長野新幹線車両センター水没

   2019/11/07

 10月12日に東日本を襲った台風19号が、各地に甚大な被害を与えた。
 各地の鉄道設備も大きな被害を受けたが、衝撃的なのがJR東日本の長野新幹線車両センターの浸水であった。
 翌13日の未明に千曲川の堤防が決壊し、長野新幹線車両センターが浸水し、12両10編成の車両及び、車両センターの構内が水没した。
 JR東日本の資料によると、屋外で7編成、検査棟で3編成が浸水し、北陸新幹線の車両、30編成の1/3が使用不能という事態になった。

 画像を見る限り、車両の窓枠下側附近まで水が上がっているのが判り、床上まで浸水している。
 台風が来る前に車両を本線上に移動させていれば良かったという向きが有るが、台風本体は関東地方直撃コースで、遙か離れた長野で大規模な浸水があるとは誰もが思っていなくて、本線に移動というのはタラレバ論に過ぎないであろう。

 その後JR東日本から被害状況のプレスリリースが出ている。

 本線も水没した箇所もあるが、長野新幹線車両センターと本線を隔てた反対側にある、電源設備の新赤沼き電区分所も水没し、信号設備が使用できなくなり、長野~上越妙高間の運行が出来なくなった。

 長野新幹線車両センターでは、仕業検査、交番検査、臨時修繕等の設備があったが、いずれも浸水により使用できなくなっている。

 車両も浸水の勢いで脱輪した車両もあり、座席の上部まで浸水し使用出来ない状態となっている。

 JRの発表によると、10月25日より全線運転再開になるようだが、車両不足により通常の80%程度の運行本数になるようである。
 その後、上越新幹線向けの新製車両5編成を北陸新幹線に流用し、上越新幹線の車両運用を見直し列車本数を回復させるということである。
 また、長野新幹線車両センターで行っていた、仕業検査、交番検査が出来なくなったため、JR西日本に協力を求め、白山総合車両所での整備も行うとのことである。

もう一つ、浸水した車両の廃車という説があるが、個人的には一部は修復せざるを得ない気がする。
 鉄道車両メーカーはいずれも受注残を抱えている状態であり、いくら大口のユーザーのJR東日本とはいえ、短期に製作するのは非常に無理がある。
 上越新幹線は2022年度末までに車両をE7系に統一し、これにより大宮駅 ~ 新潟駅間で最大7分程度の時間短縮を予定していた。
 上越新幹線向けの新製車両を北陸新幹線に転用することにより、この予定が遅れることになるし、上越新幹線の車両も老朽化が問題になってくる。
 これを考えると、一部の車両は修復せざるを得ないように考える。

 鉄道の車両の構造は大まかに言えば、台枠に台車をはめ込み、台枠上に車体を乗せた構造となっている。
 早い話、コンテナ用の貨車にコンテナの代わりに車体を乗せたと考えればわかりやすい。
 台枠が車体や床下機器の重量を受け止め、台車を介してレールに重量を伝える構造となっている。
 この基本的な構造は、新幹線でも貨車でも同じである。

Photo by:Kicho- / Wikimedia Commons / CC-BY-SA-3.0-migrated

 事故に遭った車両が修復可能かどうかは、台枠の状態による事になる。
 車体の破損が激しくても台枠に破損や変形がなければ修復可能だし、外見はたいしたことが無くても、台枠に破損や変形があれば修復不能となる。
 今回は浸水のために台車の損傷はなくて、台車も分解整備すれば再使用は可能であろう。 
 台風の雨は塩分を含むため腐食が激しいとの説もあるが、海岸沿いの様に風に巻かれた海水が混ざるのとちがい、内陸部の雨は普通の雨である。
 台枠に激しい腐食はないであろうし、台車は分解整備すれば再利用可能、車体も内装は交換せざるを得ないとしても再利用可能であろう。
 浸水した電子機器や配線は全滅と思って良いだろう。
 最近の車両はこの様な電装品のコストの比率が高くなっていて、これが修理しても新製と大して費用が変わらないという説となっている。
 時間的にはゼロから作るより、修復の方が有利と思われる。
 ま、最終的にはJR東日本の判断次第という事になる。

今回は長野新幹線車両センターが浸水したが、他にも全国の車両基地で浸水のハザードマップに入っているところが有る。

 JR北海道
  ・函館新幹線総合車両所
   北海道亀田郡七飯町字飯田町167

 JR東日本
  ・新幹線総合車両センター
   宮城県宮城郡利府町

  ・秋田車両センター
   秋田県秋田市楢山城南新町

  ・新潟新幹線車両センター
   新潟県新潟市東区

  ・東京新幹線車両センター
   東京都北区

  ・長野新幹線車両センター
   長野県長野市赤沼

 JR東海
  ・大井車両基地
   東京都品川区八潮

  ・浜松工場
   静岡県浜松市中区

  ・鳥飼車両基地
   大阪府摂津市

 JR西日本
  ・博多総合車両所広島支所
   広島県広島市東区

 JR九州
  ・熊本総合車両所
   熊本県熊本市南区富合町

 1m以上の浸水の可能性が有るとされるのは
 ・函館新幹線総合車両所
 ・長野新幹線車両センター
 ・浜松工場
 ・鳥飼車両基地
 ・博多総合車両所広島支所
 ・熊本総合車両所
 鳥飼車両基地などは、国鉄時代の昭和42年7月豪雨で実際に浸水が起きた事がある。
 この時は車両数も少なかった事も有り、全車両を本線上に移動させていたために車両の浸水は起きなかった。
 また、この当時は車両の待避訓練も行われていたとの事で有った。

 JR各社、長野新幹線車両センターの浸水を他山の石として、しっかり対策してほしいものである。

 2019年11月7日追加
 JR東日本と西日本は11月6日に水没した10編成、120両の廃車を決定した。
 JR東日本は、浸水した車両の帳簿価格を9月末時点で118億円だとしており、再利用できる部品を精査し今後損失を計上。
 JR西日本は2編成廃車の損失額は30億円と算出している。

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