南清貴センセはホラー作家。 だっけ???

   2016/09/17

 南清貴センセが『電子レンジは絶対に使ってはいけない!人体に極めて危険!栄養素を全部破壊、味も不味く』というデララメ記事を書いている。

 電子レンジが不要であることを筆者はずいぶんと前から言い続けており、最初の著書である『シンプルごはんの思想』(三五館)の中でも、次のように指摘しています。
 「僕は電子レンジを調理器具として認識していません。電子レンジの加熱の構造はどう考えても食べ物向きではないのです。
 実はこれ、もともと兵器として開発されたものの、いわゆる平和利用ですから、基本構造は武器です。
  つまり殺傷能力を発揮しているわけですから、素材が持っている生命力も影響を受けないわけがない」
 この文の後に科学的なことを書いていますが、電子レンジに関する科学的分析には、さまざまな解釈があり、その論争は終わることはないのかもしれません。

 きわめて非科学的な内容ですね。
 軍事目的としてはレーダーとしてが最も多いが、これが殺傷兵器かというと?????ですな。
ま、殺傷兵器としても使えなくはないが、莫大なエネルギーを使用するので殺傷兵器としては現実的とはいえない。
 非殺傷兵器として、威嚇などの目的で「アクティブ・ディナイアル・システム(Active Denial System、ADS)」なるシステムは開発されたようだが。
 米軍の最新非殺傷兵器「ADS」、沸き上がる耐え難い「熱」AFPBB  
 さて、この「シンプルご飯の思想」をブックオフの100円均一コーナーで売っていたので買ってみた。
 この文の後に科学的な事を書いているとの事だが・・・・

 電子レンジによる加熱(マイクロウェーブ・ヒーティング=マイクロ波加熱)で起きる激しい破壊力に耐える有機細胞は存在しないので、細胞自体が変質してしまいます。
出典:シンプルご飯の思想

 何ともいやはや、非科学的な表現ですな・・・、有機細胞。
 無機細胞って有るのかな?????
 備長炭で加熱しても、細胞は破壊されてしまいますが。

 電子レンジで加熱した場合には、ビタミンCをはじめとする水溶性の栄養素は外には流出しません。
 しかし、だから問題がないとはいえません。なぜなら、ビタミンCは流出しないけれど破壊されるからです。
 このことだけをとってみても、電子レンジで食品を加熱することの愚かさがわかろうというものです。

 ビタミンC(アスコルビン酸)は熱により酸化され、デヒドロアスコルビン酸となるが、摂取されたデヒドロアスコルビン酸はヒトの体内で還元されアスコルビン酸に戻る。
 アスコルビン酸を還元型、デヒドロアスコルビン酸を酸化型とも言われる。
 デヒドロアスコルビン酸が加水分解すると2,3-ジケトグロン酸となり、デヒドロアスコルビン酸に戻る事はない。
 電子レンジと他の加熱方法によるビタミンCの損失に関する研究は多くある。
 貯蔵, 切断および加熱調理に伴うジャガイモのビタミン C 含量の変化 

 出典:貯蔵, 切断および加熱調理に伴うジャガイモのビタミン C 含量の変化
 このグラフはジャガイモを、焙焼、茹で、蒸し、電子レンジで加熱した際のビタミンCの損失を表している。
 茹で加熱と蒸し加熱は加熱時間が長くなるとビタミンCの値はほぼ一定になるのに対し、焙焼と電子レンジは減少していく。
 これを見ると電子レンジ加熱はビタミンCの損失が大きい様にみえるが、最適加熱時間が電子レンジが短く、加熱時間を勘案する電子レンジ加熱が一番損失が少ない。

 電子レンジ加熱が80秒と一番短いのに、重量減少は一番大きくなっている。
 これは、電子レンジは効率よく加熱できるため、温度上昇が早く水分が飛んでしまうため。
 加熱時間が短いため、ビタミンCの損失が一番少なくなっている。
 なお、このサンプルの最適加熱時間は45秒という事で、その際のビタミンC残存率は95.5%と高い。
 同様の論文は多く有る。
  電子レンジ加熱調理による野菜類のビタミンC 含量の変化 
 こちらの論文も、他の加熱方法と比較して、電子レンジ加熱でのビタミンCの損失が少ないとしている。

 筆者は、メーカーや販売会社から研究費が出ている学者による実験で、いくら安全性が証明されたといっても信用できず、なんの利害関係も持たず、ひたすら科学者としての責任感から実験を繰り返し、電子レンジが調理器具としては不向きであるという結論に至った説を信用したいのです。

 と言う事なので、エフコープの資料を載せる。
 エフコープは福岡県内に展開する生活協同組合で、月刊で「ふれあい」という機関誌を発行しいて、2008年3月号に電子レンジと茹で加熱でのビタミンCの損失を比較している。

 ここでも、茹で加熱に比べて電子レンジ加熱が損失が少ないとしている。

 ビタミンB1も電子レンジ加熱が損失が少ないとする論文もある。
電子レンジによる加熱とビタミンB1の分解 

 南清貴センセのお仲間の書いた本(50代からの超健康革命/松田麻美子)に次の様な記述がある。

 電子レンジで調理した野菜はファイトケミカルを97%も失ってしまいます。
 ゆでた場合は66%、圧力釜では47%、蒸した場合には11%しか失われません。
 さらに食品の分子構造に著しい変化を起こすため、含まれるビタミンB複合、C、E、必須ミネラル、必須脂肪酸などの栄養価値も60~90%低下してしまいます。
 酵素が完全に破壊されてしまうため、たとえビタミンやミネラルが存在していても、体はこれらを栄養として利用することはできません。

 南清貴センセと同様にトンデモな内容となっている。
 酵素はタンパク質で出来ていて、多くの酵素は60℃を超える温度で熱変性し失活してしまう。
 電子レンジだろうが蒸そうが、加熱の手段を選ばず高温で加熱すれば、酵素は完全に失活してしまう。
 そもそも食物に含まれる酵素の大部分は、ヒトの胃液で失活してしまい、栄養の吸収と全く関係ないのだが・・・。
 で、このトンデモ本ではファイトケミカルを97%失うとなっている。
 ファイトケミカルとはフィトケミカルとも言われ、植物に含まれるポリフェノールなど、ヒトにとって都合の良い物質の総称となっている。
 タマネギにはケルセチンと呼ばれるポリフェノールが含まれている。
 調理方法により、ケルセチンの量の変化の研究結果もある。
 調理操作による食物中の抗酸化性配糖体の変化  

この図は、生の状態のフェノール化合物と加熱後の比較をしている。

 電子レンジ加熱のようにマイクロ波を照射すると生タマネギの含有量よりも増える傾向にあった。
 これは細胞壁をマイクロ波が刺激する事で生タマネギよりも化合物が抽出されやすくなった可能性が高い。
 AsA(アスコルビン酸)も減少せず、微量成分を生かす調理方法としては最も有効であると考えられる。
 出典:調理操作による食物中の抗酸化性配糖体の変化

 これによると『電子レンジで調理した野菜はファイトケミカルを97%も失ってしまいます』というのが戯言というのが判る。

 電子レンジの危険性という話題になると、リタ・リーとハンス・ウーリッヒ・ヘルテルという人物が必ずと言って良いくらい出てくる。

 「電子レンジで食品に危険な発ガン物質が発生する!」
 ロシアのリタ・リー博士の警告である(『アースレター』1991年3月号、8月号)。
 博士は著書『マイクロ波ー電子レンジ調理の健康影響』でも同様の指摘をしている。
 さらには、世界的な医学雑誌『ランセット』(1989年12月9日号)にも警告論文を寄稿している。
 「乳幼児粉ミルクを電子レンジで加熱すると、ある特定のトランスアミノ酸が合成シス異性体に変化した」
 「さらにLプロリンというアミノ酸の一種は、神経毒性と腎毒性があることで知られる異性体に変化した」
 引用:世間の常識はウソが9割

 リタ・リー博士がランセットの1989年12月9日号に論文を載せているとの事で、ランセットの検索サイトで「Lita Lee」で検索してみたが該当の記事は見つからなかった。
 ランセット検索サイト
 リタ・リーがランセットに投稿したというのは、かなり眉唾だとおもっていたら、どうもランセットの論文を紹介しただけらしい。
 チェンマイ未来厨房
 加熱処理で、食品のタンパク質に生じる構造と化学的変化は望ましくない栄養的影響を生む可能性があり、その変化の一つは、アミノ酸異性が起きる事としている。
 普通の電子レンジでの加熱ではミルクまたは乳児用調製乳の加熱は、タンパク質に結合したアミノ酸の重要な変化を誘わないと結論したとされる。
 要は自らの主張に都合の良い部分だけを抜き出して紹介したとみられる。
 AMINOACID ISOMERISATION AND MICROWAVE EXPOSURE  (読むには$35)
 家庭用電子レンジではD-アミノ酸が形成されるという危惧は無視できるという研究もある。
 Heat treatment of milk in domestic microwave ovens(家庭用電子レンジで牛乳での熱処理)

 電子レンジにより極端な高熱で加熱した乳におけるD-アミノ酸の生成がかなり前に指摘されたが、このような条件で家庭用電子レンジを使用することはない。
 故に電子レンジ加熱した乳にD-アミノ酸が形成されるという危惧は無視できる。
 動物実験では電子レンジでの乳の加熱処理のハザードを示すエビデンスはない。
 Heat treatment of milk in domestic microwaveovens
 International Dairy Journal,Vol.6,No.3, 1996年3月.231~246ページ

 スイスのハンス・ウーリッヒ・ヘルテル博士が数日間にわたって、電子レンジで加熱した食品とそうでないものを、別々のグループに食べさせてその結果を見るという実験をしたという。
 その結果は
 ①コレルテロール値を上げる
 ②白血球数が増加する(体内に毒が存在することを示す)
 ③赤血球が大幅に減少する
 ④放射性合成化合物の生成(自然界に存在しない物質)
 ⑤ヘモグロビン値の低下(貧血傾向を示す)
 というものらしい。
 ところが、これに関する具体的な実験方法も全く書かれていなく、数日の実験でしかなく、具体的なデータの開示もなく、ただ単に数値が悪化したというだけであった。
 また、この情報を出したのが、学会発表も学術誌掲載もされてなくて一般紙であり、現在ではトンデモ系以外では全く相手にされていない。
The Proven Dangers of Microwaves  

 他には、ロシアでは、電子レンジの使用について多くの研究が行われた際、健康にネガティブな結果が出たため、1976年に電子レンジの使用が禁止されましたというもの。
 その様な事を書いているサイトは多いが、マトモな情報はみつからない。
 『電子レンジ、神話と事実』によると1980年代のソビエトでは「ZIL」、「Mriya MB」というモデルの電子レンジが、1990年には「Dnepryanka-1」というモデルが製造されていたとしている。
 『電子レンジ、神話と事実』 ロシア語

 電子レンジで輸血用の血液を加熱して死亡したという事故もあるらしい。

 過去の例では、電子レンジで温めた血液を患者に輸血したら死亡したということが1991年に裁判になっています。
 単純な腰の手術でしたがノーマ・レビさんは体温にまで電子レンジで温められた血液を輸血されましたがその後急死しました。
 電子レンジのマイクロ波が血液に何らかの変化を与えそれが原因で死亡したようです。
 出典:wachi2の日記  

 この例はコピペされてあちこちで見かける。
 そもそも、電子レンジは加熱ムラが発生しやすく、部分的に高温になりがちになりやすい。血液は42℃を越えると、熱変性のため変質するため、電子レンジで血液を温める事自体常識外れ。
 もちろん湯煎で暖めても、温度が高すぎれば同じ事が起きる。
 電子レンジで温めるという、輸血血液を温めるには不適当な方法で暖めたため、熱で血液が変質下だけの事で、電子レンジが原因では無い。

 WHOも電子レンジによる加熱は問題ないとの見解である。

 電子レンジで調理された食品は、安全であり、食品は従来のオーブンで調理されたように、同じ栄養価を持っている。
 調理のこれらの2つの方法の主な違いは、マイクロ波エネルギーが食品に深く浸透し、従って、全体的な調理時間を短縮する、食品全体に実施する熱のための時間を減少させる。
 世界保健機関(WHO):ELECTROMAGNETIC FIELDS AND PUBLIC HEALTHMicrowave Ovens(2005) 

 電子レンジが危険との主張は多くあるが、マトモなデータを開示しているケースはない。
 また、情報のソース自体非常に怪しいケースが多く、危険と述べているサイトもほとんどは同じ内容で、コピペと思われる物が大部分。

 2人以上の世帯における電子レンジの普及率は、1980年代前半に50%程度だったものが、2000年を超えたところで97%を超え、その後横ばい状態です。
 つまり、ほとんどの家庭に普及しているのです。
 裏を返せば、この先、爆発的に売れることはなく、買い替え需要しか見込めないともいえます。
 この分野で画期的な新商品が出てくる可能性も極めて低く、それは経済至上主義、売り上げ第一主義をとるメーカーや販売会社にとっては、まったく魅力のない商品です。
 これまでのように、売るためには都合の悪い真実が表に出ないほうがいいという考えも少しずつ変わっていくでしょう。
 そして、より多くの人たちが、電子レンジの危険性に気づくようになるはずです。
 そうなってから電子レンジを捨てるか、もう今の段階で真実に気づいて捨てるかという違いですが、どちらにしても捨てることになるわけですから、早めのほうがいいような気もします。

 普及率が97%で横ばいということは、ほぼ全世帯に普及していると言う事で、受け入れられているという事。
 買い換え需要があるということは安定した売り上げが続くという事で、現状維持が続くと言う事になる。
 電子レンジ以上の利便性のある器具が出てこない限り、電子レンジは使われるであろう。
 そもそも電子レンジの危険性はデマに近く、廃れるということはまず無い。

 ただし、電子レンジの害については、どんなことがあったとしても表面には出てきません。
 なぜならば、それが立証された場合の製造責任、販売責任の及ぶ範囲が広範すぎて補償できないからです。
 国民の97%が被害を訴えたらどうなると思いますか。
 筆者がメーカー側、販売側だったら、どんなことがあってもその害が表ざたにならないように、必死になることでしょう。

 戯言に過ぎないです~~~~~~。Hi!

 それにしてもこんなレベルの低いホラー小説の様な記事を書くのは、現実は承知の上で金目当てに書いているのか、本気でそう思って書いているのか、どちらだろうか?
 金目当てなら理解も出来なくもないが、本気で非科学的な事を信じているのならそちらのほうが結構怖い。

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コメント一覧

  1. たま より:

    こんにちは。
    私も南清貴氏の電子レンジ理論には驚きました(*_*)
    エセ科学にカウンターでエセ科学もってきたような…『実は体に悪い19の―』を読みましたが、読んでるうち???が頭に溢れましたw

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