渡辺雄二センセのデタラメ記事「梅干し」

 

 自称科学ジャーナリスト、渡辺雄二センセの デタラメ記事。
 『市販の梅干し、安全性に問題か…長期保存可の罠、原材料・ビタミンB1は実は保存料』
 ビタミンB1に関して、毎度おなじみ針小棒大な事を書いている。

 しかし、梅干しに添加物として使われているのは、チアミンそのものではないのです。その類似物質の一つが使われているのです。
 その類似物質とは、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンセチル硫酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンナフタレン―1,5―ジスルホン酸塩、チアミンラウリル硫酸塩の6品目です。

 ビタミンB1の化学名がチアミンであり、これらはチアミン誘導体と言われる物質で、食品添加物として指定されているのは6品目ではなく、9品目
 渡辺センセが書いている6品目の他に
 ジベンゾイルチアミン
 ジベンゾイルチアミン塩酸塩
 ビスベンチアミン(別名ベンゾイルチアミンジスルフイド)
 の3品目が食品添加物に指定されている。
 指定添加物リスト(規則別表第1) 
 天然には遊離型と3種類のリン酸エステル型(一リン酸エステル,二リン酸エステル,三リン酸エステル)で存在する。

 チアミンを発見したのは農芸化学者であった鈴木梅太郎であり、1910年に米ぬかから脚気の予防・回復に有効な成分の抽出に成功し、それをオリザニン(後のビタミンB1)と命名した。
  1935年米国ミネソタ州で飼育していたキツネに脚気様症状が発生し、これが餌にした生の鯉によるものだと判明した。
 生の鯉には強力なチアミン分解因子が含まれており、このことによってチアミン分解因子の存在が判明した。
 医学者であった藤原元典が1951年、食品中のチアミン分解因子を研究中、ニンニクでチアミンが消失する現象を確認した。
 藤原博は、ビタミンB1が何か別の物質に変化したのではないかと考え、調べてみるとニンニクによりチアミン(水溶性)が、脂溶性のアリチアミンという物質に変わったことを発見した。
 天然型のチアミンは不安定だったが、アリチアミンは安定していて、天然型のチアミンと比べ消化管で吸収されやすいという特徴があり、その後色々なチアミン誘導体が見つかった。
 チアミンの誘導体であるアリチアミンを成分として用いたのが、医薬品のアリナミンであった。
 プロスルチアミンを内服すると呼気がニンニク臭いという問題があったが、この問題を解決したチアミン誘導体がフルスルチアミンであり、現在のアリナミンはこちらが使われている。

 食品添加物として複数のチアミン誘導体の中にチアミンラウリル硫酸塩があった。
 この物質は学校給食のパンやご飯のビタミンB1強化に多く使われるようになったが、、このような用途で使われ始めるようになった頃、チアミンラウリル硫酸塩を使ったご飯は通常のご飯に比べて腐りにくい事が判った。
 このの発見から、チアミンラウリル硫酸塩の日持ち向上効果についての研究が始められ、非常に有用な日持向上剤であることが判ったが、ラウリル基が抗菌性の主要因であると推定されている。
 チアミンラウリル硫酸ナトリウムの抗菌特性について  

 チアミンそのものはビタミンの一種であり、安全性にまったく問題はありません。
 ところが、その類似物質は、そうではないのです。

 ラットに対して1日に体重1kgあたり2gという大量のチアミン塩酸塩を10日間経口投与した実験では、体重が急激に減少し、5匹中3匹が死亡しました。解剖すると、肝臓、脾臓、腎臓の腫大が認められました。

 一方、チアミン塩酸塩をえさに0.1%混ぜて、ラットに6カ月間食べさせた実験では、体重、臓器重量について、対照群との間に有意な差は見られず、解剖や病理学的検索でも有意な差は見られませんでした。
 つまり、チアミン塩酸塩を大量に動物に投与した場合、害が発生するということなのです。

 渡辺センセの様なトンデモ系センセ連中は情報所出処を明かさないが、これは食品安全委員会の対象外物質評価書「チアミン」ではないかと思われる。
 対象外物質評価書「チアミン」   
 この中に次ぎの様な記述がある。

 亜急性毒性
 亜急性毒性試験ラット(系統不明)を用いてチアミン塩酸塩の10日間経口投与(2,000mg/kg体重/日)試験を実施した。
 急激な体重減尐が現れ、投与開始4~5日後に3/5例が死亡した。
 剖検により肝臓、脾臓及び腎臓の腫大が認められた。

 ラット(系統不明)を用いてチアミン塩酸塩の6か月間混餌投与(10、40、200及び1,000ppm)試験を実施した。
 体重、臓器重量、剖検及び病理組織学的検査について検討したが、対照動物との間に有意な差はみられなかった。  
 対象外物質評価書「チアミン」

一方でこの評価書には次の様な記述もある。

 ヒトにおける知見
 チアミンを経口投与した場合は10㎎/人以上は吸収されないで、そのまま糞便とともに排泄されることから過剰症が発生することはないとされている。
 また、大量(100mg/ヒト以上)に注射投与しても組織や臓器が必要とする量以上は急速に尿から排泄されることから、過剰症はまず起こらないと考えられている。
 しかし、100mg/ヒト以上のチアミンを頻回注射投与した結果、アナフィラキシーショックを起こしたという例が国内外で報告されている。チアミンはハプテンとして作用し、非経口的投与により、過敏反応を起こすことがある。10mg/ヒトの単回静脈内投与により過敏症患者が死亡したという報告がある。
 経口薬としてのチアミンは、数百mg/ヒト/日の用量で投与しても有害影響の報告はない。チアミン250mg/ヒト/日を1日2回、11日間経口摂取しても有害な影響はみられなかった。500 mg/ヒト/日を1日1回、1か月間投与した場合でも有害な影響はみられなかった。

 医薬品、食品添加物に使われるチアミンはいずれもチアミン誘導体である。
 経口接種する場合は、大量摂取でも特段の危険性はないとしている。
 渡辺センセをはじめとする、トンデモ系センセ連中得意の、資料の都合の良い箇所の切り抜きである。

 梅干しに使われているチアミンラウリル硫酸塩の場合、その毒性はチアミン塩酸塩と同程度と考えられています。したがって、大量に摂取した場合、悪影響が現れる可能性があるということです。

 ラウリル硫酸塩が日持ち向上剤としてとの程度の量が使われるかというと・・・
 食品添加物メーカーのシンコーサイエンスコーポレーションのwebサイトによると、食品全量に対し、0.005~0.50%としている。
 バイタミンSK  
 一方で、チアミンラウリル硫酸塩をドレッシングに使った場合、0.06%までは風味に問題が無かったが、0.08%以上では風味上容認できなかったとしているところから、多く使えば良いと言うわけでもない。
 低酸・低塩ドレッシングにおける Lactobacillus fructivorans の制御  
 食品全量に対し、0.005~0.50%となると、調味梅干し1kgあたり0.5~5gとなる。

 梅干しに使われているチアミンラウリル硫酸塩の場合、その毒性はチアミン塩酸塩と同程度と考えられています。したがって、大量に摂取した場合、悪影響が現れる可能性があるということです。

 ↑の様なことは現実的にあり得ない。

 ビタミンB1は梅干しのほかに、多くのカップめんにも添加されています。ただし、カップめんの場合、梅干しと違って保存性を向上させる必要はないので、チアミンラウリル硫酸塩が使われているかどうかはわかりません。前述の6品目のうちのいずれかが使われているということです。
 袋入り即席めんも、ビタミンB1が添加された製品が多いのですが、カップめんと同様に保存性を高める必要はないので、6品目のうちどれが使われているのかは不明です。

 日持ち向上剤としてのチアミン誘導体はチアミンラウリル硫酸塩だけであり、ラーメン類は栄養補助目的の添加であろう。

 チアミンラウリル硫酸塩は栄養補助目的にも「日持ち向上剤」としても使われるが、保存料と比較して日持ち向上としての作用は弱く、食品添加物のカテゴリーに「日持ち向上剤」はない。
 食品表示はビタミンB1、VB1の表示が認められ、栄養補助目的であれば表示する義務はない。(栄養補助目的でも表示することはできる)
 保存料」,「日持ち向上剤」について

 原材料名に「ビタミンB1」と表示された食品はほかにもありますが、単にビタミンB1(チアミン)が添加されているのではないのです。
 チアミンラウリル硫酸塩などの類似物質が添加されているのです。
 そのことを頭に入れておいてください。

 医薬品、食品で天然型のチアミンが使われることはなく、チアミン有効対であり、経口摂取での健康被害リスクはないと思って良い。
 科学ジャーナリストが、資格も免許も要らないと言うことが良く判る記事である。

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