2018年11月9日の午後12時40分頃、JR北海道の千歳線、新札幌駅の下り第一出発信号機が倒れて線路を死傷していたのが見つかった。



この信号機は、まだ国鉄時代の1980年に設置されたままで現在に至っている。
　倒れた信号機は、8本のアンカーごと抜けていた。
　このアンカーはコンクリート打設後に施工する、後施工アンカーと言われる物で、本体打ち込み式アンカーとかグリップアンカーと呼ばれるアンカーであった。

　このアンカーの施工は、打設後のコンクリートにドリルで所定の径、深さの穴を開けてエアーで切子を吹き飛ばした後にアンカーを差し込み、治具を使ってコンクリートにたたき込む。
　するとコンクリートに開けた穴の底部にコーンがぶつかり、アンカーのスリットの部分がコーンで押し広げられて、アンカーがコンクリートに固定され、雄ネジのボルトで構造物を固定する。
　このアンカーは正しく施工すれば確実にコンクリートに固定され、構造物を撤去してもコンクリートに突起が出来ないため、打設後のコンクリートにアンカーを埋め込む場合に良く使用される。
　ただし、コンクリート打設前に施工する埋込みアンカーとの比較では、強度、耐久性とも劣っている。

　倒れた信号機のアンカーの部分を見ると、アンカーの底部は開いていない。

　また、本来あるはずのコーンも付いていなく、コーンは穴の仲に残っていたとされる。
　おそらく、この信号機の設置の際にコンクリートに開ける穴の深さを誤ったのではないか思われる。
　穴が深すぎたため、コーンがアンカーに食い込まなかったため、コンクリートに固定されなかったのではないかと思う。
　当初はコンクリートの穴が狭く信号機は固定されていたが、長年の風等による振動でコンクリートが削れて穴が広がり、強度が下がってしまったのであろう。
　事故当日はかなりの強風で、15.7m/s［9：00］、 18.2m/s［12：00］、19.4m/s［13：00］最大瞬間風速であったとされる。
　グリップの部分が広がっていなくて十分に固定されていなかったため、強風煽られてアンカーごと抜けてしまった。

　JR北海道管内の高架橋、橋梁上の信号機149基の内、アンカーボルトで固定された信号機が99基、そのうち今回倒壊した信号機を含め埋め込みアンカーで固定された信号機は、新札幌駅の下り第二出発信号機の２基であった。

　なお、第二出発信号機は補強材が取り付けてあったが、第一出発信号機には補強材は取り付けられていなかった。

　修復は新たな鉄製の基礎を設置し、補強材も取り付けしたとのことで有る。

　1980年頃は国鉄末期で、職員のミスによる重大事故が少なくなく、国鉄の体質が追求されていた。

　1973年12月26日　関西線平野駅列車脱線転覆事故
　関西線平野駅構内で速度超過で脱線、3名が死亡、149名以上が重軽傷。

　1974年4月21日　鹿児島本線曲線過速度脱線事故
　鹿児島本線西鹿児島　- 上伊集院間で,R300の曲線に、上り特急列車が制限速度65km/hを大きく超える推定95km/hで進入し脱線。

　1976年10月2日 　函館本線貨物列車過速度脱線転覆事故
　函館本線駒ヶ岳 – 姫川間の60km/h制限下り300Rカーブに、下り貨物4781列車が推定110km/h余りで進入し、貨車41両中40両とDD51形機関車が脱線転覆。

　1979年（昭和54年）6月2　信越本線篠ノ井駅列車衝突脱線事故
　信越本線篠ノ井駅において、入換中の貨車7両と長野行き臨時修学旅行電車が衝突、乗客の中学生と教師ら364人が負傷。
　貨車の入替え作業で、貨車に飛び乗ってブレーキをかける構内掛がいるかどうかの確認をしないで貨車を突放、ブレーキがかからないまま臨時列車に衝突。

　1979年11月18日　武蔵野貨物線貨物列車追突脱線事故
　武蔵野貨物線の府中本町駅 – 梶ヶ谷貨物ターミナル駅間の生田トンネル内を走行中の貨物列車が、機関士の居眠りにより停車に至り、停車位置が下り勾配であったために後退し、停止信号で停車中であった後続の根岸駅発宇都宮貨物ターミナル駅行きの石油貨物列車に衝突し貨車4両が脱線転覆、11両が脱線。

　1982年3月15日　寝台特急「紀伊」機関車衝突事故
　機関車付け替えのため名古屋駅に運転停車中の東京発紀伊勝浦行き寝台特急「紀伊」（14系客車6両編成）に、連結しようとしていたディーゼル機関車が約20km/hで衝突し、客車3両が脱線した。負傷者14名。
　事故を起こした機関士は仮眠時間前に飲酒しており、それによる居眠り運転をしたことが原因。

　マスコミによる国鉄職員のモラル欠如の批判が渦巻いてい頃で、国鉄職員の士気も低下していた頃で有った。
　その様な時代背景が影響していたかもしれない。