南清貴センセは『おそ松さん』もとい『お粗末さん』?

   2016/06/05

 ちと古い記事だが、Business Journalに『牛乳・チーズ・ヨーグルト、発がん性の危険 寿命短縮や骨折増加との調査結果も』という記事が載っていた。

 イギリスの医学誌「British Medical Journal」は、牛乳摂取量の多い人は、少ない人と比べて寿命が短く、女性では骨折が増えるとの研究結果を紹介しています(調査対象はスウェーデン人)。よくよく考えてみればわかることですが、牛乳はそもそも牛の赤ちゃんが飲むのに最も適した飲み物で、人間が、しかも大人が大量に飲むのには適していません。

 その研究結果がどれなのか書かれていないが、おそらくこれであろう。
 Milk intake and risk of mortality and fractures in women and men: cohort studies 
 この研究自体、結構批判の多い研究ではある。
 食品安全情報ブログ 

 また、欧米で販売されている牛乳は、日本の牛乳の規格では成分調整乳や加工乳に分類される物が主流で、ビタミンAやDが添加されている物が多く、スウェーデンの牛乳はビタミンAが添加されているという。
 週間農林、2015.11.15 スウェーデン研究に反証「牛乳は体に悪くない」

 ビタミンAの過剰摂取は、特に女性の骨折のリスクを高くすると言う報告もある。
 日経メディカル【日本骨粗鬆症学会速報】

 ビタミンAの取り過ぎは骨折のリスク? 日本人女性でも相関 

 ~岡野氏は「ビタミンAの適正摂取は骨の健康維持に重要だが、過剰摂取は骨折の原因となる可能性がある」と考察。共同研究者の白木氏は「男性では骨密度が高いのに骨折様変形が認められることが多い。今回みられた骨折は、骨粗鬆症性の骨折ではなく、男性型の骨折様変形(高骨密度骨折)ではないか」と付け加えた。

 さて、表題の『お粗末さん』だが

 同研究チームはさらに、チーズやヨーグルトの摂取にも疑問を呈しています。発酵乳製品に多く含まれている「ガラクトース」という物質が、動物実験により、老化を促進し寿命を縮めることがわかったのです。 
 牛乳の主成分である「乳糖(ラクトース)」は、消化酵素・ラクターゼによってグルコースとガラクトースに加水分解されることで、小腸からの吸収が可能になるわけですが、発酵乳製品はラクターゼの代わりに乳酸菌の働きで分解が起き、ガラクトースがつくられるわけです。そのガラクトースが私たちの体にダメージを与えることになるのです。

 『同研究チームはさらに、チーズやヨーグルトの摂取にも疑問を呈しています。』の箇所だが明らかにおかしい。
 スウェーデンの研究の項目、Other dairy products(その他の乳製品)に次の様な記述がある。

Thus women with a high intake of cheese or fermented milk products compared with women with low intakes had lower mortality and fracture rates.

 英文法で(A compared with B~)となっていれば、「AはBと比較して~である」と訳すべき。
 上記の文章を日本語に訳せば、『従ってチーズや発酵乳製品の摂取量が多い女性は、摂取量の少ない女性と比較して死亡率と骨折率が低い』と訳すべき。
 肝心な事が全く違った意味となってしまう。
 更にPotential mechanismの項目に次の記述がある。

 The intake of D-galactose from non-fermented milk is considerably higher than that from other food sources, including cheese and fermented milk products.

 意味は「非発酵乳からのD-ガラクトースの摂取は、チーズ、発酵乳製品を含む他の食物源からのものよりもかなり高い。」となる。
 つまりこの研究は、非発酵乳(牛乳)の摂取量が多いと骨折が増えるのは、牛乳のガラクトースが原因として考えられ、発酵乳製品の摂取量が多い女性の骨折や死亡率の低いのは、発酵で牛乳のガラクトースが代謝されて減少するためではないかという内容となっている。
 南センセが書いている様に、同研究チームはさらに、チーズやヨーグルトの摂取にも疑問を呈していないワケ。

 実際のところ、発酵乳製品と牛乳の乳糖量はあまり変わらないとされる。
 週間農林、2015.11.15

 ヨーグルトの場合、牛乳と比較して乳糖の量は20%~30%程度しか減少しないとされる。
 バイオテクノロジーシリーズ 乳酸菌の保健機能と応用/ 上野川修一

 また、欧州酪農協会と国際酪農連盟も合同で反論している。
 EDA/IDF合同による反論集   

 この研究自体が十分な検証が必要なわけだが、南センセの引用した内容が更にトンチンカンになっている。
 誤訳したのか故意なのかは判らないが、この様なトンチンカンな記事を書く様では『お粗末さん』としか言いようがない。

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