おなじみ、郡司和夫センセの 『超危険シリーズ』香料
郡司センセが『バニラやフルーティー、肉…美味しそうな匂い=超危険な合成香料が蔓延!実験で死亡例も多数』という、おバカな記事を書いている。
食品に使われる香料は、化学合成品が約150品目、天然香料が約600品目あります。それらをいくつも調合し、食品の匂いや香りをつくっています。
重要なものが抜けていて、「エステル類」等の一括名称で指定した18類の分類に該当すると判断した、いわゆる「18類香料」が約3000種類有る。
忘れていたのか、知らなかったのかは判らないが、食品ジャーナリストを名乗る郡司和夫センセとしては、香料の事に触れる以上これに触れないのは大いに片手落ちと言わざるを得ない。
18類香料リスト
日本の食品メーカーの合成香料製造技術は世界一といわれ、どんな匂い、香りもつくり出すことができます。フルーティー、だし風味、とり風味、ミルク風味、松茸スープ、カカオ、ウナギ、アユ……挙げればきりがありません。
これらの香料を組み合わせて様々な香りを作り出すわけで、松茸の香りや果物の香りを作り出せるだけで無く、腋臭や腐った糠味噌の様な悪臭だって作れる。
国によって使える香料は細かな違いはあるが、主要な香料は大体同じで日本だけ特殊というわけでは無く、どこの国でも同じ事をやっている。
合成香料の製造技術が世界一になったのには理由があります。
日本の大手食品メーカーは、とても食材とは呼べないような大豆かす(脱脂大豆)や端肉(くず肉)など、安価で粗悪な原料を使い、工業製品のように大量に加工食品を製造・販売し、大きな利潤を上げてきました。
しかし、粗悪な原料を使えば、必ずクサい匂いが発生します。
この手の記事のおバカなところは、脱脂大豆や端肉を粗悪な原料と切って捨てる事。
脱脂大豆は重量の約50%はタンパク質という優秀な食材で、端肉は食肉加工時に発生する端切れで、食材である事には違いない。
そもそも、ソーセージや挽肉などはそのままでは食用にならない部分を食べやすく加工しただけで、粗悪品というわけでは無い。
ドイツのブルートヴルストは、豚の血液や皮や背脂等で作られているし、フィンランドのムスタマッカラは豚の血液と大麦で作られていて、他にも多くの種類がある。
挽肉も粗悪な材料で作ると言われるが、固くて食べにくい筋などの部分や脂身などを挽きつぶして食べやすく加工したものだし、食品ジャーナリストなる人種からは評判の悪い成型肉も、細かい端肉や内臓肉を軟化剤で柔らかくして結着剤で固め、形状を整え食べやすくした食肉である。
きちんと管理していれば食材に違いないわけで、それを一絡げで粗悪な材料と言い切るなど、食品ジャーナリストとしての見識を疑う。
バニラに似た香り……エチルバニリン(エチルワニリン)かバニリンが使われています。アイスクリーム、キャンディー、チューインガム、チョコレートが代表的な食品。
動物実験では、心筋、肝、腎、脾、胃の粘膜に障害が認められています。
バニリンはバニラから抽出される香料で、合成法、発酵法により合成も出来る。
エチルバニリンは天然には存在しない物質であり、香気はバニリンの2 – 2.5倍ほどとされる。
半数致死量 LD50:2g/kg(ラット経口)
・FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)による安全性評価
ADI(mg/kg bw/day):0~3
注釈:香料として使用の場合、現在の摂取量では安全性の懸念はない。
JECFA、2001年第57回会議
バニラに似た芳香剤としては、クマリンがよく知られていますが、クマリンは肝機能を弱めるため、食品に香料として使うことは認められていません。
しかし、桜餅には違法に使われているとの情報もありますので、注意が必要です。
おいおい!こんないい加減な事を書くのか???
食品にクマリンを使うのは食品衛生法違反で、食品会社としてはあまりにリスクの高い行為で、バレたら食品会社としての信用は失墜するのは間違いない。
絶対に無いとは言い切れないが、桜餅フレーバーの様な合法的な香料もあるし、食品では桜葉パウダーも有る。
合法的に香りを付ける手段がある以上、食品衛生法違反を承知でクマリンを使うとは、非常に考えにくい。
桜餅フレーバー
桜葉パウダー
クマリンは桜の葉等にo-クマル酸配糖体の形で液胞内に閉じ込められているが、破砕や塩蔵をする事によりクマリンが生成し芳香を放つ。
クマリンは食品添加物として認められないが、桜葉パウダーや塩蔵桜葉などは食品扱いとなっている。
バラ、ヒヤシンスに似た香り……ケイ皮アルデヒドを原料に合成したケイ皮アルコールがつくりだす香り。
清涼飲料水、ベーカリー製品、チューインガム、キャンディー、氷菓、ブランデーなどに添加されています。
1グラム以上マウスに与えると、中枢神経麻痺、呼吸麻痺で死亡するケースが報告されています。
また、ケイ皮アルコールには、赤血球細胞を破壊する溶血作用があるといわれています。
シンナミルアルコールはヒアシンスの香りを放つため、食品添加物としても使われるが、香水やデオドラントに使われている。
日本では使用量は少なく、食品には似た香料のシンナムアルデヒドの方が使用量が多い。
急性毒性、LD50
経口:2000mg/kg(ラット)
経皮:5000mg/kg(ウサギ)
・FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)による安全性評価
ADI(mg/kg bw/day):現在の使用を認める
注釈:香料として使用の場合、現在の摂取量では安全性の懸念はない。
JECFA、2000年、第55回会議
ワサビの香り……イソチオシアン酸アリル(揮発ガイシ油)による香りです。
強い刺激臭と辛味がある合成香料で、主に薄めてハンバーグ、ソーセージなど食肉加工品に使われているほか、ピクルス、アイスクリームにも使用されます。
ラットで発育障害や少量でも興奮作用を示します。
また、多く摂取させると呼吸や血管運動中枢が麻痺して筋れん縮を起こし、体温が下がって死亡するという報告があります。
ワサビや辛子やホースラディッシュの辛み成分。
アリルイソチオシアネートとも呼ばれ、辛子やワサビの様なアブラナ科の植物が多く含むからし油配糖体が、種子や地下茎などが破砕される過程で酸素に触れ、細胞にある酵素と反応することにより生成される。
塩化アリルとチオシアン酸カリウムから合成する事も出来る。
急性毒性 LD50
経口:ラット、339 mg/kgおよび490 mg/kg (NTP TR 234(1982))
経皮:ウサギ、88 mg/kg (RTECS (2008)
・FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)による安全性評価
ADI(mg/kg bw/day):現在の使用を認める
注釈:香料として使用の場合、現在の摂取量では安全性の懸念はない。
JECFA、2005年、第65回会議
イチゴ、パイナップルなどフルーツの香り……酢酸エチルを添加した匂いです。
パイナップル、イチゴなどの揮発性成分が酢酸エチルで、アセトアルデヒドの化合物から大量に合成されています。
アーモンド、アップル、バナナ、パイナップル、メロン、ピーチ、ストロベリー、ラムなどのエッセンスのほか、ウイスキー、バターの香料として使われています。
毒性は眼、皮膚、粘膜を刺激し、角膜に障害をもたらします。
熟した果実類に含まれるエステル類の1種で、果実が熟してくると果実内に各種エステル類、アルデヒド類が蓄積され、芳香を発して動物や鳥類を誘引すると言われる。
酢酸とエチルアルコールから合成できるが、日本の場合エチルアルコールに課税されコスト高になるため、日本ではアセトアルデヒドを触媒を使い酢酸エチルに転換する方法が主流。
急性毒性
経口 LD50:ラット、5260mg/kg
吸入 LC50:ラット、16000ppm/6h
・FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)による安全性評価
ADI(mg/kg bw/day):0~25
注釈:現在の摂取量で安全性の懸念はない。1967年に設定されたADIは,第46回会議(1996年) において継続された。
JECFA、1996年、第6回会議
リンゴやバナナに似た香り……酢酸シクロヘキシルが出す香りです。
シクロヘキサノールと酢酸から作られた香料です。毒性は強力な麻痺作用が知られています。
動物に吸入させる実験では、呼吸器粘膜の障害、肝臓、肺にうっ血がみられ、ふるえ、運動失調、麻痺状態が現れ、呼吸麻痺で死亡した例があります。
急性毒性
経口 LD50:ラット、6.75g/kg
経皮 LD50:ウサギ、10.1g/kg
吸入 LC50:ネコ,LC50= 9 mg/L/10.5h(15 mg/L/4h;2580ppm/4h)、
ウサギLC50=9 mg/L/4.8h(10 mg/L/4h;1720 ppm/4h)
・FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)による安全性評価
ADI(mg/kg bw/day):現在の使用を認める
注釈:香料として使用の場合、現在の摂取量では安全性の懸念はない。
JECFA、2002年、第59回会議
この記事の大バカなところは、個別の毒性の事に触れているが、これらは安全性評価時のデータをそのままもってきている事。
動物実験で有害作用の確認のため、通常摂取する量よりはるかに大量の物質を投与するが、そのときの有害作用をそのままもってきている。
どんな物質でも大量に摂取すれば有害になる。
唐辛子の辛み成分はカプサイシンだが、経口の急性毒性は和光純薬工業の安全データシートによるとマウスで47000ug/kg(47mg/kg)となっていて、毒性は強い事になる。
しかし、唐辛子を食べ過ぎても、せいぜい腹痛や下痢くらいで死ぬ事はまずない。
唐辛子で死亡や重度後遺症までに至らないのは、通常はそこまで摂取しない(摂取できない)からだけの事。
香料の使用量は微量で、せいぜい数ppmから数十ppmくらい、香料によれば小数点以下の使用量の物もある。
郡司センセは香料の毒性の事を個別に挙げているが、これは大量に摂取した場合の話で、食品に含まれる香料では無縁の話。
合成香料は、あらゆる食品に添加されるようになっています。
それに伴い、嗅覚異常を訴える人が多くなっています。合成香料の最大の問題点は、人間の鼻(嗅覚)を破壊してしまうことです。
食品に使われる香料で人間の鼻(嗅覚)を破壊なんてことはない。
嗅覚を破壊するほど香料を加えた食品は、臭いがきつくて食い物にはならず、人間の鼻(嗅覚)を破壊など単なる戯言に過ぎない。
ところで、ヒトはどれくらいの香料を摂取しているかだが、2004年に開催された食品安全委員会添加物専門調査会、第8回会合に参考資料として配付された資料に、『 香料 78 品目の摂取量についての日本と欧米の比較』が有る。
香料 78 品目の摂取量についての日本と欧米の比較
この資料は、日本や欧米で使用される主な香料の使用量を比較している。
香料の摂取量だが、この資料によると
日 本: 約 265,000 μg/人/日
米 国: 約 540,000 μg/人/日
欧 州: 約 250,000 μg/人/日
となり、日本と欧州の香料の摂取量はほぼ同じで、アメリカは日欧の約2倍となっていてる。
かねてより、アメリカの食品は香りが強いと思っていたが、この資料がそれを裏付けている。
国により香りの好みがあると思っていたが、香料により国により使用量に差がある物がある。
いずれにしろ、郡司センセが言う様に日本だけが香料を乱用しているわけでではないという事になる。
l-ペリルアルデヒドは紫蘇の葉に多く含まれる成分で、紫蘇の香りの元になっているが、日本では多く使われるが欧米ではほとんど使われていない。
ナチュラルチーズの香りの元となっている酪酸は欧米の方が使用量が多い。
国により好まれる香りが違うのがよく判る資料である。
いずれにしろ『美味しそうな匂い=超危険な合成香料が蔓延!実験で死亡例も多数』というのは戯言ということである。
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