子宮頸がんワクチン研究班捏造2

   2016/08/29

 Wedge7月号に掲載された『子宮頸がんワクチン薬害研究班、崩れる根拠、暴かれた捏造』という記事に対し、厚生労働省研究班代表で、信州大学医学部長で副学長の池田修一教授が、出版社ウェッジと当時の編集長、記事を執筆したジャーナリストを相手取り、東京地裁に提訴した。
 本ブログでも『子宮頸がんワクチン研究班捏造』なる記事を書いている。

 この件の推移としては、
 2016年3月16日に行われた厚生労働科学研究事業成果発表会で、池田班の発表内容は
  ・患者の症状からワクチンが脳障害を起こしている疑いがある。
  ・その原因は、自己を攻撃する異常な免疫である自己抗体にあり、関連する遺伝子が存在すること。
  ・脳障害がマウスを使った実験でも確認された。
 という内容であった。
 子宮頸がんワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確立と情報提供についての研究

子宮頸(けい)がんワクチン接種後の健康被害を訴える少女らを診療している厚生労働省研究班代表の池田修一信州大教授(脳神経内科)は16日、脳機能障害が起きている患者の8割弱で免疫システムに関わる遺伝子が同じ型だったとの分析結果をまとめた。
 事前に遺伝子型を調べることで、接種後の障害の出やすさの予測につなげられる可能性があるという。厚労省内で開かれた発表会で公表した。
 研究班は信州大と鹿児島大で、ワクチン接種後に学習障害や過剰な睡眠などの脳機能障害が出た10代の少女らの血液を採り、遺伝子「HLA?DPB1」の型を調べた。
 その結果、「0501」の型の患者が信州大で14人中10人(71%)、鹿児島大で19人中16人(84%)を占めた。
 「0501」は一般の日本人の集団では4割程度とされ、患者の型に偏りが見られた。
 池田教授は「ワクチンの成分と症状の因果関係は分からないが、接種前に血液検査でHLAを調べることで発症を予防できる可能性がある」と話した。
 研究班は今後、対象を手足の痛みなど別の症状のある患者も含めて150人に広げ、発症の仕組みなどについて研究を続ける。
 子宮頸がんワクチンは2009年12月以降、小学6年から高校1年の少女を中心に約338万人が接種を受けたが、副作用報告が相次いで13年6月から接種の呼び掛けが中止されている。【斎藤広子】
 免疫異常誘発の可能性
 厚生労働省研究班の今回の分析は、子宮頸がんワクチンの接種を引き金に免疫機能が異常をきたし、過剰な反応が起きている可能性を示す。
 調査数が少なく「科学的に意味はない」(日本産科婦人科学会前理事長の小西郁生・京都大教授)との指摘もあるが、厚労省の専門家検討会が原因とみている接種時の痛みや不安に伴う「心身の反応説」とは異なる観点からの研究で、今後が注目される。
 世界保健機関(WHO)は同ワクチンの安全宣言を出し、接種を事実上中断している日本の対応を批判している。
 名古屋市も昨年、7万人対象の調査で接種者と未接種者の間に発症差はなかったと発表しており、接種再開を求める声も強い。
 ただ、患者らが訴える症状の原因は、解明の途上だ。研究班は複数のワクチンをマウスに接種する実験で、子宮頸がんワクチンを打ったマウスの脳だけに神経細胞を攻撃する抗体が作られたとしている。
 また、人種差があるHLA型に着目した研究は、国ごとに違う副作用発生率を比較するのに役立つ可能性があり、新たな知見が得られるかもしれない。
 接種再開の議論をする際は、こうした原因解明の取り組みや治療法の開発の状況を考慮することが求められる。【斎藤広子】
 毎日新聞2016年3月16日

 しかし、この発表内容に疑問を持つ内容の問い合わせが相次いだ厚生労働省は、池田班の発表に問題があったことを認める文書を出す事態となった。
 平成28年3月16日の成果発表会における発表内容について 

 この発表会において、一部報道で取り上げられたように、研究班の研究者から、HPVワクチン接種後、記憶障害など「脳の働きの異常と考えられる症状」が出た患者の方々のうち、33名の遺伝子を調べたところ、26名の方(約8割)が同型の遺伝子を持っていたというデータが公表されました。
 このデータは、症状が出た方のみについて集計されたものであり、HPVワクチンと脳の症状との因果関係を示したものではありません。また、少数のデータであるため、約8割という数字は、確かなものとは言えないと考えられます。
 したがって、このデータからは、HPVワクチンが記憶障害などを起こすと言うことはできず、この遺伝子を持っている方に、HPVワクチンを接種した場合、記憶障害などを起こす可能性が高いと言うこともできません。

 その後Wedgeの7月号に、子宮頸がんワクチンの捏造疑惑が掲載された。
 この記事は国の資金での研究結果が捏造であるとの指摘で、非常に重大なないようである。
 この記事が真実であれば、国の資金で行われた研究がデタラメと言う事になるし、記事の方が捏造と言う事になれば池田教授の名誉が毀損された事になる。
 ところが、当事者の厚生労働省を含め、テレビ、新聞、大手の週刊誌など、この件が無かったかの様な態度を取った。
 その後、信州大学が6月27日に学内規定に基づく調査委員会を設置する方針を決めたという、簡単な内容が報道されていただけだった。

 子宮頸(けい)がんワクチン接種後の健康被害を訴える女性らを診療している、厚生労働省研究班代表の池田修一・信州大教授(脳神経内科)が、3月に発表した研究内容について、不正を疑う通報があり、同大は27日、学内規定に基づく調査委員会を設置する方針を決めた。
 池田教授らの研究班は、免疫機能が自分の体を攻撃する「自己免疫疾患」を起こしやすいよう遺伝子操作を行ったマウスに、子宮頸がんワクチンと他のワクチンを打ち、反応を調べた。
 発表では、子宮頸がんワクチンを打ったマウスの脳組織にのみ、自分の体を攻撃してしまう抗体が沈着していたと説明した。
 しかし、外部の医療関係者らから詳しい実験データの開示を求める声や、実験自体への疑義が上がっていた。
 調査委はまず、予備調査を実施し、必要に応じて、過半数を外部有識者で構成する組織で本調査を行う方針という。池田 教授は現在、副学長、医学部長を務めている。
 毎日新聞  6月27日

 その後、8月3日になって本調査を実施する事を発表した。

 信州大は3日、子宮頸(けい)がんワクチンの副作用などを研究している厚生労働省研究班代表の池田修一教授(脳神経内科)の発表内容について、外部の有識者を加えて本調査を実施すると発表した。
 不正を疑う通報があり、6月に予備調査を始めていたが、より詳しく調査を進める必要があると判断した。
 池田教授は今年3月、厚労省内で研究班の調査内容を発表。自己免疫疾患を起こしやすく遺伝子操作したマウスに、子宮頸がんワクチンや他のワクチンなどを打って反応を調べたところ、子宮頸がんワクチンを打ったマウスだけに異常な抗体が見られたとの内容だった。
 だが、外部の研究者らから研究手法などに疑問が示されていた。
 池田教授は代理人を通し「不正行為はどこにもない」などと反論するコメントを発表した。
 大学の規定によると、本調査は過半数を外部の有識者で構成する委員会で、今後おおむね30日以内に始める。開始からおおむね150日以内に、不正かどうかを判断する。
 2016年8月3日11時09分 朝日新聞 DIGITAL

 予備調査をした上で、必要があれば過半数を外部有識者で構成する組織で本調査を行うという。
 予備調査の上で本調査に移るわけだが、実際のところ信州大学が不正を認めるかどうかは不明。
 このような調査委員会や第三者委員会なる調査が、一種のアリバイ工作として使われる事は珍しくない。
 大学や研究機関、小中学校、自治体などで調査委員会がでたらめな調査をしてきたのを何度も見てきた。
 信州大学の調査委員会はどんな結果をだすのだろうか。

 そして8月17日にWedgeを提訴したわけである。

 子宮頸(けい)がんワクチンの健康被害に関する研究は「捏造(ねつぞう)」だとする記事で名誉を傷つけられたとして、信州大副学長の池田修一教授が17日、記事を掲載した月刊誌「Wedge(ウェッジ)」の発行元とジャーナリストらを相手に、計約1100万円の損害賠償などを求める訴訟を東京地裁に起こした。
 訴状によると、同誌の7月号は、池田教授が代表を務めた厚生労働省研究班のワクチンに関する研究成果について、「崩れる根拠、暴かれた捏造」と題する記事を掲載。池田教授側は「捏造をした事実はない」と主張している。
 発行元は「十分な取材に基づいたもので、法廷で真実を明らかにする」とコメントした。
 研究成果は、ワクチンを接種したマウスにだけ、脳に異常な抗体ができたとする内容。信州大は、不正の有無について調査委員会を設置して調べている。 
 時事通信  2016/08/17

 この訴訟には、強い違和感を感じる。
 なぜなら、科学者なら科学的な発表である研究に対する捏造疑惑に対して、反論する手段があるから。
 科学者なら、学会や論文で、具体的なデータを開示して反論すれば良い事。
 実際のところ、研究発表や論文に対して、妥当な内容なものも有れば誹謗に近いものも含め、クレームは少なくない。
 それに対して、論文等でデータを開示して反論すれば良い。
 そうした行程を経る事により、論文や研究の信頼性が上がる。
 捏造疑惑を科学の場で解決せず、司法の場に移すのかということに違和感を感じる。
 鳥越俊太郎の男女関係問題の様な事は、水掛け論になりやすいが、科学の世界ではデータが結果を出せる。
 司法の場に移った以上そちらで白黒付ける事になる。

 池田教授は3月16日のTBSのニュース23で、「子宮頸がんワクチンを打ったマウスのみ、脳の海馬に異常な抗体が沈着し、海馬の機能を障害していそうだ。」と鬼の首を取った様な発言をしている。
 ところで、弁護士ドットコムの記事に次のようなことが書かれている。

 これに対し、池田教授側は、3月の発表は研究班の代表として、ほかの所属メンバーの研究成果を公表しただけだと主張。
 プロジェクトの研究者はそれぞれ独立しており、自身は問題となった研究への関与や指示をしたことはなかったとしている。
弁護士ドットコム 

 いわばプロジェクトリーダーの立場の人がこう言った無責任な事をいっている事になる。
 手柄は自分のもの、責任は他人のものという事??

 この記事を書いたライターの『村中璃子オフィシャルサイト』で次の様に述べている。

 本日15時より、信州大学医学部長である池田修一教授が「司法記者クラブ」にて、薬害弁護士を立て、名誉棄損であるとして私たちを訴えるという記者会見を行いました。
 周到な取材と科学的検証に基づいて執筆した、子宮頸がんワクチンのマウス実験に関する科学不正を指摘した記事に対し、医学部長で副学長という立場にもあり、厚労省の指名を受け、税金を使って研究を行う大先輩の医師が、科学の問題を科学の場で反証することをせず、法律の問題にすり替えてきたことを極めて遺憾に思います。
池田氏が活動家ではなく研究者を標榜し、研究者としての名誉棄損を訴えるのであれば、まず、科学の場で不正が無かったことを立証すべきです。
 しかし、8月3日、池田氏は信州大学の予備調査委員会において、不正は否定できず、本調査の必要があるとの結論がでたのを受け、メディアに対して名誉棄損で提訴の予定との通知を行いました。
 そして、版元に対し、記事を削除しなければ私や版元を訴えるとの通知を行い、今日に至りました。
 子宮頚がんワクチンの問題は、私にとって他のテーマに比べてプライオリティの高いテーマというではありません。ひとりの医師として書き手として、この問題についても他のテーマと同様、公衆衛生的観点と科学的見地に立った執筆をして参りましたが、子宮頸がんワクチンの接種を積極的に推奨することもしていません。
 ワクチンメーカーから金を受け取って執筆をしているといった誹謗中傷もありましたが、一切の利益相反関係もありません。
 むしろ、ワクチンメーカーが間接的なスポンサーであることの分かった講演会は直前でも断るなどして、知らぬ間に利益相反関係が生じることすらないよう、細心の注意を払って参りました。
 執筆に関して私が受け取っているのは、既定の原稿料のみです。
 池田氏による提訴という信じがたい行為を始めとする様々な圧力を受ける中、肝心の執筆が滞っておりますが、1日も早く執筆に集中できる日が訪れることを強く希望しております。

 子宮頸がんワクチンに関しては、患者団体が製薬会社と国を相手に裁判を起こしている。
 この捏造疑惑は別としても、かなり厳しい裁判となると思う。
 薬害裁判で原告側が勝訴しているケースとして、薬害エイズ、薬害C型肝炎などが有るし、薬害では無いが注射器の使い回しによるB型肝炎訴訟もある。

 薬害エイズは、血友病患者の治療に非加熱血液製剤が使われた事が原因となった。
 非加熱製剤が危険と言う事で、加熱製剤が承認された後も非加熱製剤の回収などの処置は行われず被害が広がった。
 薬害エイズは刑事事件にもなっている。

 薬害C形肝炎に関して言えば、C型肝炎ウィルスに対する処理方法が拙く、C型肝炎ウィルスに汚染したフィブリノゲン製剤により感染が広がった。
 日本で使用されていたフィブリノゲン製剤は、β-プロピオラクトンでウィルスの不活化処理がされていて、これはB形肝炎ウィルスに対する処理だったが、結果としてC形肝炎ウィルスにも有効であった。(この当時はC型肝炎ウィルスの存在は確認されていなかった)
 1985年に不活化処理をHBsグロブリン付加に変えたため、C型肝炎ウィルスに対しては無効となった。
 HCVに対し有効な不活化法と確認された(有機溶媒(Solvent)・界面活性剤(Detergent)処理)加熱製剤の発売は1994年となっている。
 
 B形肝炎に関しては、欧米ではすでに第二次世界大戦以前に、注射器や注射針の使い回しが危険という研究や論文が数多くあった。
 それらの事実が、国や製薬会社の責任を追及する事となった。

 子宮頸がんワクチンに関しては、2013年6月に世界保健機関(WHO)の諮問機関である「ワクチンの安全性に関する諮問委員会(GACVS)」は、オーストラリアで報告された ワクチン接種後の眩暈と動悸、および日本で報告された5人の慢性疼痛について、「現時点ではHPVワクチンを疑わしいとする理由はほとんどない」という見 解を示した。
 GACVS Safety update on HPV VaccinesGeneva, 13 June 2013  
 子宮頸がん征圧をめざす専門家会議による翻訳   
 2015年11月5日には欧州医薬品庁(EMA)が、子宮頸がんワクチンが安全であるとの声明を出していて、子宮頸がんワクチンが複合性局所疼痛症候群=CRPS=や体位性起立性頻拍症候群=POTS=を引き起こすことを支持する根拠はないと結論した、という強い論調で副作用の懸念を否定している。
Review concludes evidence does not support that HPV vaccines cause CRPS or POTS  
 また、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)、国際産婦人科連合(FIGO)なども安全性に問題ないとしている。
 国際的に有力な機関、組織が子宮頸がんワクチンの安全性に問題ないとしている中で、安全性を否定する事は非常に難しいのでは無いかと思われる。

 

 目一杯の蛇足
 鳥越俊太郎の話題がチョロっと出たが、鳥越俊太郎が東京都知事に当選していれば、東京都民の良識が疑われるところであった。
 ハフィントンポストのインタビューで他人に責任転嫁する様な事ばかり言っていて、有権者にまで責任転嫁するようなことを言っている。
 「ペンの力って今、ダメじゃん。だから選挙で訴えた」
 「戦後社会は落ちるところまで落ちた」
 >今の国民ははっきり言うと、ボケてますよ。私に言わせると。
 オマエだけには言われたくないね!!

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