南センセのアルツハイマー論???

   2019/04/30

 南清貴センセが、痴呆症の原因として、n-6系多価不飽和脂肪酸の過酸化脂質の分解物、4-ヒドロキシ-2-ノネナール(4-hydroxy-2-nonenal(4-HNE))に着目しているそうである。
 認知症、5人に1人が発症か…サラダ油摂取で発症リスク増大か  
 ハッキリ言って、科学的リテラシーが高いとも思えない南センセが独自に思いつくとも思えず、ネタ元が有るのではと思っていたが、多分こちらではないかと思う。

 毎日の「サラダ油」が認知症を進行させる!アルツハイマー病の「真犯人」とは? 
 サラダ油に類するような劣悪な油を使った“工業製品的加工食品”などサラダ油を攻撃する南センセには受け入れやすい内容であったと思う。

 アルツハイマー病の原因としてアミロイドβ仮説というのがある。
 アルツハイマー病の病理としてまずアミロイドβ(Aβ)が脳の神経細胞外に蓄積し、アミロイド斑を形成すると、タウ蛋白質のリン酸化が起こり、凝集し、神経原線維変化を起こす。
 次にAβの蓄積の過程で生じるオリゴマーや神経原線維変化が神経細胞の機能障害を誘発し、細胞死に至らしめるという考えでであるが、最近アミロイドβ仮説が本当に正しいのかどうか取り沙汰され始めた。
 それは、アミロイドβ産生に関与する酵素の阻害剤、アミロイドβの重合抑制剤など、ことごとく改善効果が確認出来ていないためである。。

 n-6系多価不飽和脂肪酸由来の過酸化脂質が分解して生成する4-ヒドロキシ-2-ノネナール(4-HNE)はアルデヒドの1種で、変異原性および細胞毒性を有することが知られている。
 この記事のライターの山嶋氏は4-HNEが原因物質ではないかとしていて、researchmapの自己紹介では『アルツハイマー病の原因物質はアミロイドβではなく、サラダ油から生じるヒドロキシノネナールであることを発見した』としている。

 生体内では様々な酸化反応が発生し、様々なアルデヒド類が生成しているが、4-HNEはその生成量、反応性、生理作用などから最も代表的な酸化ストレス産物とされている。
 抗4-HNEモノクローナル抗体  
 4-HNEはアルデヒドの1種であり、アルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)とよばれる酵素により解毒される。
 ALDH2は遺伝子型により働きに強弱が有り、日本人は遺伝的にアルコールに弱いとされる。
 「アルツハイマー、お酒に弱い人は要注意」  
 一方で日本人は一番認知症になりにくい人種という研究も有る。
 日本人は一番認知症になりにくい人種 それでも安心できない理由  
 山嶋氏はアルツハイマーはヒドロキシノネナールであることを発見したとしているが、リスクの1つではあるものの主因としては認知されていない。

 最近アルツハイマーの原因の1つとして微生物説が急上昇中である。
 そのひとつは歯周病の原因菌ポルフィロモナス・ジンジバリス「Porphyromonas gingivalis」である。
 歯周病病原菌 歯科の吸血鬼Pg菌の話    
 Pg菌のリポ多糖(グラム陰性菌細胞壁外膜の構成成分)を慢性投与した中年マウスはアルツハイマー様病態を発症したが、若齢マウスはアルツハイマー様病態しなかったという研究もある。
 歯周病菌のアルツハイマー様病態誘発に関与する原因酵素を特定 
 歯周病菌とアルツハイマーの関連性に係わる研究は多い。
 歯周病はアルツハイマー病を悪化させる  
 Porphyromonas gingivalis in Alzheimer’s disease brains   
 単純ヘルペスウイルス1型が原因とする説もある。
 Corroboration of a Major Role for Herpes Simplex Virus Type 1 in Alzheimer’s Disease 

 アルツハイマーに関係しているかどうかは別として、オーラルケアは十分行った方が良いのは間違いない。 
 
 南センセの記事で明らかに誤っている箇所がある。

 ヒドロキシノネナールは、一般的なサラダ油などに多量に含まれています。
 リノール酸(オメガ6脂肪酸)が200度以上に加熱されると生成されるのですが、サラダ油などの製造過程では、脱臭の段階で200度以上になってしまうので、必然的に含まれることになります。

 ヒドロキシノネナール(4-HNE)はn-6系多価不飽和脂肪酸の過酸化物の分解物である。
 油脂の脱臭は真空状態に減圧して加熱し、揮発物を除去するものであり、酸素の乏しい状態で加熱するため4-HNEは発生しないし、発生しても微量であり、サラダ油に必然的に含まれる訳では無い。
 4-HNEは酸素のある状態で加熱した際に発生する。
 加熱した食用油に生じる有害アルデヒド4-hydroxy-2E-nonenalおよび類縁化合物4-hydroxy-2E-hexenalの定量分析法  
 この資料の表1によると、10サンプル中8サンプルは未検出、2サンプルが1kg中0.19mg未満となっていて、製品としてのサラダ油等に必然的に含まれるわけでは無い事が判る。
 4-HNEは料理のため油脂を加熱した際に発生する。
<平成28年度>食品安全委員会が自ら行う食品健康影響評価の案件候補について(案)によると食品中に広く存在していると考えられるとしている。

 αリノレン酸やEPA、DHA等のn-3多価不飽和脂肪酸でも同じ事が起き、4-ヒドロキシ-2-ヘキセナール(4-hydroxy-2-hexenal(4-HHE))となり、4-HNEと同様の作用を有するとされる。
 4-HNE、4-HHEは食品中に含まれる場合と、生体内で生成される場合があるが、食品として経口摂取した際の体内動態や反応性に関する情報が無いため、4-HNE,4-HHE の油中の濃度がヒトの健康に与える影響については不明であるとしている。
 現状では体内で生成した4-HNE、4-HHEの挙動は判っているが、食品として摂取した4-HNE、4-HHEがどの様に健康に影響しているかは不明ということである。
 
 南センセは、大豆に含まれるホスファチジルセリンがアミロイドβの排出を促すことがわかっているとしていて、大豆を食べればよいとしている。
 ホスファチジルセリンを国立健康栄養研究所の健康食品の安全性・有効性情報で調べてみると、「加齢による認識能の低下や記憶障害、アルツハイマー症および老人性痴呆症」に対しては、一部でヒトでの有効性が示唆されているが、16週以上の接種では効果がなくなるとしている。
 また、ホスファチジルセリンがアミロイドβの排出を促す記述は無く、ほとんどの試験で用いられているのはウシ皮質由来であり、大豆やキャベツ由来のホスファチジルセリンの有効性は不明としている。
 ホスファチジルセリン   

 アルツハイマーは世界中の錚々たる研究者が研究中だが、未だに結果が出ていない。

 サラダ油を食べないで、大豆を喰えばアルツハイマーにならないと言うことであれば誰も苦労はしない訳で・・・・・・

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