られ、それにより未接種者は義務教育を受けられない法律が施行された。
 イタリア、予防接種を就学の条件に  

 『MMRワクチン告発(原題、Vaxxed: From Cover-Up to Catastrophe)』の内容だが、米国疾病対策センター(CDC)の研究員の内部告発内容をもとに、MMRワクチンと自閉症との因果関係の有無を問う内容で、安全性が確認されるまでは、それぞれのワクチンの単独接種を勧める内容らしい。
 日本では無菌性髄膜炎が原因で1993年でMMRワクチンは中止となったが、ユナイテッドピープルのウェブサイトによると、ウェイクフィールドの説明は「日本では1994年の法改正により、満1歳からはしかと風疹の予防接種が同時に推奨されるようになった。さらにその4週間後から、おたふく風邪ワクチンも任意で接種できた。自閉症が再び増加したのは、はしかと風疹のワクチン接種増加とちょうど比例していた。」という内容との事である。
 実際には1994年から麻疹/風疹混合ワクチン(MRワクチン)が使われはじめる2006年以前は、麻疹と風疹は単独接種であった。
 麻疹と風疹ワクチンはいずれも生ワクチンであり、1994年策定の予防接種ガイドラインでは、4週間以上の間隔で接種することとなっており、麻疹と風疹ワクチンの同時接種が推奨されたことは無い。
 予防接種ガイドライン 

 ユナイテッドピープルのウェブサイトによると、映画の終わりに次の様な、ウェイクフィールドのメッセージを映画の最後に加える事になっていたようである。

 アンドリュー・ウェイクフィールド監督日本向けメッセージ
 日本ではMMRワクチンは中止されましたが、1994年の法改正により、日本の赤ちゃんには、生後12ヶ月後からはしかと風疹の予防接種が同時に推奨されるようになりました。MMR中止後減少した自閉症が再び増加した時期は、はしかと風疹のワクチン接種増加とちょうど比例しています。生ワクチンにさらされるという状況は、日本からなくなっていなかったのです。

 事実とは異なるメッセージを付け加える事になっていた様である。
 ウェイクフィールドの主張と、日本での推移を見てさすがに公開は拙いとの判断になったのではなかろうか。
 この『Vaxxed: From Cover-Up to Catastrophe』は2016年のトライベッカ映画祭でも上映が拒否されている。
 トライベッカ映画祭 
 ま、トンデモ映画の上映がキャンセルになった訳で、常識的な判断であった。

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