フリージャーナリストの小倉正行センセの針小棒大記事「香料」

 

 今回はフリージャーナリストの小倉正行センセの針小棒大記事。
 『米国で使用禁止の合成香料、日本の食品で幅広く使用…発がん性リスクの指摘

  10月5日、米国食品医薬品局(FDA)は合成香料6品目について、動物実験でがんを引き起こすデータが示されたため、食品添加物リストから削除すると発表した。その6品目とは、ベンゾフェノン、アクリル酸エチル、オイゲニルメチルエーテル、ミルセン、プレゴン及びピリジン。
これについて日本の内閣府は「食品安全情報」として次のように示している。

 「米国食品医薬品庁(FDA)は10月5日、食品添加物規則、合成香料及び補助剤(ベンゾフェノン、アクリル酸エチル、オイゲニルメチルエーテル、ミルセン、プレゴン及びピリジン)に関する最終規則を公表した。概要は以下のとおり。
 FDAは、ベンゾフェノン(benzophenone)、アクリル酸エチル (ethyl acrylate)、オイゲニルメチルエーテル(eugenyl methylether)、ミルセン(myrcene)、プレゴン(pulegone)及びピリジン(pyridine)を食品中に使用する合成香料として、今後の使用を認可しない(no longer authorize the use)よう食品添加物規則を改正することにより、提出された申請を部分的に承諾する。

 これらの物質はその意図する使用の条件に従う場合は公衆衛生上のリスクを生じないとするFDAの科学的分析及び決定に反して、申請者はこれらの添加物が実験動物においてがんを誘発することを示すデータを提示しており、動物におけるこの知見の結果として、FDAは法律上、これらの合成香料を食品添加物規則のリストに記載することを継続できないという理由により、FDAはこの措置をとることとしている。

この情報をFDAのニュースサイトで見てみると次の様な内容となっている。

 These substances are being removed from the food additive regulations under the Delaney Clause of the Federal Food, Drug, and Cosmetic Act (FD&C Act) (section 409(c)(3) of the FD&C Act). This clause, enacted in 1958, requires that the FDA cannot find as safe; i.e., cannot approve, the use of any food additive that has been found to induce cancer in humans or animals at any dose.
 これらの物質は、連邦食品医薬品化粧品法(FD&C法)(FD&C法のセクション409(c)(3))のデラニー条項に基づく食品添加物規制から除外される。
 1958年に制定されたこの条項は、いかなる用量のヒトまたは動物において癌を誘発することが判明している任意の食品添加物の使用をFDAが安全でないと認めることを求めている。

 Although we are amending our food additive regulations for these synthetic flavoring substances in accordance with the Delaney Clause, the FDA’s rigorous scientific analysis has determined that they do not pose a risk to public health under the conditions of their intended use. The synthetic flavoring substances that are the subject of this petition are typically used in foods available in the U.S. marketplace in very small amounts and their use results in very low levels of exposures and low risk. While the FDA’s recent exposure assessment of these substances does not indicate that they pose a risk to public health under the conditions of their intended use, the petitioners provided evidence that these substances caused cancer in animals who were exposed to much higher doses. As such, the FDA is only revoking the listing of these six synthetic flavorings as a matter of law. The FDA has concluded that these substances are otherwise safe.
 デラニー条項に従ってこれらの合成香料の食品添加物規制を改訂しているが、FDAの厳密な科学的分析では、意図した使用条件下で公衆衛生上のリスクを負わないと判断している。
 この申請の趣旨である合成香料は、通常アメリカ市場で入手可能な食品中に非常に少量使用され、それらの使用による曝露量およびリスクは非常に少ない。
 FDAによるこれらの物質の最近の暴露評価は、意図された使用条件下で公衆衛生上のリスクがあることを示すものではないが、これらの物質がはるかに高用量にさらされた動物において癌を引き起こしたという証拠を示した。
 したがってFDAは法律上の問題として、これら6つの合成香料のリストを削除するだけで、これらの物質が安全であると結論づけている。
 FDA Removes 7 Synthetic Flavoring Substances from Food Additives List

 早い話、香料としての使用量では公衆衛生上のリスクはきわめて低い(健康被害のリスクが低い)が、法律上禁止せざるを得ないと言っているわけである。

 日本では、この6品目の発がん性合成香料は堂々と使われている。
 厚生労働省はこの6品目の発がん性合成香料について、次のように述べている。
 「香料のうち、『ケトン類』、『エステル類』、『テルペン系炭化水素類』といった、一定の共通の化学構造を持っているものについては、一般に人の健康を損なうおそれのない添加物として、類ごとに添加物として指定されています。
 ご指摘の5品目についてはそれぞれ以下に該当します。ベンゾフェノン→ケトン類、エチルアクリレート→エステル類、オイゲニルメチルエーテル→フェノールエーテル類、ミルセン→テルペン系炭化水素類、プレゴン→ケトン類」
 要するに、一つひとつの合成香料の安全性を確かめるのではなく、まとめて食品添加物指定をしてきたのである。
 指定したのは昭和23年。それ以降、現在に至るまで使用を放置してきたのである。
 しかし今、その食品添加物指定の方法を含めて、その安全性の根拠が揺らぎ始めているのである。

 日本の食品添加物としての合成香料は、「バニリン」等化合物名で登録された香料と、「エステル類」など類又は誘導体として指定されている「18類香料」に分かれている。
 指定添加物として化合物名で登録された合成香料は2015年の時点で132種、18類香料として約3000種類がある。
 そのうち類指定になっているのは18種
 これらの香料は、日本ではいわゆる「18類香料」と呼ばれるリストに含まれている。
 1.イオチオシアネート類
 2.インドール及びその誘導体
 3.エーテル類
 4.エステル類
 5.ケトン類
 6.脂肪酸類
 7.脂肪族高級アルコール類
 8.脂肪族高級アルデヒド類
 9.脂肪族航空炭化水素類
 10.チオエーテル類
 11.チオール累
 12.テルペン系炭化水素類
 13.フェノールエーテル類
 14.フェノール類
 15.フルフラール及びその誘導体
 16.芳香族アルコール類
 17.芳香族アルデヒド類
 18.ラクトン類
 18類香料リスト 

 今回の対象の物質は次の通り
 ベンゾフェノン
 No.209
 類:ケトン類

 エチルアクリレート
 No.810
 エステル類

 オイゲニルメチルエーテル
 No.1831
 記載名:メチルオイゲノール
 フェノールエーテル類

 ミルセン
 No.1903
 テルペン系炭化水素類

 プレゴン
 No.2262
 ケトン類

 ピリジン
 記載なし

 日本ではピリジンを除く5種が使用されている。
 厚生労働省の香料化合物使用実態一覧によるとこれらの使用実態は次の通り

 ケトン類の使用実態 
 ケトン類を使用している業者 :2,096社
 ベンゾフェノン使用業者   :11社
 プレゴン使用業者      :10社

 エステル類の使用実態 
エステル類を使用している業者:10,298社
エチルアクリレート使用業者 :10社

 フェノールエーテル類使用実態 
フェノールエーテル類使用業者:299社
メチルオイゲノール使用業者 :27社

 テルペン系炭化水素使用実態   
 テルペン系炭化水素類使用業者:389社
 ミルセン使用業者      :25社

 >日本では、この6品目の発がん性合成香料は堂々と使われている。
 堂々と使われていると言うより、使用実績は余りないといった方が良い。
 これは平成12年の調査で、少々古いが使用実態が大きく変わるとは考えにくいので、堂々というより少しは使われてるといった方が正しい。

 それとFDAの規制は合成香料に対してであり、天然由来のこれらの物質には規制がかからない。

 Each of these synthetic substances has a natural counterpart in food or in natural substances used to flavor foods.
 これらの6種の合成物質それぞれに、食品または天然由来の香料としても存在する。
 The FDA’s revocation of the listings providing for the use of these synthetic flavoring substances and adjuvants does not affect the legal status of foods containing their natural counterparts or of flavoring substances extracted from such food, often labeled as “natural flavors.”
 FDAによるこれらの合成香料及び風味増強剤の使用取り消しは、天然の対応物を含む食品またはそのような食品から抽出される“天然香料”と表記される香料の法的状態には影響を及ばさない。

 FDA Removes 7 Synthetic Flavoring Substances from Food Additives List 

 国立医薬品食品衛生研究所の食品安全情報にも次の通り書かれている。

 この記事で注意していただきたいのは、対象は“合成由来”の化合物に限定され、実施内容は食品添加物リストから削除すること、という点です。
 対象物質は天然の植物にも一般的に含まれており、例えばオイゲニルメチルエーテルはバジル、ミルセンは柑橘類、プレゴンはペパーミント、ピリジンはコーヒーに存在しています。
 FDA には食品に添加してもよいものとして他に「一般的に安全と認められる(generally recognizedas safe:通称 GRAS)」物質があり、今回の削除対象物質を天然に含む食品や天然香料、天然抽出物が GRAS として扱われています。
 つまり、今回の改正はあくまでも合成由来を食品添加物リストから削除して使用を禁止するという措置であり、天然に含まれる GRAS のものは対象外となるので誤解のないようにしましょう。
 食品安全情報(化学物質)No.22/2018(2018.10.24) 

 早い話、今回の対象となった物質は香料として使用する量では健康被害のリスクはきわめて低いと言うことになる。
 また、規制の対象は合成品で、同じ物質でも天然由来であれば規制対象外と言うことである。

 >要するに、一つひとつの合成香料の安全性を確かめるのではなく、まとめて食品添加物指定をしてきたのである。
 >指定したのは昭和23年。それ以降、現在に至るまで使用を放置してきたのである。
 それは誤っていると思うが。
 実際には個別に対応をしている。
 3-アセチル-2,5-ジメチルチオフェンはケトン類の香料として記載されていたが、安全性に懸念があるとして削除されている。
  食安基発0625第1号/食安監発0625第1号  
  3-アセチル-2,5-ジメチルチオフェン(香料)について
  3-アセチル-2,5-ジメチルチオフェンについて  
 3-アセチル-2,5-ジメチルチオフェンの使用量は、平成17年度で4.59kg、推定摂取量1.31(μg/人/日)で直ちに国民の健康に影響を及ぼすとは考えにくいが、諸外国の対応状況を鑑み、3-アセチル-2,5-ジメチルチオフェンを削除することにしている。
 3-アセチル-2,5-ジメチルチオフェンも食品中に含まれている物質である。

 今回の6種(使用されているのは5種)も同等の取り扱いをされることになるのではないかと思う。
 ま、いずれにしろ『米国で使用禁止の合成香料、日本の食品で幅広く使用』というのは、針小棒大記事である事には違いない。

 
 

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