子宮頸がんワクチン研究 厚生労働省の見解

 

 厚生労働省は11月24日に、本年3月16日に開催された成果発表会での池田修一信州大学教授の内容に関しての見解を発表した。

 平成28年3月16日の成果発表会における池田修一氏の発表内容に関する厚生労働省の見解について

 厚生労働省では、HPVワクチンを接種した後に生じた「運動障害」や「慢性の痛み」などの症状について、被接種者とその家族に対して、「適切な医療を提供する」ことに資することを目的として、平成25年度から、厚生労働科学研究事業で2つの研究班、「子宮頸がんワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確立と情報提供についての研究(代表:信州大学医学部 池田修一教授)(以下、池田班)」※と、「慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究(代表:愛知医科大学学際的痛みセンター 牛田享宏教授)(以下、牛田班)」※を設置して研究を進めてきました。
 ※ 研究課題名は平成28年度のもの

 平成28年3月16日、地域において適切な医療を提供するという観点から、池田班、牛田班の研究の成果(主に治療成果)を、協力医療機関等の医師に対して情報提供を行うために成果発表会を開催したところ、池田班より、HPV ワクチンを接種したマウスのみに自己抗体の沈着を示す陽性反応があった、との報告がありました。これに対して、一部報道よりねつ造の指摘があり、また池田修一教授が所属する信州大学が外部有識者による調査委員会を設置して調査しました。
 この度、信州大学の調査が終了し、以下の内容が公表されました。
マウス実験は、各ワクチン1匹のマウスを用いた予備的なものであった。
予備的な実験であったため、結果の公表に際しては特段の配慮がなされるべきであった。
池田氏が発表で用いたスライドには、マウス実験結果を断定的に表現した記述や、自己抗体の沈着、といった不適切な表現が含まれていた。
前述より、マウス実験の結果が科学的に証明されたような情報として社会に広まってしまったことは否定できない。
池田氏に対し、混乱を招いたことについて猛省を求める。
 厚生労働省としては、厚生労働科学研究費補助金という国の研究費を用いて科学的観点から安全・安心な国民生活を実現するために、池田班へ研究費を補助しましたが、池田氏の不適切な発表により、国民に対して誤解を招く事態となったことについての池田氏の社会的責任は大きく、大変遺憾に思っております。
 また、厚生労働省は、この度の池田班の研究結果では、HPVワクチン接種後に生じた症状がHPVワクチンによって生じたかどうかについては何も証明されていない、と考えております。

  子宮頸がんワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確立と情報提供についての研究 
 この発表の主な趣旨は、ワクチン接種後に脳障害を起こした患者のヒト白血球抗原(HLA)を調べたところ、信州大学では14人中10人(71%)、鹿児島大学では19人中16人(84%)が、HLA-DPB1 05 01という型の遺伝子を持っていたという内容であった。
 一般の日本人の集団では40%程度とされる。
 
 子宮頸がんワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確立と情報提供についての研究 53ページ

 子宮頸がんワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確立と情報提供についての研究 54ページ

 これをマスコミが、HLA-DPB1 05 01が子宮頸がんワクチンの副反応の原因と言わんばかりの報道をしたわけである。
 3月16日のTBSテレビのNEWS23で、池田教授が『ワクチンを打った後、こういう脳障害を訴えている患者の共通した客観的所見が提示できている』と言った趣旨の発言をしていて、発表会の内容が確定的な結論を得たといわんばかりの印象づけている。
 これに関しては、4月18日に厚生労働省がこれらの報道を打ち消す発表をしている。

 「HPVワクチンで脳障害」は誤り、厚労省
 厚生労働省は4月18日、さきごろ一部メディアで「HPVワクチン接種後脳障害などの発症者の8割に特定の遺伝子多型が見つかる」との報道に対する見解を発表。報道のもととなった信州大学の池田修一氏らの研究班が示したデータからは「特定の遺伝子多型を持つ人に同ワクチンを接種した場合記憶障害を起こす可能性が高い」などと言うことはできないとして、報道内容の正確性に疑問を呈した。厚労省が報道に対してこうした声明を出すのは異例。
m3.com 

 平成28年3月16日の成果発表会における発表内容について 

 その後、Wedge7月号がマウスによる実験が捏造であるという報道をした。
 発表会で使われたパワーポイントでは、NF-κBp50 欠損マウスに、インフルエンザワクチン、B型肝炎ワクチン、子宮頸がんワクチン(サーバリックス)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を接種したところ、サーバリックスのみ自己抗体(IgG)がマウス海馬へ沈着したとなっていた。
 
 子宮頸がんワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確立と情報提供についての研究 59ページ
 
 子宮頸がんワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確立と情報提供についての研究 62ページ 

 ところが実際には、接種マウスから血清を採種し、これを無垢のマウス等の脳組織に反応させる手法が採られていて、実際の実験と発表した内容が異なっていた。
 また、各ワクチンとも1匹のマウスの結果で、予備実験のレベルで有ったにもかかわらず、確定的な結論を得たかのような印象を与える事になった。
 Wedgeの記事は、この画像の実験が捏造としたわけだが、調査委員会は捏造までは無いとしたが、発表の方法が不適切とした訳である。

 それにしても・・・・・・
 >厚生労働省としては、厚生労働科学研究費補助金という国の研究費を用いて科学的観点から安全・安心な国民生活を実現するために、池田班へ研究費を補助しましたが、池田氏の不適切な発表により、国民に対して誤解を招く事態となったことについての池田氏の社会的責任は大きく、大変遺憾に思っております。
 との事だが、厚生労働省は一番の当事者にもかかわらず他人事の様な見解は無責任としか言いようがない。
 本来なら捏造疑惑が出た段階で自ら調査をすべきものを、信州大学の調査委員会に丸投げした形で、池田教授を批判するのはおかしい。

 おかしいと言えば、信州大学の調査委員会の発表の報道もおかしい。
 前回の当ブログでも触れたが、読売は詳しい内容を報道して、池田教授に対しても『反省や謝罪の言葉はなかった』と厳しい態度をとっていた。
 一方、朝日と毎日は不正は無かったと報道するだけで、詳しい内容には触れていなかった。
 朝日と毎日、特に朝日は子宮頸がんワクチン副作用キャンペーンをリードしてきただけに、池田教授に肩入れせざるを得なかったのかもしれないが、この態度は報道機関としておかしい。
 朝日のWEBサイトでは、今回の厚生労働省の発表があった事だけを乗せていた。

 朝日新聞DIGITAL
2016年11月25日05時00分
子宮頸(けい)がんワクチンの影響などを調べる厚生労働省研究班代表の池田修一・信州大教授(脳神経内科)が発表した内容に対し、厚労省は24日、「不適切な発表によって、国民に誤解を招く事態となったことについての池田氏の社会的責任は大きく、大変遺憾」とする見解を明らかにした。池田教授は3月に省内であった報ログイン前の続き告会で、子宮頸がんワクチンを打ったマウスだけに異常な抗体が見られたなどと発表していた。

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 日本産婦人科学会は、2016年12月8日付けで子宮頸がんワクチンに関する見解を発表している。
国際的に後れを取ったHPVワクチン接種の勧奨再開に向けて―HPVワクチン接種の積極的勧奨中止勧告以降、池田班の発表内容に関する厚労省の見解までの経緯  
 子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)と接種後の症状との因果関係を示すエビデンスはない ―池田班研究の調査結果に関する厚生労働省の見解― 

2016/12/13追加

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