郡司和夫センセのデタラメ記事「リン酸塩」

 

 自称食品ジャーナリストの郡司和夫センセが、また怪しげな記事を書いている。
 セブンらが一斉使用中止のリン酸塩、醤油や冷凍食品など幅広く使用、原料表示隠し横行 

 昨年12月、欧州連合(EU)加盟国のギリシャ・アテネで大騒動が起きました。
 EUが食品添加物のリン酸塩について使用中止の方針を打ち出したことが発端です。
 リン酸塩が使用できなくなれば、アテネの大衆食となっているホットドッグが食べられなくなるとして、市民を二分する論議となっています。

 この手の先生連中は情報のソースを明らかにしないが、調べた限りではEUがリン酸塩の使用を中止の方針を打ち出したとのマトモな情報は見当たらない。
 むしろリン酸塩の使用範囲を広げている。
 食品安全関係情報詳細2017(平成29)年5月23日 

 欧州連合(EU)は5月23日、チェコ共和国の食肉調製品の安定剤としてリン酸(phosphoric acid)、リン酸塩類、二リン酸塩類、三リン酸塩類及びポリリン酸塩類(phosphates-di-tri-and polyphosphates)グループ (E338~E452)の使用を認可する委員会規則(EU) 2017/871を官報で公表した。

 食品安全関係情報詳細2017(平成29)年12月5日  

 スペインカタルーニャ州食品安全機関(ACSA)は12月5日、ケバブ等へのリン酸塩類の使用の認可に関する状況を公表した。
 欧州議会は12月11~14日にストラスブールで開催される総会で、ケバブ等の肉へのリン酸、リン酸塩類、二リン酸塩類、三リン酸塩類及びポリリン酸塩類(E338-452)の使用を認可する規則の改正案について採決する予定である。

 欧州議会は2017年12月13日の採決で、ケバブ等にリン酸塩の使用を認める規則改正を賛成373票、反対272票、棄権30票で可決した。
 欧州議会ニュース 
 欧州では食肉加工品のソーセージ、ハム、ベーコン等にはリン酸塩の使用を認めていたが、食肉には認めていなかった。
 しかし、認めていないにもかかわらず使用する例が後を絶たず、それを追認する形での規則改正となったわけである。

 リンは元々、様々な食品に多く含まれる元素であり、実際にどれ程のリンを摂取しているかとなると次の通り。
 食品から摂取するリンの量は、平成27年国民健康・栄養調査報告によると日本人のリンの摂取量は、男1063mg、女925mgである。
 これは食品に本来含まれるリンの量で、食品添加物由来のリンは含まないとされる。
 食品添加物によりどれだけリンを摂取しているかだが、厚生労働省が実施しているマーケットバスケット調査がある。
 マーケットバスケット方式による年齢層別食品添加物の一日摂取量の調査 
 それによると、20歳以上の大人の摂取量は平均265.6mg(平成25年)、1歳~6歳の小児で203.4mg(平成26年)となっていて、リンの主な供給源は普通の食品からという事になる。

 リンの最大耐用一日摂取量(Maximum Tolerable Daily Intake、MTDI)は、体重1kgあたり70mgとなっている。
 これは「ヒトが生涯毎日摂取しても、病気などの有害な影響が出ない量」のことであり、これを超えるとリスクがゼロではなくなることを意味していて、これを超えても直ちに健康に障害を与えるということでは無い。
 ちなみに、一日摂取許容量(ADI)とMTDIの違いだが、ADIは人工甘味料のアスパルテームの様に自然界に存在しない物質の摂取許容量であり、MTDIはリンやナトリウムの様に必須栄養素で、元々の食品にも含まれる物質の許容量であり、食品に含まれる成分と添加物の合計の摂取許容量となる。
 
 マーケットバスケット調査では、体重16.5kgの子供の体重で対MTDI比を算出していてる。

 体重16.5kgというと大体4歳位の子供の体重である。
 体重16.5kgの子供がどれくらいリンを摂取しているかとなると・・・・
 食品からの摂取量、654mg
 食品添加物、203.4mg
 654mg+203.4mg=857.4mgとなる。(平成26年)
 食品添加物によるリンの摂取の比率は
 203.4/857.4*100=23.7%
 体重16.5kgの子供のMTDIは
 70*16.5=1155mg
 対MTDI比
 857.4/1155=0.742
 であり現状の摂取量では健康被害の懸念は少ない。
 ちなみにリンの摂取量のうち食品添加物からの摂取比率は
 203.4/857.4*100=23.7%
 食品添加物からのリンの摂取量は、全摂取量の1/4以下ということになる。
 
 大人だとさらにマージンは大きくなる。
 食品からの摂取量、978mg
 食品添加物、265.6mg
 978mg+265.6mg=1243.6mgとなる。(平成26年)
 食品添加物によるリンの摂取の比率は
 265.6/1243.6*100=21.3%
 体重58.6kgの大人の場合のMTDIは
 70*58.6=4102mg
 対MTDI比
 1243.6/4102=0.303
 リンの食品添加物からの摂取比率は
 265.6/1243.6*100=21.4%
 食品添加物からのリンの摂取量は、全摂取量の1/5強ということになる。

 摂取するリンの多くは、元々食品に含まれるリンということになる。

 というのは、リン酸塩の毒性がさまざまな研究機関から報告されてきたからです。
 たとえば、ラットにリン酸塩を0.4%、0.75%添加した飼料を、3代にわたって投与したところ、歯の摩耗が著しかったとの報告があります。

 ソースを明らかにしていないためホントかどうか判らないが、調べた限りではこの研究結果を見つけることが出来なかった。
 齧歯類のラットの門歯は伸び続けて、堅いものを囓って摩耗させて歯の長さを保っているわけだが・・・

 リン酸の摂り過ぎは副甲状腺機能亢進症、石灰沈着、骨のカルシウムを減少させるなどの骨代謝障害を起す恐れがあります。また、鉄の吸収を妨げ貧血などの原因になります。

 大量に摂取すればなる可能性は高いが、現状の平均的な摂取量では特に問題ありとは思えないが・・・・

 リン酸塩には縮合リン酸塩(重合リン酸塩)と呼ばれるものがあります。
ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩などで、これらを単独で使うことはなく、他の縮合リン酸塩と一緒に使われますが、毒性もそれぞれ動物実験で指摘されています。
 ピロリン酸塩は、ソーダ灰とリン酸を反応させて得たリン酸二ナトリウムを加熱脱水させた無水物と、無水物を溶かして結晶化させたものがありますが、どちらもラットの長期間の実験で腎石灰症が確認されているように、ピロリン酸塩の毒性は血液からカルシウムを取り去って沈殿させることです。
 ポリリン酸塩もラットの実験で腎石が生じています。

 食品安全委員会の添加物評価書でリンの安全性の評価をしている。
 添加物評価書 リン酸一水素マグネシウム 

 Hodge ら(1960)のラット 2 年間試験
 JECFA(1982)における引用によれば、Hodge ら(1960)は、ラット(各群雌雄各 50 匹)にトリポリリン酸ナトリウム(0.05、0.5、5%;0.025、0.25、2.5 g/kg 体重/日)を 2 年間混餌投与する試験を実施している。
 その結果、体重について、5%投与群の雄で増加抑制が認められたとされている。
 死亡率について、5%投与群で減少が認められたとされている。
 一般状態について、5%投与群で貧血が認められたとされている。
 剖検において、5%投与群で腎重量の増加が認められたとされている。
 病理学的検査において、0.5%以下の投与群に変化は認められなかったとされている。

 トリポリリン酸ナトリウムの別名がポリリン酸ナトリウムであり、1g中に約0.25gのリンを含んでいる。
 ラットに5%(2.5g/kg 体重/日)ということは、0.625gのリンということになり、ヒトのリンのMTDI(70mg/kg体重/日)の約9倍に相当するトリポリリン酸ナトリウムを、ラットに2年間与えたら貧血や、腎臓重量の増加が有ったと言うことになる。
 そして1/10の0.5%(0.25g/kg 体重/日)では変化がなかったという結果になっている。

 メタリン酸塩は、縮合リン酸塩の中でもっとも広範囲な食品に使われています。
 ラットの1カ月の実験では、発育遅れ、腎重量増加、尿細管炎症が見られています。

 添加物評価書によると

 Hodge ら(1960)のラット 2 年間試験
 JECFA(1982)における引用によれば、Hedge ら(1960)は、ラット(各群雌雄各 50 匹)にヘキサメタリン酸ナトリウム(0.05、0.5、5%;0.025、0.25、2.5 g/kg 体重/日)を2年間混餌投与する試験を実施している。
 その結果、体重について、5%投与群で増加抑制が認められたとされている。
 死亡率について、全投与群で増加が認められたが、用量相関性は認められなかったとされている。
 剖検において、5%投与群で腎重量の増加及び石灰化が認められたとされている。
 病理組織学的検査において、0.5%投与群で腎臓に変化は認められなかったとされている。

 1gのヘキサメタリン酸ナトリウムには,約0.3gのリンが含まれている。
 ラットに5%(2.5g/kg 体重/日)ということは、0.75gのリンということになり、ヒトのリンのMTDI(70mg/kg体重/日)の約11倍に相当するヘキサメタリン酸ナトリウムを、ラットに2年間与えたら腎臓重量の増加や石灰化が起きたとしている。
 1/10の0.5%(0.25g/kg 体重/日)では変化がなかったという結果になっている。

 腎臓の石灰化とかはいずれも、安全性評価のため通常の摂取量より非常に多い投与量における結果である。
 厚生労働省の国民健康・栄養調査やマーケットバスケット調査の結果を見ると、平均的な日本人では最大耐用一日摂取量(MTDI)に達していない。
 リンの全摂取量のうち多くは食品に元々含まれてるもので、腎臓障害などの疾患が無い限り、現状では食品添加物のリン酸塩が問題になる可能性は低いと考えられる。
 
 なお欧州連合国は食品添加物のリン酸塩の安全性の再評価を、2018年12月31日までに行うとしている。
 これはリン酸塩の安全性が問題になったわけでは無く、
 2009年1月20日以前に認可された食品添加物の再評価プログラムの一環として行われるものである。
 COMMISSION REGULATION (EU) No 257/2010  

 なお、郡司センセがコーヒーの増量について書いているがこれはデマ。

 このほか、リン酸塩には増量効果もあります。
 たとえば、コーヒー豆の抽出に使えば、通常の3倍の量のコーヒーがつくれます。

 別にリン酸塩でなくても、重曹とかアルカリ性の水溶液でコーヒーを抽出すると非常に濃い色になるが、抽出したコーヒーはアルカリ性となり不味くて飲めません。
 これに関しては当ブログでも触れている。
 コーヒーをリン酸塩で増量出来るか??? 

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