ホットケーキミックスに潜む危険ですか?

 

 久しぶりのビジネスジャーナルネタということで・・・
『自粛疲れ”のその症状、「リーキーガット症候群」かも…ホットケーキミックスに潜む危険』 
 ホットケーキに潜む危険だそうです。

 ホットケーキミックスといえば、小麦を含むことは言うまでもない。小麦にはグルテンが豊富だ。しかし、グルテンは腸に炎症を起こし、炎症は腸の透過性を高める。その結果、本来の腸の機能が低下する。普段、腸は体に良いものと悪いものを識別して吸収・排除するバリアのような働きをするが、腸の透過性が高まると、その識別がうまくできなくなり、不要なものや有害なものまで腸から吸収されてしまい、免疫機能の低下などを招く。近年、注目されている「リーキーガット症候群」が、まさにこの状態である。

 リーキーガット症候群に詳しい一般社団法人予防医療研究協会理事長の苅部淳医師は、こう話す。
 「リーキーガットとは、腸壁のバリアが破綻して腸内の異物が体内に侵入してしまうことをいいます。症状としては、全身倦怠感、腹痛、ニキビ・アトピー、うつや不眠などが挙げられます」

 リーキーガット症候群(Leaky gut syndrome)とは何であるかだが、真面な情報は極めて少ない。
 グーグルでキーワード『リーキーガット症候群 site:go.jp』で検索しても出てくる情報はわずかである。
 アメリカ疾病予防管理センター(CDC)で『Leaky gut syndrome』で検索しても、この記事に関連する内容は検索できなかった。
 真面な情報として、イギリスの公的機関、国民真面な情報としては、イギリスの公的機関、イギリス国民保健サービス(National Health Service, NHS)の情報がある。
 日本の食品安全委員会が翻訳した資料である。

 (仮訳)
 “リーキーガット症候群”
 「リーキーガット症候群」は、長期にわたる広範な症状(慢性疲労症候群(CFS)及び多発性硬化症(MS)など)の原因として一部の医療関係者が主張している説である。
 「リーキーガット症候群」の提唱者らは、多くの症状及び状態は、孔の開いた(透過しやすくなる)腸を通って血中に取り込まれた細菌、毒性又は他の物質に対して免疫系が反応することが原因で起こると主張する。
 確かに、一部の状態及び投薬治療が「透過しやすくなる(leaky)」腸の原因となる可能性はある(科学的には腸管の粘膜透過性の増大と言う)が、現時点で、孔の開いた腸が、重大で広範にわたる何らかの問題の直接的原因となるという理論を裏付けるエビデンスはほとんどない。
 英国国民保健サービス(NHS)によるリーキーガット症候群に関する一般向け情報提供(15ページ以降)

 リーキーガット症候群は疾病ではなく、単なる説であるとの内容である。

 「リーキーガット症候群」の理論
 「リーキーガット症候群」を提唱する人たち(主に補完・代替療法の開業者)は、腸内の酵母又は細菌の過剰な増殖、栄養不足及び抗生物質の使い過ぎなどを含め、非常に広範な要因の結果として、腸管粘膜が炎症を起こし透過しやすくなる状態となると信じている。
 彼らはまた、消化されなかった食物の粒子、細菌の毒性物質及び病原菌が「透過しやすくなる状態」の腸壁を通って血流に入り、そのことが免疫系の引き金となり、全身に持続的な炎症を生じさせると信じている。彼ら曰く、このことは、以下に示す更に広範な健康上の問題と関連性がある。
 ・食物アレルギー
 ・片頭痛
 ・疲労感及び慢性疲労症候群(CFS)
 ・喘息
 ・全身性エリテマトーデス(lupus)、関節リウマチ及び多発性硬化症(MS)
 ・強皮症や湿疹などの皮膚症状
 ・自閉症
 しかし、現時点で、これらの症状が実際に「透過しやすくなる状態の腸」が原因であることを示唆するエビデンスはほとんどない。
 英国国民保健サービス(NHS)によるリーキーガット症候群に関する一般向け情報提供

 いわゆる”リーキーガット症候群”は単なる説であり、医学的根拠のある疾病ではないと明言しているわけである。

 「リーキーガット症候群を治せる」と主張する人たちが提供する治療法には慎重に向き合う必要がある。彼らが治療に役立つと主張する多くの症状に関して、有益な効果を示唆する科学的エビデンスはほとんどない。
 「リーキーガット症候群」のために提案されている食習慣変更のうちの一部(低FODMAP ダイエットなど)は、過敏性腸症候群(IBS)に悩む人たちにとっては一助となる場合があるが、その作用は「透過しやすくなる」腸の存在とは無関係であると考えられる。
 概して、食事から何らかの食品を排除することは、栄養失調に繋がりかねないことから、厳密な必要性があり(セリアック病患者など)かつ医師の助言の下で行われる場合を除いては、良い考えではない。
 英国国民保健サービス(NHS)によるリーキーガット症候群に関する一般向け情報提供

 セリアック病患者などが、専門家の助言の元に行われる食事療法を除けば、自己流の食事療法は問題があるとしている。

 ここで出てくるセリアック病は、「セリアック病」は慢性的な小腸の炎症疾患で、セリアックスプルー、グルテン過敏症性腸症ともいわれる。

 セリアック病は,遺伝的感受性を有する者に免疫を介して発生する疾患で,グルテン不耐症によって引き起こされ,粘膜炎症および絨毛萎縮が生じ,その結果,吸収不良を来す。症状としては通常,下痢や腹部不快感などがみられる。診断は小腸生検により行い,生検では特徴的であるが非特異的な病理的変化である絨毛萎縮が示され,この変化は厳格なグルテン除去食で消失する。
 MSDマニュアルプロフェッショナル版 

 セリアック病は遺伝的要素による疾病で、欧米では100人~150人に1人程度の患者が居るとされる。
 日本では少ないとされ、信州大学の調査では、血液内科,消化器内科,腎臓内科の受診者710人と新たに募集した健常者239人を対象に調査したところ、受診者のうちセリアック病が疑われるケースが7人(0.98%)いたとしている。
 健常者には異常が見られなかったとしている。
 信州大学において審査された医学博士論文要旨  

 パンや加工食品から摂取したグルテンは、体内で分解され「エクソルフィン」という物質に変わることが解明されている。このエクソルフィンにはモルヒネなどの麻薬に類似した性質があり、さらに脳へと移行し、麻薬の受容体であるオピオイド受容体に結合する。そうすると脳は多幸感を感じるため、次第にグルテンを含む食品に依存を示すようになる。

 エクソルフィン(エキソルフィン)はオピオイドペプチドと呼ばれるペプチドの一種で、アヘン類縁物質である。
 エンドルフィン、エンケファリンなど体内で生産されるオピオイドペプチドであり、エクソルフィン(エキソルフィン)等は食品由来のオピオイドペプチドである。、
 主な食品由来のオピオイドペプチドは
 ・カソモルフィン (casomorphin)   :乳汁中のカゼイン由来
 ・エキソルフィン(exorphin)     :グルテン由来
 ・グルテモルフィン(gluteomorphin):グルテン由来
 ・ソイモルフィン-5(soymorphin-5)  :大豆由来
 ・ルビスコリン(rubiscolin )    :ホウレン草由来
 等があるが、体内で生産されるオピオイドペプチドと比べて生理活性は限定されているとされる。
 哺乳類におけるモルヒネの生合成   

 厚生労働省や食品安全委員会のウェブサイトで、エクソルフィン(エキソルフィン)のキーワードで検索してもヒットしない。
 アメリカ食品医薬品局(FDA)のウェブサイトで exorphinを検索するとエンドルフィン(endorphin)が検索され、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)や英国国民保健サービス(NHS)では1件もヒットしなかった。
 これらを考慮すると、エクソルフィン(エキソルフィン)はオピオイドペプチドの1種であるが、健康上の影響は低いとの評価であろう。

 アメリカの食品に於けるグルテンフリー表示規則は、「グルテン含有穀物で自然発生するたんぱく質であり、セリアック病疾患者に健康上の悪影響を与える可能性のあるもの」を意味すると定義づけている。
 ―食品におけるグルテンフリー表示規則―  

 セリアック病患者や麦アレルギーで無い限り、数ある食品の1つとして摂取するのであれば何ら問題ないと考えるのが妥当であろう。,
 セリアック病患者や麦アレルギーで無い限り、麦製品の排除やグルテンフリー食品はあまり意味なしということになる。 

 ホットケーキに潜む危険といえば、通称パンケーキに潜む危険(経口ダニアナフィラキシー、oral mite anaphylaxis:OMA)のほうかもしれない。
 小麦製品にはコナヒョウダニ、ケナガコナダニ等、コナダニ類が発生しやすく、小麦粉単体よりホットケーキミックスやお好み焼きミックスなどが増殖しやすいと言われる。
 特に一度開封した小麦粉やミックス粉を常温で保存すると、夏場ではあっという間に増殖しかねない。
 コナダニ類は白っぽい透明のため、余程増殖しないと気がつかない場合があり、ダニの発生した小麦製品を使ってしまう場合が多いとされる。
 不気味な話だがダニ自体には毒性は無く、変な味や臭いもないため、普通はダニの付いた小麦製品を使ったホットケーキやお好み焼きを食べても特に問題はなく、相当増殖しない限りは風味にも大きな影響はなく、まぁ動物性タンパク質を摂取した事になろう。
 ただし、ダニアレルギーの人が食べると重篤な症状が起き、死亡例もあるという。

 ダニを誤食して起こるアレルギー症状  
 続・ダニを誤食して起こるアレルギー症状  
 この記事によると2013年の論文では、135例が報告され、その内訳を国別に示すと、スペイン(59)、日本(32)、ベネズエラ(31)、アメリカ(7)、ブラジル(2)、シンガポール(2)、台湾(1)、パナマ(1)となっている。
 これは論文等で報告された事例で、実際にははるかに多く発生してるのではないかとされている。

 開封後の粉製品に繁殖したダニによる即時型アレルギーがあると聞きました。本当ですか?  
コナヒョウヒダニが混入したお好み焼きを経口摂取したことによるPancake Syndromeの1例 
 お好み焼き粉に発生したダニによるアナフィラキシーの双子例
 お好み焼き粉に混入したダニが原因と考えられたアナフィラキシーの1例  
 小麦粉に発生したダニ類によるアレルギーの報告は一杯存在する。
 購入した小麦粉やホットケーキミックス、お好み焼きミックスなどの小麦製品はすぐに使い切り、余った場合は冷蔵庫で保存すべきである。
 パンケーキ症候群は、いわゆるリーキーガット症候群よりも、より現実的なリスクである。

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