フットケア商品で化学やけど

 

 国民生活センターは、2019年3月7日付けで靴下状の袋を使ったフットケア商品による化学やけど等に関し、注意喚起をしてる。

 靴下状の袋に入った薬剤に足を浸すことにより、足裏の角質をはがしすべすべにするという商品が販売され、法的には化粧品扱いの商品である。
 これらの商品は、グリコール酸、乳酸、サリチル酸等、ヒドロキシ酸と呼ばれる成分が配合され、角質を剥離するケミカルピーリングと呼ばれる手法である。
 国民生活センターのwebサイトによると、2013年度~2019年1月15日までの登録分で26件、酸を使ったフットケア商品で26件情報が寄せられ、治療に一ヶ月以上要した事例や、一時的に痛みで歩行障害の例もあったとのことである。
 また、これらの商品の通販サイトのユーザーの評価でも、かぶれとか痛みの例もあり、実際にはもっと多くの健康障害があると思われる。


 これらの、グリコール酸、乳酸等は果物や野菜等に含まれる成分で、αヒドロキシ酸の略でAHAと呼ばれたり、フルーツ酸との俗称もあり、細胞に対して優しいとの説も多い。
 フルーツ酸 
 フルーツ酸のお話 
 自然の成分で安全で、美容に効果的としている説が多い。
 しかし、グリコール酸は2016年7月1日付けで、グリコール酸及びこれを含有する製剤(グリコール酸3.6%以下を含有する物を除く)が、毒物劇物取締法の劇物に指定されている。
 薬生発0701第1号  
 また、乳酸自体は刺激の少ない物質であるが、高濃度であれば刺激性が強い、.
 サリチル酸はβヒドロキシ酸の一種で角質軟化作用があり、魚の目、タコ、イボ取りの医薬品にも使われるが、化粧品としては0.2%以下の配合しか認められていない。
 スピール膏 
 イボコロリ 
 化粧品基準 

 ケミカルピーリングは1990年代に、欧米で広く行われていた美容法として日本でも広く行われる様になった。
 しかし、国民生活センターに腫れや炎症等の相談が多く寄せられる様になった。
 美しくなるはずが…美顔エステ「ピーリング」でやけど状態に! 
 当時の厚生省としても早急な対応が必要となり、厚生省健康政策局医事課長通知で、「ケミカルピーリングは業として行われれば医業に該当する」と明言している。
 医師法上の疑義について(回答)医事第59号 

 一方、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、αヒドロキシ酸濃度が10%以下で、pH3.5以上であれば化粧品に配合しても安全性に問題ないとしている。

 Based on the available information included in this report, the CIR Expert Panel concludes that Glycolic and Lactic Acid, their common salts and their simple esters, are safe for use in cosmetic products at concentrations ≦10%, at final formulation≧pH 3.5。

 この報告書に含まれている入手可能な情報に基づいて、CIR専門委員会は、グリコール酸と乳酸、それらの一般的な塩およびそれらの単純なエステルは、最終的な製品でpH3.5以上、10%以下の濃度で化粧品に使用するのに安全であると結論した。
 Guidance for Industry: Labeling for Cosmetics Containing Alpha Hydroxy Acids   

 日本皮膚科学会のサイトによると、安全性が最優先されるために、TCA(トリクロール酢酸)、フェノールの使用は禁止され、グリコール酸については「pH3.0以上、濃度10%以下」であればエステティックサロンでも用いて良いのではないかという厚生労働省の研究班の報告があり、その条件下でケミカルピーリングを行っているエステティックサロンもあるが、法的にはグレーゾーンということである。
 皮膚科Q&A ケミカルピーリング  
 注)グリコール酸は2016年に3.6%以上を含む製剤は劇物となったため、3.6%を超えるグリコール酸を含む製剤は、エステでは使えなくなった。

 今回、国民生活センターが5品目テストしてるが、次の問題点があると強いる。
  ・テスト品目のうち1品目がFDA において、化粧品として安全であるとされる10.0%を超えていた。
  ・テスト対象商品本体や添付の説明書に、足裏の皮膚がはがれた写真が掲載されていたがこれらの写真が、使用した消費者が皮膚の障害か正常な状態かを判断できない可能性が有るとしている。

  ・いずれの商品も、使用後の数日後に皮膚がはがれるとの表示があり、使用時間の表示があるが、使用中に皮膚に対する影響を判断し、使用時間を最適に調整することは困難としている。
  ・いずれも履いただけで足裏の角質が剥がれると受け取られる表示があり、化粧品の効能効果の範囲を超える可能性が有る。
  ・5品目中4品目には、使用前にパッチテストを行う旨の表示があったが、パッチテストはアレルギー性接触皮膚炎の原因を調べる手段であり、化学やけどの発症を調べるものではない。
等を指摘している。
 国民生活センターは行政への要望として、これらの商品にはグリコール酸や乳酸等、ケミカルピーリングに使用される成分が配合されており、また、履くだけで角質が剥がれると受け取れる表示がみられたことから、化学物質の作用による角質の剥離を目的とした商品であり、作用が強く、化粧品の効能効果の範囲を超えるおそれがあると考えられ、厚生労働省に調査の上、必要に応じて、医薬品医療機器等法上の分類等について見直すことも含め、検討を行うよう要望するとしている。
 報道発表資料 酸を使ったフットケア商品 

 現在これらの商品は化粧品扱いだが、今後の調査の結果次第では、これらの商品は成分や濃度によって、医薬部外品等に分類される可能性が有る。

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