渡辺雄二氏って科学ジャーナリスト???

 

科学ジャーナリストの渡辺雄二氏によるエナジードリンクに疲労回復や精力増強の効果なし!なる記事がある。
http://news.nicovideo.jp/watch/nw1630537
栄養ドリンクと言われる飲み物にはカフェインと糖分が含まれる物が多く、興奮剤のカフェインの作用で元気が出た様に感じさせる。
カフェイン含有量
・リポビタンD:50mg/100ml
・モンスターエナジー:40mg/100ml
・レッドブルエナジードリンク:43.2mg/100ml
・ロックスター:48mg/100ml
・コーヒー:約34mg~56mg/100ml
・紅茶:約30mg・100ml
・玉露:約160mg/100ml
・煎茶:約20ml/100ml
これらのエナジードリンクのカフェ飲料は日本製の含有量で、本家のアメリカの製品だとカフェ飲料はもっと多い。
また、飲み過ぎでカフェインの過剰摂取になり、死亡の原因は「カフェインの毒性による心臓の不整脈」とされた。
記事にはアルギニンに関して、この程度の量では効果無しとしているが、本家ではタウリンが使用され得ているが、日本ではタウリンは清涼飲料に使用できないので代替えとしてアルギニンが使われる。
ま、エナジードリンクよりティーバッグの紅茶に安物のウィスキーかブランデーを混ぜ、砂糖でも加えた物を飲んだ方がコストパフォーマンスが良いのは間違いない。

ここまでは、まあその通りなのだが次がいけない。

一方で、エナジードリンクには、安全性の疑わしい合成甘味料のスクラロースやアセスルファムKが添加された製品が多いのです。砂糖を減らして、低カロリーにするのが狙いです。
スクラロースは、ショ糖の3つの水酸基(-OH)を塩素(Cl)に置き換えたもので、砂糖の約600倍の甘味があります。しかし、悪名高い「有機塩素化合物」の一種なのです。有機塩素化合物は、農薬のDDTやBHC、地下水汚染を起こしているトリクロロエチレンやテトラクロロエチレン、猛毒のダイオキシンなど、すべてが毒性物質といっても過言ではありません。

そもそも有害物質を並べただけで、スクラロースとは関係ないでしょ。
似た様な名前でも化学的な性質は全く別物の場合が多い。

妊娠したウサギに体重1kg当たり0.7gのスクラロースを強制的に食べさせた実験では、下痢を起こして、それに伴う体重減少が見られ、死亡や流産が一部で見られました。また、スクラロースを5%含むえさをラットに食べさせた実験では、胸腺や脾臓のリンパ組織の萎縮が認められました。さらに、脳にまで入り込むことがわかっています。

この実験の出典を明らかにしていないがたぶんこちらの、厚生労働省が公開している文書だと思う。
http://www.ffcr.or.jp/zaidan/MHWinfo.nsf/0/06717d18e8757f2b4925672e0026538a?OpenDocument
この資料を見ると、催奇形性試験の項目に次の様な記述がある。

(5)催奇形性試験-一日当たり500、1,000、2,000mg/kgの用量のスクラロースを雌ラットの妊娠6~15 日にかけて強制経口投与した試験では、親動物・児動物ともに影響は認められなかった。従って、本試験における無毒性量は2,000mg/kg超であると考えられた。催奇形性は認められなかった。また、一日当たりスクラロースを175、350、700mg/kgの用量で雌ウサギの妊娠6~19日にかけて強制経口投与した試験では、700mg/kgの最高用量においてのみ、親動物に、胃腸障害(下痢等)とそれに伴う体重減少が認められ、死亡例や流産が一部で観察された。しかしこれらは、低吸収性で浸透圧活性を示す物質にウサギは敏感であり、浸透圧効果を示すような化合物の高用量によって生じた非特異的な影響によるものであると考えられた。また、700mg/kgの用量においても胎児の成長や発育に影響は見られなかった。本試験における無毒性量は、親動物で 350mg/kg、児動物では700mg/kg超であると推測される。催奇形性は認められなかった。

要はラットでは2000mg/kgでは異常が無かった、ウサギはスクラロースの様に低吸収性で浸透圧活性を示す物質に敏感で下痢を起こしやすく、流産しなかった胎児に異常は無かったと言っているわけだ。

『胸腺や脾臓のリンパ組織の萎縮が認められました』に関してだが、亜急性毒性試験の項目に次の記述がある。

(2)亜急性毒性試験-ラットにスクラロースを、10,000、25,000、50,000 ppm の用量で、4週間混餌投与した試験では、死亡例は見られなかった。50,000 ppmの用量で、脾臓及び胸腺のリンパ源胞の萎縮が認められた。1、2、4、8%のスクラロースを9週間混餌投与したラットの試験においては、4%以上の用量で、体重の増加抑制や盲腸重量の増加が認められた。ラットに、一日あたり2,000、3,000、4,000 mg/kg の用量を、それぞれ13、9、4 週間強制経口投与した場合には、全用量で盲腸重量の増加が認められたが、毒性学的に意義のある所見は認められなかった。以上の試験において観察された盲腸重量の増加については、低吸収性で浸透圧活性物質の高用量で見られる所見であり、毒性学的意義は乏しいものと考えられる。さらに、マウスにおいても34日間の混餌投与試験が行われているが、特記すべき所見は観察されなかった。

特に異常は無いと言っているわけである。

また、脳にまで入り込む事が判っているという箇所だが、体内動態の箇所に次の記述がある。

(1)吸収・排泄-スクラロースを経口投与した場合、マウス・ラット・イヌ・ヒト間で吸収・排泄・血中動態に差はほとんどないことが示唆されている。排泄に関しては、種によってばらつきがあるもののおよそ60~90%が糞中に排泄される。残りの10~30%は尿中に排泄され、呼気中への排泄はほとんどない。最大血擬値は投与後 30 分~3 時間に観察される。例えば、ラットに 2,000 mg/kg を経口投与した場合には、およそ1時間で10~15μg/mlの最大血擬濃度に達する。ヒトにおけるスクラロースの半減期は、2.5~23時間であった。

(2)分布-ラットにおいて、放射性標識化合物を用いた経口投与による検討では、腸管を除くと、臓器中では肝臓や腎臓が最大値を示したが、24 時間後には血漿レベル以下になった。脳内への分布は低い。

(3)代謝-ラット・イヌ・ヒトにおいて検討した結果、スクラロース経口投与後の尿及び糞中排泄物は、ほとんどが未変化体であったが、イヌ尿中に解毒過程の代謝によるグルクロン酸抱合体が代謝産物の一つとして同定されている。

(4)その他-ヒトにおいてスクラロースは、ショ糖吸収を阻害しない。また、インスリン分泌を増加しない。

脳内の分布は少ないと言っているわけである。
アセスルファムKに関してだが

 また、アセスルファムKは自然界に存在しない化学合成物質で、砂糖の約200倍の甘味があります。犬に、アセスルファムKをそれぞれ0.3%含むえさと3%含むえさを2年間食べさせた実験では、0.3%群でリンパ球の減少が、3%群ではGPT(肝機能障害の際に増える酵素)の増加とリンパ球の減少が認められました。つまり、肝臓へのダメージや免疫力を低下させることが疑われます。さらに、妊娠したネズミを使った実験では、胎児に移行することがわかっています。

こちらも出典が明らかにされていないが同じく厚生労働省の公開文だと思われる。
http://www.ffcr.or.jp/zaidan/MHWinfo.nsf/0/7768026d2059d2334925686900194dab?OpenDocument
反復投与毒性試験(慢性)及び発がん性試験の項目に次の様な記述がある。

また、マウスにアセスルファムカリウムを、0、0.3、1、3%の用量で、80週間混餌投与した試験において、死亡率に対照群と有意な差は認められず、一般状態においても投与に起因した変化は観察されなかった。3%の用量において、雌雄に体重増加の抑制が認められたが軽度であり、毒性学的意義は乏しいものと判断された。雄の全投与群に、肝臓の相対重量の減少が認められたが、用量との間に一定の関係がなく、毒性学的意義は乏しいものと考えられた。病理組織学的検査において、特筆すべき所見は観察されなかった。発がん性は認められない。本試験における無毒性量は、3%(4,200mg/kg体重/日)であると考えられる。
さらに、イヌにアセスルファムカリウムを0、0.3、1、3%の用量で2年間混餌投与した試験において、一般状態、死亡率、体重に有意な影響は認められなかった。0.3%の用量において、リンパ球の減少、好中球の増加が、1%の用量において、血清GPTの減少が、3%の用量において、血清GPTの増加、リンパ球の減少が認められたが、生物学的変動範囲内であり、毒性学的意義は乏しいものと判断された。臓器重量に有意な影響は認められなかった。病理組織学的検査においても、特筆すべき所見は観察されなかった。本試験における無毒性量は、3%(900mg/kg体重/日)であると考えられる。

0.3%の用量において、リンパ球の減少、好中球の増加が、1%の用量において、血清GPTの減少が、3%の用量において、血清GPTの増加、リンパ球の減少が認められたが、生物学的変動範囲内であり問題ないといっているわけだ。
次の記述もある。

アセスルファムカリウムをイヌに2年間混餌投与した試験(1977年)では、無毒性量は最高用量の3%(900mg/kg体重/日)であったが、その後実施されたラットの2年間の試験(1979年)では、子宮内曝露も含めて実験が行われ、種の生涯曝露をより反映しており、且つ実験に供した動物数も多く、より厳密な評価が可能と判断できることから、上記のラットの試験をADIの設定に用いることが従って適切である。

元の文書では異常ないとされているのを、都合の良いところだけとりだしているわけだ。
また、これらの試験は通常の使用量より遙かに多量に使用して安全性の試験をしているわけで、それをもって危険というのはずいぶん無茶という事になる。
スクラロースのADIは15mg/kg体重/日で、体重50kgのヒトの場合15mgX50kg=750mgが許容量となるわけで、スクラロースは砂糖の約600倍の甘さとなる。
750mgのスクラロースをそのまま砂糖に置き換えたとすると0.75gX600=450gととてつもない量になる。
アセスルファムカリウムのADIも15mg/kg体重/日で、体重50kgのヒトの許容量は15mgX50kg=750mgとなり、砂糖の約200倍の甘さなのでそのまま砂糖に置き換えると0.75gX200=150gとなりこちらもかなりの量となる。
平成23年度の食品安全委員会のマーケットバスケット方式による甘味料の摂取量調査によると、スクラロースの一日の摂取量は平均値で0.904mg/人/日、アセスルファムカリウム2.412mg/人/日になる。
http://www.ffcr.or.jp/zaidan/FFCRHOME.nsf/pages/PDF/$FILE/DI-studyH23.pdf

スクラロース、アセスルファムカリウムともアメリカ食品医薬品局(FDA)や欧州食品安全機関(EFSA)も同様の評価をしている。

しかし科学ジャーナリストを名乗る以上、論文等の都合の良いところだけを摘まみ食いするのはいただけませんね。

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コメント一覧

  1. アンチ より:

    この人の著作物を読む機会があり、名前を調べたらこのブログを見つけましたのでコメントさせていただきます。
    本全体がやたらと恐怖心を煽る体で書かれていましたが、
    引用した実験やエビデンス・論文の出典も示されていません。
    何の知識もない人々には「へえ、そうなんだ」と思い込ませるような本でした。
    読むに値しませんでした。時間の無駄。

  2. T より:

    科学ジャーナリストというよくわからない肩書き同様
    具体性に乏しく根拠が見当たらない記述ばかりですね
    とある対談では、ファイブミニを1度飲んでお腹を下した経験があるから体に悪いとか、黒烏龍茶は脂肪吸収を抑制する働きはあるけど、その効果を過信して暴飲暴食をする恐れがあるから悪いとか言っていて、やばい人なんだと確信しました

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