又々、危険な食品添加物「リン酸塩」

 

 ビジネスジャーナルにリンに関する記事が載っている。
 元々は週刊現代の11月4日に掲載された記事に触れている。
 危険な食品添加物「リン酸塩」、セブンやイオンが使用中止の裏事情 

  「週刊現代」(講談社/11月4日号)で食品添加物のリン酸塩が取り上げられた。『血管を詰まらせ、骨が脆くなり、腎臓にもダメージが 危ない食品添加物「リン酸塩」が入っている食べ物はこれだ』と銘打って大特集を組んでいる。筆者も取材を受け、以下のコメントが掲載されている。
 「ハム・ソーセージなどは、リン酸塩を入れることによって肉の水分を保つことができ、プリッとした食感になる。私たちがふだん食べているハムやソーセージは、実は肉本来の食感ではなく、リン酸塩によって生み出されている」
 「リン酸塩が使われていても明記する必要のない一括表示のpH調整剤、酸味料、イーストフード、乳化剤、かんすい、膨張剤などは添加物のブラックボックスと言われている」

 リンは元々、様々な食品に多く含まれる元素である。
 食品から摂取するリンの量は、平成27年国民健康・栄養調査報告によると日本人のリンの摂取量は、男1063mg、女925mgである。
 これは食品に本来含まれるリンの量で、食品添加物由来のリンは含まないとされる。
 食品添加物によりどれだけリンを摂取しているかだが、厚生労働省が実施しているマーケットバスケット調査がある。
 マーケットバスケット方式による年齢層別食品添加物の一日摂取量の調査 
 それによると、20歳以上の大人の摂取量は平均265.6mg(平成25年)、1歳~6歳の小児で203.4mg(平成26年)となっていて、リンの主な供給源は普通の食品からという事になる。

 リンの最大耐用一日摂取量(Maximum Tolerable Daily Intake、MTDI)は、体重1kgあたり70mgとなっている。
 これは「ヒトが生涯毎日摂取しても、病気などの有害な影響が出ない量」のことであり、これを超えるとリスクがゼロではなくなることを意味していて、これを超えても直ちに健康に障害を与えるということでは無い。
 マーケットバスケット調査では、体重16.5kgの子供の体重で対MTDI比を算出していてる。

 体重16.5kgというと大体4歳位の子供の体重である。
 体重16.5kgの子供がどれくらいリンを摂取しているかとなると・・・・
 食品からの摂取量、654mg
 食品添加物、203.4mg
 654mg+203.4mg=857.4mgとなる。(平成26年)
 体重16.5kgの子供のMTDIは
 70*16.5=1155mgであり現状の摂取量が健康に与える影響は少ない。

 大人だとさらにマージンは大きくなる。
 食品からの摂取量、978mg
 食品添加物、265.6mg
 978mg+265.6mg=1243.6mgとなる。(平成26年)
 体重58.6kgの大人の場合のMTDIは
 70*58.6=4102mg

 ハムやソーセージの弾力はタンパク質が立体的な網状に結合しているためだが、それはアデノシン3リン酸(ATP)が重要な役目をしている。
 ATPは生体や屠殺直後の食肉には多く含まれるが、時間が経過するとATPが消失するため弾力が無くなる。
 屠殺直後の食肉を即座に加工すれば良いが、実際は非常に困難である。
 ATPの代わりになる物がピロリン酸塩で、これを添加することにより弾力のあるハムやソーセージができあがる。
 肉の常識:ソーセージはなぜくっつくのか 
 肉の常識:ポリリン酸ソーダの作用はなに?
 これはカマボコなどの水産練り製品も同じ事で、冷凍すり身を使う場合もピロリン酸塩を添加すると弾力がある製品になる。

 ハムやソーセージはリン酸塩を使用した代表的な製品と言われるが、実際はどの程度ふくまれるかというと、次のような論文がある。
 市販ソーセージ類のリン含有量の実態について 
リン酸塩とph調整剤を使用した製品の平均値は180.3±36.9mg/100g、リン酸塩のみを含む製品が163.3±13.8mg/100g、リン酸塩と pH 調整剤共に含まない製品が84.1±18.1mg/100gであった。
 またリン酸塩とph調整剤を使用していても100mg/100g以下の製品もあった。
 ソーセージを1/8にしてカットして茹でることで約10%減らせるとのことだが、あまり変化なしとみた方がよいだろう。
 リンは元々多くの食品に含まれていること考えると、大量にたべるとかしない限り特に問題にならなく、他の食品とのバランスが重要であろう。

 ところが、セブンは過剰摂取の危険性(カルシウムの吸収を妨げ骨粗鬆症の原因になる)を、ファミマは添加物使用の弊害(リン酸塩を減らすことで鶏肉本来の食感を引き出した)を堂々と述べている。まるで、添加物の問題点を指摘したい週刊誌の代弁者のようだ。今まででは考えられないことである。

 ちなみに、イオンリテールも「週刊現代」のアンケートに対し、「グリーンアイフリーフロム」シリーズのハム、ソーセージ5品目では、リン酸塩を使用していないと答えている。

 サンドイッチに使われるハムをリン無添加にしたところで、まぁ大成に影響はないし、ハムやソーセージばかり喰うわけでも無い。
 ま、食品添加物のリンが危険という説が流布する中では、安全性をアピールする絶好のネタにはなるだろうが。

 ところでハムなどの畜産加工品や、カマボコなどの水産練り製品をリン酸塩を無添加で製造する技術も開発されている。
 それはトランスグルタミナーゼという酵素で、味の素が『アクティバ』という商品名で製造販売している。
 トランスグルタミナーゼはタンパク質同士を結合する作用を持つ酵素で、薄切り肉を貼り合わせてステーキ肉にすることも出来、アメリカでは『Meet Glue(肉糊の意味)』の名称で販売されている。
 アクティバシリーズにはいろいろな種類があり、ハムなど畜産加工品に使われるアクティバTG-S、TG-HPや、水産加工品に使われるTG-K、TG-AKなど多くの製品がある。
 おいしさ検索、酵素 

 ちなみに、渡辺雄二センセが書いた『山崎パンはなぜカビないか』お馬鹿な本で、槍玉に挙げられた臭素酸カリウムの代替に使われるのもこのトランスグルタミナーゼ。
 小麦のグルテン等のタンパク質を結合させることで小麦改質剤とし作用する。
 トランスグルタミナーゼは酵素のため、加熱などの処理で不活化していれば表示義務はない。

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