機能性表示食品、健全な制度になるか、魑魅魍魎の世界になるか、どっち???

 

鳴り物入りでスタートする機能表示食品に関して5月26日に全国消費者団体連絡会が、国への意見書と事業者団体への要望書を提出した。
国への意見書http://www.shodanren.gr.jp/database/pdf/312_01.pdf
内容としては
1)国内外の公的機関が安全性や機能性に関し評価を行ったことがあったり、評価柱である製品・機能性関与成分については届け出情報に盛り込み、消費者に情報提供すべき。 これらの公的機関が安全性について疑義を示した製品・機能性関与成分は届け出を受理すべきでない。
2)サプリメント形状の加工食品を、食経験として認めるべきでない。
3)新制度の周知が不足している。
4)消費者が苦情を申し立てたり、相談できる窓口を明確にすべき。
が意見書の内容となる。

1)は日本の食品安全委員会、アメリカのFDA、欧州食品安全機関FESAなど各国の公的機関が、食品の安全性や機能性などの評価をしていて、消費者にとっては信頼性のある情報となっている。
安全性に関しては公的機関のリスク評価が尊重されるべきという内容。
2)に関してはサプリメントに加工された食品は、原料や製法、機能性関与成分の含有量などにより、安全性や機能性に大きな違いが出る。 
XX年の販売実績があるとのメーカーの主張も、原料は製法の変更がなされたか等の情報が明らかで無い。
X年○袋(個、瓶)の販売実績などの記述もあるが、機能性関与成分の量や、何人の何日分の相当分なのか等の説明がない等の内容。
また、消費者の苦情はその企業が対応していて、企業判断で健康被害はないとしているが、その判断が正しいかどうか消費者にはわからない。
具体的な例として機能性表示食品ではないが、カネボウのロドデノール配合の化粧品による白斑被害がある。
カネボウには健康被害の報告が入っていたのに、企業判断で健康被害はないの判断で被害が拡大した。
3)消費者向けの詳しい説明がされていない事につきる。,
4)苦情や被害が発生した際にどこに相談するか判らないと言うこと。
企業任せにすると、企業が自ら都合の良い判断をして被害が拡大する可能性があるから、公的な窓口明確にせよとの内容。

事業者向けへの意見書はこちら
http://www.shodanren.gr.jp/database/pdf/312_02.pdf
1)機能性について科学的根拠(エビデンス)の弱い製品、安全性に疑義を抱かれるような製品の届出は止めてくれ。
2)科学的な情報を、正しく且つ分かり易く消費者に情報提供すべし。
3)消費者を誤認させないよう、正しい表示と適正な広告宣伝をすべし。
の3点になる。

1)だが科学的根拠と言うことになるといささか(?_?)な物が多い。
たとえば
ラクトフェリン
国立健康栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報によると有効性は
『C型肝炎に対して有効性が示唆されている。』と実に素っ気ない。
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail10.html

ヒアルロン酸
『経口摂取によるヒトでの有効性については信頼できるデータは見当たらない。』
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail573.html

コラーゲン
『ニワトリコラーゲンの有効性については信頼できるデータが十分にない。』
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail23.html
さらに、『コラーゲンって本当に効果があるの?』って言うページも存在する。
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail2204.html

葛イソフラボン
『クズイソフラボンは治療目的では、血糖値、血圧、心臓血管系に対する作用が示唆されているが、食品素材として利用する場合のヒトでの有効性については、信頼できる十分なデータが見当たらない。』
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail832.html

等々きりがない。
蹴脂粒の機能性関与成分『キトグルカン(エノキタケ抽出物)』に至っては、最初にトクホとして申請した際、安全性が確認できないとの理由で食品安全委員会に却下されたという曰く付き。
http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc8_nf48_shuushicha_270204.pdf

国立健康栄養研究所の『「健康食品」の安全性・有効性情報』に載っている情報は国としての公的な情報であり、健康食品メーカーのキャッチコピーよりこちらを参考にしたほうが絶対に良い。
「健康食品」の安全性・有効性情報

2)の科学的な情報を、正しく且つ分かり易く消費者に情報提供~に関しては例として次の内容が書かれている。
『一般向け公開情報でも、無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験、エストロゲン様作用、アゴニスト活性等の専門用語が、解説を加えずそのまま用いられている。』
たとえば『エストロゲン様作用』だが、女性ホルモンのエストロゲンと似た働きを持つと言うことを意味するが判りにくいし、『無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験』に至っては専門家でもなければまず判らない。

『摂取 4 週目、8週目、12 週目、16 週目に測定し、プラセボと統計的に有意な差が出ているのが8週目のみで、12週目、16週目には差がないにも関わらず、一般向け公開情報では「摂取8週目で本品を摂取した人のほうが改善する傾向がみられた」と記述するのみの製品があった。重要な情報を漏らすことにより、効果が継続すると錯覚させる手法に見える。 』
たぶんこれのことだろう。
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/A21-kinou.pdf
無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験の様な訳もわからない文言をならべて、何かよく判らないけど十分なチェックをしている様に思わせたり、論文の都合の良いところをつまみ食いする様な事は止めろと言う事を言いたいのだと思われる。

3)に関しては
消費者庁に届出た「表示しようとする機能性」の内容を一部省略、簡略化したり、言い換えしたりしたキャッチコピーが大きく配置された製品があり、誤認を招きかねない内容も見受けられるので、そんな事はしないでくれと言う事。

また、「機能性及び安全性について国による評価を受けたものではない旨」の義務表示は、文字サイズが小さく、他の表示に混じらせてわざと見にくくしている製品が多いと苦言を呈している。
確かにわざと目立たない様にしている製品が多いが中には目につきやすい様に表示している製品もある。

画像は消費者庁の資料より、
小さな文字でわざと読みにくくしている様に思える。 こ~いうのが多い。

これは非常に判りやすいが、こういうのは少数派。

また、日本弁護士連合会も5月9日に機能性表示食品制度に対する意見書を提出している。
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2015/150509.html
趣旨としては
事業者に安全性および品質確保の体制、危機情報公表の体制を義務づけるべき。
生鮮食品に関しては、機能表示食品の対象から外すべき。
届け出制としている事に関し、安全性・機能性に関する国の監督機能を確保するため登録制度にする。
安全性・機能性の要件を満たさない場合、国による登録の取り消しが可能な制度にすべき。
現行の食品表示法の規定ではなく独自の法律にすべきで、法制化までの間、混乱を避けるため現行の制度の運用を見合わせるべき。
など、全国消費者団体連絡会の意見書に比べ寄り踏み込んだ内容になっている。

機能性表示食品制度が健全な制度になるのか、魑魅魍魎が溢れかえるのか、ここ1年が正念場となるだろう。
ただし、機能性表示食品制度やトクホの摂取で健康が維持できるのなら誰も苦労はしません。

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