子宮頸がんワクチン疑惑、信州大学調査委員会の結果

 

 厚生労働省研究班の子宮頸がんワクチン研究のねつ造疑惑で、信州大学の調査委員会は11月15日に、意図的なデータの捏造や改ざんなど不正行為はなかったと結論づけた。
 これをうけて、子宮頸がんワクチン被害者を支援している団体は、不正はなかったとこれ見よがしにSNSで記事を拡散してえる。
 ところが、この調査員会の結果の内容を見ると、実験がいわば「予備実験」レベルだったのにも係わらず、確定的な結論を得たかのような発表をしたと非難している。

         平成28年11月15日
 厚生労働省研究班(代表:池田修一教授)が発表した研究内容に係わる本調査の結果について

 1.調査委員会設置の経緯
 平成28年3月16日、厚生労働省で開催された「ヒトパピローマウィルス感染症の予防接種後に生じた症状に関する厚生労働科学研究事業成果発表会」において、信州大学に所属する研究者が発表した内容について、同年6月、報道機関等から研究活動における不正行為の疑いが指摘された。これを受けて信州大学は、信州大学の研究活動における不正行為に関する規定に基づいて予備調査を実施し、それに引き続いて、同年9月1日、日本大学大学院法務研究所教授、前田雅英氏を委員長とする5名の学外委員から成る調査委員会を設置した。

 2.調査目的
 調査の対象者は、信州大学学術研究院医学系池田修一教授(研究代表者)、同医学系A教授(研究分担者)及び同医学部B特任教授(マウス実験実施者)の3名である。調査委員会では、調査対象者らによる研究活動において、「信州大学不正防止規程第2条第2項」に定める特定不正行為(ねつ造、改ざん、盗用、不適切なオーサーシップ、二重投稿)及び「厚生労働分野の研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成27年1月16日)に定める特定不正行為(故意又は研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠った事による、投稿論文など発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等のねつ造、改ざん及び盗用)があったか否かについて、関係資料の検討及び本研究関係者のヒアリング等により事実関係を調査し、専門的な評価を行った。

 3.調査結果調査の結果、前記の規定に定める研究活動における不正行為及びガイドラインに定める特定不正行為は認められなかった。 その詳細は以下の通りである。

 ○マウス実験について
 本件マウス実験は、ワクチン等を接種したNF-κBp50 欠損マウス(以下、接種マウスという)そのものの接種後の様子や接種後の脳組織における自己抗体の沈着を観察したものではなく、接種マウスから血清を採種し、これを無垢のマウス等の脳組織に反応させる手法が採られていた。したがって、本件マウス実験は、HPVワクチン接種による副反応を調べるという意味においては、いわば実験室的な実験(インビトロ)であり、結果の公表においてはあらぬ誤解を抱かないように、細心の注意を払うべき性質のものであった。また、調査対象者らに対するヒアリング等から、本件マウス実験の結果が、実験区ごとに各1匹のマウスから採種された血清を用いたもので有る事が確認された事から、本件マウス実験は、いわゆる「予備的な実験」であり、この観点からも結果の公表に際しては特段の拝領がなされてしかるべきものであった。

 調査委員会は、本件マウス実験について、改修した実験ノート及びマウス繁殖記録、研究の各段階で作成された報告資料の整合性等を精査した結果、本件マウス実験が平成26年度及び平成27年度の厚労科研費研究における計画の通り実施されたものであることを確認した。また、コンピューターに保存されていたスライド編集前の撮影画像を調査しB特任教授の作成したスライドに用いられた画像を確認するとともに、実験結果と矛盾する画像が存在しない事も確認した。そして、これらの調査において、本件マウス実験を実施したB特任教授がデータをねつ造したり、改ざんしたりした形跡は認められなかった。

 今回の調査では、6本の血清検体(HPVワクチン接種マウスからの血清3本及びリン酸緩衝生理食塩水接種マウスからの血清3本)を回収し、再現実験を実施した。これは、①複数のデータの中から都合の良い物だけを選んだのでは無いか、さらには②リン酸緩衝生理食塩水接種マウス(コントロール)との比較において恣意的なデータの取捨選択があったのではないか(溶性の結果が隠秘されているのではないか)、との指摘がある事を踏まえて実施したもので有るが、実験の結果、いずれの検体についても無垢のマウスの脳組織との反応を認める事ができなかった。全て陰性となった理由は不明であるが、回収検体の保存状態などによる影響も否定できない。なお、再現実験には基礎医学の専門家が対応した事を付記する。

 発表されていた内容は、自己免疫疾患を生じ易いNF-κBp50 欠損マウスに、インフルエンザワクチン、B型肝炎ワクチン、サーバリックス(子宮頸がんワクチン)、リン酸緩衝生理食塩水を接種したところ、サーバリックスを接種したマウスだけに、血清(自己抗体)のマウス海馬へ沈着下という内容で、画像まで載っている。
 子宮頸がんワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確立と情報提供についての研究 ~57ページ
 ところが実際には、接種マウスから血清を採種し、これを無垢のマウス等の脳組織に反応させる手法が採られていて、公表した研究結果と異なっていた。
 また、調査委員会が6本の血清検体(HPVワクチン接種マウスからの血清3本及びリン酸緩衝生理食塩水接種マウスからの血清3本)を回収し、再現実験を実施したが、献体の保存状態による影響が否定できないが、再現しなかったとしている。
 今回の調査内容は、不正は無かったが不適切だったという、何とも玉虫色というかファジーな内容となっている。
 個人的な見解では、そもそも実験した内容と発表した内容が異なっている事自体、十分不正行為と考えるが・・・・
 一方、信州大学にも実験のやり直しとその結果の公表を求めた。

 本調査結果を受けて(学長コメント)

 このたび調査委員会から、信州大学在籍の研究者の研究活動上の不正行為の有無に係わる調査について、不正行為は認められなかったとの報告を受けました。

 しかしながら、調査対象となった研究者3名は、実施した実験内容が初期段階であったにもかかわらず、確定的な結論を得たかのような印象を与える発表を研究結果報告会やマスメディアに対して行っていました。調査委員会から信州大学に対して、こうしたことが起こってしまった原因として研究者間の十分な意思疎通を欠く研究姿勢に問題があったとの指摘を受けました。当該研究者3名に対しては、それぞれの役割分担・責任を踏まえてこうした混乱を招いてしまったことについて猛省することが求められると同時に、今回の研究結果の発表に対して、適切な修正を行うことが求められました。本学といたしましては、調査委員会からのこうした指摘を重く受け止め、3名の研究者には調査委員会から求められた事項の履行を申し渡しました。

 また、本学に対しては、調査委員会から、こうした自体の再発を未然に負せくための5つの提言をいただきました。本学といたしましては、これらの提言を真摯に受け止め、速やかに具体的な対策を講じるとともに、研究活動上の行動規範の差r成る徹底を図ってまいります。
 平成28年11月15日
 信州大学長 濱田 州博

 調査委員会は不正行為は認めなかったが、信州大学の責任も追及する内容となっている。
 ところが、マスコミの報道は不正行為は無かったとの報道でかなり一方的な内容となっている。
 その中で読売だけが内容に踏み込んだ報道をしている。

 子宮頸がんワクチンデータ捏造疑惑「科学的議論不足」…信大に研究再実験要求〔読売新聞〕2016.11.16 11:35
 ニュース・解説
  子宮 頸 がんワクチンの副作用などを研究する厚生労働省研究班代表、池田修一・信州大学教授の発表にデータ 捏造 の疑いが指摘された問題で、同大の調査委員会は15日、証明されていない実験結果を証明されたかのように伝え、誤った情報が広まったとする調査結果を発表し、実験のやり直しとその結果の公表を求めた。
  ただ、意図的なデータの捏造や改ざんなど不正行為はなかったと結論づけた。これを受けて、同大の浜田 州博 学長は同日、池田教授と、研究に携わった別の男性教授、男性特任教授の計3人を口頭で厳重注意した。
  子宮頸がんワクチンをめぐっては、健康被害を訴える女性63人が7月、国と製薬会社2社に総額約9億4500万円の損害賠償を求める集団訴訟を東京、大阪など全国4地裁に起こした。こうした中、池田教授の研究は同ワクチンが副作用を起こす仕組みを解明し、治療法の開発にもつながると大きく注目されていた。
  池田教授の発表は今年3月、厚労省内で行われた。マウスに子宮頸がんなど3種のワクチンと生理食塩水を接種した結果、子宮頸がんワクチンのマウスの脳にだけ異常が起きたと説明した。
  しかし、月刊誌が実験手法やデータに疑問を投げかける記事を掲載。同大は9月、外部有識者5人で構成する調査委員会を設置し、調査を行ってきた。
  調査結果によると、実験は各ワクチンをマウス1匹ずつにしか接種しておらず、そのマウスの脳を調べる実験でもなかった。これは予備的な実験だったが、公表段階では証明された結果のように伝えられた。
  男性特任教授から男性教授、池田教授へと報告され、公表される過程で「科学的な議論と意思疎通をはかる努力をしていれば不正の疑いは生じなかった」とした。
  池田教授は、名誉を傷つけられたとして月刊誌の発行元と執筆したジャーナリストに損害賠償などを求める訴訟を起こしており、弁護士を通じ「捏造も不正もなかったことを実証していただき、たいへん 安堵 した」などのコメントを発表したが、反省や謝罪の言葉はなかった。

 調査委員会の結果は不正行為は無かったものの、非常に不適切であったとの内容となっているが、なぜか多くのマスコミは不正行為が無かったの部分だけ報道し、内容に関してはほとんど触れていない。
 報道の姿勢としていかがなものかと思う次第である。

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