アムトラック特急列車脱線事故

 

 アメリカペンシルバニア州、フィラデルフィア市で現地時間12日夜ワシントン発ニューヨーク行行き188列車が、フィラデルフィア市の30番街駅より12.5㎞ほどニューヨーク寄りのフランクフォード・ジャンクションで脱線し多数の死傷者が出た。
 現場のフランクフォード・ジャンクションはアムトラックが所有する北東回廊線に所属し、30番街駅方からの線路は直進する形でアトランティック方面に向かうアトランティック線が分岐し、北東回廊線は左に大きく曲がるが188列車はこの曲線部分で脱線した。
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事故
 重量のある機関車は脱線したものの横転は免れたが、後続の客車は脱線横転し8人死亡、100人以上が負傷した。
 事故原因としては速度超過が疑われていて、曲線部の制限速度が時速50マイル(80km/h)のところ100マイル(160km/h)以上の速度で進入したと伝えられた。
 今回の事故の機関車は2014年製のシーメンスが製造した機関車で、搭載されていたデータ記録装置のデータによると、脱線する65秒前には112km/hで走っていたが、43秒前には直線区間の制限速度の128km/hに達し、その後も加速を続け16秒前には160km/hに達し、曲線部に入る直前に非常制動がかけられ、直後に脱線したとのこと。
 脱線現場の近くの待避線には石油輸送列車が停車していて、機関車がもう少し暴走していたら大惨事になりかねない状況だった。
事故
 速度超過が事故につながったとの見方が強まるが、連邦運輸安全委員会(NTSB)によるブランドン・ボスティアン運転士の事情聴取ではノースフィラデルフィア駅を通過した後のことは何も覚えていないという。
 この急加速が故意なのか急な体調不良で意識がなくなったためなのかは不明だが、曲線部の速度超過が原因の事故として10年前の福知山線列車脱線事故がある。
 2005年4月25日午前9時18分ごろ、福知山線塚口駅 – 尼崎駅間の右カーブ区間(曲率半径300m。塚口駅の南約1km、尼崎駅の手前約1.4km地点、速度制限70km/h)に時速約116kmで進入し、1両目が外へ転倒するように脱線し続いて後続車両も脱線した。
 フランクフォード・ジャンクションの曲線部も福知山線の曲線部も速度超過に対する保安装置は取り付けられていなかった。
 福知山線ではATS-SWからATS-Pへの変更をしていたが、その当時は曲線部での速度超過防止のためATS地上子の取り付け義務はなく取り付けされていなかった。
 アメリカでは2008年には、相次ぐ鉄道事故の調査結果を受けた米議会が、15年末までに脱線・衝突事故を防ぐ新技術の導入を鉄道会社に義務付ける「鉄道安全性改善法」を採択した。
 新法成立後の数年間に、全米で最も利用者が多い、ワシントンとボストンを結ぶ「北東回廊」の路線では事故防止の列車制御システム、PTC(Positive Train Contril)が導入されたがその後、超党派の議員団が15年までの導入期限を5年間延長する法案を提出、今年3月末に可決された。
 だが当のアムトラックは新法制定後、コストがかかり過ぎ、期限が厳し過ぎるとして、政府と議会に安全基準の見直しを訴え、ロビー活動を展開。導入期限を2020年まで延長させることに成功した。
 そのため本来なら今年末までに取り付けられたはずの速度超過の保安装置が取り付けされなかったわけで、予定通り取り付けられていたら今回の事故は回避できた可能性は高い。
 残念ながら、歴史は繰り返すのことわざ通りになったわけである。

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